同時上映の短編も秀逸。久々にピクサーが本領発揮の一作

 

「リメンバー・ミー」はディズニーとピクサーが送るCGアニメ映画の最新作。監督は「トイ・ストーリー3」のリー・アンクリッチと、本作の脚本を担当したエイドリアン・モリーナ。第90回アカデミー賞の長編アニメーション賞を受賞した。
同時上映は「アナと雪の女王」の最新作である短編の「アナと雪の女王/家族の思い出」。短編にもかかわらず、22分という比較的長い上映時間になっている。こちらはピクサーの作品ではなく、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの作品。ピクサーの作品にウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの短編が同時上映されるのは史上初のこと。
今回はどちらの内容についても触れることにする。

「アナと雪の女王/家族の思い出」
ストーリー:アナとエルサは新たなアレンデール国となり、初めてのクリスマスを迎えた。国民に楽しんでもらおうと、城を解放する計画を立て、たくさんのご馳走を用意する。しかし、セレモニーの後、国民はそれぞれの家に帰ってしまう。理由を聞くと、それぞれの家にはそれぞれの伝統があるということだった。アナとエルサは、自分たちの伝統を探すが、エルサが閉じこもっていたために家で伝統が伝わってきていないことに気づく。その様子を見ていた雪だるまのオラフは、各家を回って最も良い伝統をアナとエルサにプレゼントしようと思いつくが……。
 

面白かったです。別個に感想書きたくなるくらい。

短編とはいえ、22分もあるので、物語として十分内容があり、観た印象としても、しっかりとした作品を観たという感じです。まあよく考えてみたら、30分枠のアニメ一本分くらいの時間ですからね。
その中でちゃんと脚本が練られており、各キャラクターの良さが出る内容になっていました。各家を回るというアイディアは素晴らしいですね。

そして、作品の根幹部分が「アナと雪の女王」本編とリンクする内容になっており、上手く物語を展開していたという印象でした。

アレンデールの日常を描くというだけの内容ではあるのですが、それでこれだけしっかり見せられるのはすごいです。まあそれだけ「アナと雪の女王」は各キャラクターが魅力的なのだということですね。

変に続編を描くよりも、こうした短編でキャラクターを生かしていくという方ががっかりさせられずにすみますし、良い手法な気がします。

僕だけかもしれないですが、しっかり泣かされました。すごいなぁ。
これと本編の「リメンバー・ミー」と両方を観られるのは本当に幸せなことでした。

「リメンバー・ミー」
ストーリー:メキシコの街、サンタ・セシリアには代々靴屋を営むリヴェラ家があった。この靴屋の創業者は女手一つで店を大きくしたイメルダ。彼女は音楽家を目指して家を出た夫に娘のココ共々捨てられた経験から、一家に音楽を禁止したのだった。そんなココの曽孫のミゲルは音楽に憧れる男の子。一家に隠れて、街から出た大スターのエルネスト・デラクルスを尊敬。手作りのギターで一人練習をしていた。一年に一度、他界した先祖が返ってくる死者の日に行われる音楽コンテストに出ようとするが、家族に反対され、ギターも壊されてしまう。どうしてもコンテストに出たいミゲルは街の墓地にあるデラクルスのギターを盗み出す。しかし、大切な死者の日に窃盗を働いた彼は生者であるにもかかわらず、死者の世界に行く身体になってしまった。元の世界に戻るためには、家族からの許しが必要だったが、死者のイメルダからは「音楽禁止」を条件として出されてしまう。

 

面白かったです。
久しぶりにピクサーが本領を発揮したなぁという印象でした。ここのところ、続編ばかりだったし、オリジナル作品が「カールじいさん」あたりからどんどん雑になっていったという印象だったのですが、ようやく、ピクサーらしい良作が出てきたと思います。

今回は久しぶりに「ピクサーの復権」を予感させる一作で、「モンスターズ・インク」「ファインディング・ニモ」「カーズ」と凄まじいクオリティの作品をコンスタントに出していた時代を思い出しました。
 

1990年代に「リトル・マーメイド」「美女と野獣」などを送り出したウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオは2000年代に低迷期を迎えていますが、(この頃のヒット作で今も残っている作品は「リロ・アンド・スティッチ」くらい)「ボルト」「シュガー・ラッシュ」あたりから観客・批評家から絶賛される作品を出しており、それが一気に爆発したのが「アナと雪の女王」でした。その後も「ベイマックス」「ズートピア」と良作を連発し、第3黄金期(1期は創設初期、2期は90年代)とも言えるような時期にさしかかっています。これに反してピクサーは「カーズ2」あたりから若干の低迷期に入ってしまい、ヒットするのは「トイ・ストーリー3」や「ファインディング・ドリー」といった過去作の続編ばかり。今作もその煽りを受けて、アメリカでの興行成績はあまり芳しくなかったですが、Rotten Tomatoesで97%、CinemaScoreでA+と高く評価されています。

そしてそれが納得の一作でした。
いやぁ、泣いちゃいましたね。最初は前述の「アナと雪の女王/家族の思い出」が良かったから不安だったんですが、杞憂でした。

物語の伏線が非常に巧みに配置されていて、違和感なく観られるところも、上手いですね。例えば、デラクルスのギターを盗むところなんかも、デラクルスを紹介するところで、しっかり墓地のギターが映し出されていて、「ああ、あのギターをね」と観客がわかるようになっています。こうしたところは非常に細かいところですが、セリフで説明せずに、しっかり印象付けているのは、観客を違和感なく物語の中に誘導するのに効果的だと思います。設定を言葉ではなく、アクションで説明していくのが上手くなされていて、世界観もどんどん頭に入ってきます。

死者の国のビジュアルも綺麗ですし、流れる曲も良いものばかり。ピクサーとしては初めてのミュージカル映画だったのですが、本家ディズニーを思わせる、素敵な構成になっていました。
音楽の良さというか、楽しさみたいなのが伝わってきますし、それでいて、家族とは、みたいなテーマも物語に上手く乗ってきています。
あまり多くは書きませんが、最後の方でミゲルが決断する選択が納得できる内容になっていますし、物語を通して考えさせられること、自分にとっては、みたいなことを思うようなポイントがたくさんある素敵な映画でした。

アクションシーンもあり、子どもたちにとっても楽しめる映画だと思います。というか、子どもたちに観て欲しい作品だったなぁ。

大人も子どもも楽しめるし、デートなんかでもぴったりの作品だと思います。良い映画なので、オススメです。短編含めるとちょっと長いけど、そんなの気にならないくらい、楽しい時間でした。この2本が一緒に観られるの、本当に幸せですね。

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