声が、表情が、感情が、心に迫ってくる快作

 

「アイスと雨音」は「私たちのハァハァ」などの松居大悟監督の最新作。主演は「ソロモンの偽証」などの森田想さん。74分ワンカットで撮影し、ラップグループのMOROHAが劇中で生演奏の歌声を披露している。

ストーリー:ある街でイギリスの劇作家Simon Stephensの「MORNING」という作品が上演されようとしていた。舞台に立つのはオーディションで受かった少年少女6人。彼らは悩み、衝突しながらも本番に向けて努力を重ねていく。しかし、本番1週間前の彼らに待っていたのは、「公演中止」という悲しい現実だった。彼らは、その現実と向き合っていく。

 

面白かったです。言葉にできない衝撃がたくさんありました。

もう74分ワンカットっていう時点でめちゃくちゃやばいんですが、それなのに時間がどんどん飛んでいくんですよね。これがすごい。
出ている役者たちの距離感も最初と最後で変化していくし、作中で見せる演技力もどんどん上手くなっていくように作られているんですよね。これをカット割らずにやっているんだから、どれだけ役者が頑張ったのか、それをどれだけ上手く引き出したのか、って思って、もうそれだけで圧巻でした。

しかも、時間も飛べば、場所も移動するんです。稽古場から控え室に、さらに外に。カメラワークが半端じゃない。音声さんとかもどうやって撮っているんだって感じ。舞台の控え室には鏡とかもあるわけで、どれだけの計算の元、やったのか、と。

もうここまでやられちゃうとただただ圧倒されますね。
そして、役者さんがみんな上手い。この作品にかける思いみたいなものもすごく伝わってきました。

でも、今作を語る上で欠かせないのがラップグループのMOROHAですね。ボーカルのアフロさんの佇まいが、声が、表情が、本当に良くて、ゾワッとします。

タイミングも、声のトーンも、何もかもハマっていて、どうしてこんな計算ができるのだろう。と、本当に思いました。並大抵の思考回路じゃないなぁ、と思いますね。本当にすごい。

時間が飛んだこととか、劇中劇に入るところとか、ともすればわかりにくくなるところを上手く処理していて、思ったよりも見やすかったのも良かったですね。まあこれでも混乱するよ、って人はいてもおかしくないとは思うのですが、すんなり観られるって人も多いと思うので。

まあ強いて言えば、ちょっと演技の方向が合わなくて、好きじゃないところもあったのと、途中若干ダレるというか(って言っても本当にちょっとですよ)ってところがあったのが気になったかな。ラストのクライマックスももう少し盛り上がって欲しかった気もするし。

って、これはでも無い物ねだりだと思います。本当に良い作品でしたから。

劇中劇のセリフも、MOROHAの曲の歌詞も、いろんなものが心に刺さってきて、すごく良かったです。これは特に映画や演劇が好きな人は観た方がいい、って思いました。
良い作品です。

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