ウェス・アンダーソン流エセ日本を堪能できる一作

 

「犬ヶ島」は「グランド・ブダペスト・ホテル」などのウェス・アンダーソン監督によるストップモーションアニメ映画。主演は「アルゴ」などのブライアン・クランストン。日本を舞台にしているため、日本人も多く出演している。また、ジョン・レノンの妻であるオノ・ヨーコも出演。今作はベルリン国際映画祭で監督賞に当たる銀熊賞を受賞している。

ストーリー:かつて、犬嫌いの小林一族は犬を迫害、殺戮しようとした。それに立ち向かったのが、ある少年侍だった。それから長い年月が流れ、日本のメガ崎市では犬の伝染病であるドッグ病が蔓延。小林市長は犬をゴミ島へと送ることを決定する。最初にゴミ島へ送られたのは、小林市長の養子である小林アタリの飼っている犬、スポッツだった。そして6ヶ月後、全ての犬がゴミ島に送られた頃、アタリ少年はゴミ島へと渡り、スポッツを探し出そうとする。

 

面白かったです。
なかなか不思議な世界観でしたが、個人的にはこういうエセ日本っぽい作品は好きですね。
ウェス・アンダーソン監督の描く世界は独創的で、ステレオタイプなイメージを上手く利用していると感じました。「メガ崎市」なる意味不明な命名も良かったですね。この「メガ」を半角というか、狭く書いて、漢字のようにしているアイディアも面白かったです。

一方でステレオタイプなイメージで描かれている、ホワイトウォッシングであるといった批判も出ているようです。
ホワイトウォッシングとは、本来白人以外の役者がキャスティングされるべきところを白人が演じているというもの。ストップモーションアニメである今作はあまり関係ないように思われますが、今作の中盤から出てきて活躍する高校生が交換留学生であるというところに批判があるようです。まあ言われてみれば、って感じですが、僕個人はあまり気になりませんでした。
ただ、今作は「登場人物は全て母国語を喋る。犬は便宜上英語で表現している」というような設定があって、その設定にこだわった結果生まれたものだと思うんですよね。日本人として描かれている登場人物が日本語を喋る設定にしてしまったが故にストーリーのキーとなるキャラクターを英語が母語の人物にせざるを得なかったんでしょうね。この問題は難しいところがありますが、少なくとも個人的にはウェス・アンダーソン監督が日本に対する偏見を多く持っている人物だとは思えませんでしたし、よく調べた上で、自分なりにステレオタイプを外している印象を受けたので、そんなに気になりませんでした。

まあこういう意味で、表現に関しては良くも悪くも尖っているので、なかなか面白かったです。ただ、上記のような面が気になる方は見ないほうがいいかもしれないですね。

物語はシンプルなようで入り組んでいて、ウェス・アンダーソン監督らしい作品になっています。登場人物が多く、時折「え、そんな雑な展開で良いの?」と思うような内容があり、でもそのおかげで物語自体にメリハリがついているというような感じですね。好き嫌いは分かれるような気がしますが、僕は非常に好きなので、今作も楽しめました。

ちょっと日本語のセリフが聞き取りにくい面もあるので、そこだけはもっと日本人が出てもらえたら良かったなぁ、と思いますね。

とにかく、エセ日本感が個人的にはとても好きでしたし、物語も楽しめたので、良い映画でした。表現的にも面白い演出が多く、楽しかったです。気になるなら映画館で観ると良いと思います。

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