めちゃくちゃすぎる設定から謎に感動させられる妙な作品
「君が君で君だ」は「私たちのハァハァ」「アイスと雨音」などの松居大悟監督の最新作。池松壮亮さん、満島真之介さん、大倉孝二さんがそれぞれ1人の女性に思いを寄せる男たちを演じている。
ストーリー：韓国人のソンは日本で暮らしていた。その彼女の一挙手一投足をつぶさに観察している男たちがいた。彼らはソンが好きな尾崎豊、ブラッド・ピット、坂本龍馬に扮して10年間、彼女を見守り続けてきた。だがある日、その生活がヤクザにバレてしまい……。
面白かったです。
が、同時にめちゃくちゃな狂気を孕んでいる作品でした。いやぁ、好き嫌いはすごく分かれると思いますね。個人的には別に好きでも嫌いでもなかったので、この評価なんですが、好きだった人は突き抜けるほど好きだろうし、僕が映画館を出た時に前にいた女性2人なんかは「ヤバすぎて、もう、トイレ行ってくる」って浮かない顔で話していたので、ダメだった人は辛いと思います。
まあ設定がヤバいんですが、この設定を見た以上にヤバいと思う作品だったと思います。もう語彙力が「ヤバい」になっちゃうくらいヤバいですからね。
あの、尾崎豊とブラッド・ピットと坂本龍馬になりきっちゃう男3人ってもうすごく危険だと思うんですよね。だけど、彼らがやってる行為がガチストーキングなんですよ。盗聴器を仕掛けて、彼女の捨てたゴミを漁るという……。
これが冒頭にくるので、この時点で合わない人は割とドン引きです。
やりすぎだろうと思うわけなんですよね。そして、そこにヤクザが入ってきて、更にこの3人のヤバさが暴かれていくという展開でした。（まあヤクザっていう呼び方がなんかあんまり好きじゃないんだけど）
ヤバいヤバいしか言ってないですが、内容としては質が高かったと思います。っていうか、池松さんを筆頭に演技がすごいですね。登場人物みんな上手いです。魅力を感じるかどうかは別として、突き抜けているので、各キャラクターが非常に立っていますし、印象的でした。こんな書き方をすると魅力的ではないかのように感じるかもしれないですが、それは好き嫌いの問題で、魅力を感じる人もたくさんいると思います。
これだけ人を好きになるのか、とか、そもそもこれは「好き」なのか、とか、テーマ的にも色々考えさせられます。
一方で、がっちり合った訳ではない人にとっては、普通に面白いくらいの作品に留まっちゃったかな、とは思います。まあそもそも松居さんの作品はその範囲に合わないと、そこまで来ないとは思うんですが。ただ、合うとすごいし、合わなくても安定して面白いのがすごいところですね。
個人的には「アイスと雨音」とかの方が好きでしたが、すごくハマる人もいるので、興味があるなら映画館でぜひ観てもらいたい一作です。
公式サイトはこちら。
