驚くほど駄作だった前作からは格段の進化。子どもたちにも大人たちにも観てもらいたい一作

 

「カーズ クロスロード」は2006年に公開された「カーズ」、2011年に公開された「カーズ2」の続編である。監督は前2作のジョン・ラセターから今作がデビューとなるブライアン・フィーに交代した。

 

ストーリー:数々のレースで優勝してきたライトニング・マックィーン。だが、新世代の車であるジャクソン・ストームに負けてから、全然勝てなくなってしまう。マックィーンと同世代のレースカーたちが次々と引退していく中、シーズン最終戦でマックィーンは盛大なクラッシュをしてしまう。引退か、参戦か、世間が騒ぐ中、マックィーンのスポンサーであるラスティーズがスターリングという富豪によって買収される。最新鋭のレーストレーニングセンターでトレーニングを積むマックィーンだったが、結果が出ず、引退を迫られることになってしまった。彼は、次のレースで優勝しなければ、引退すると約束し、トレーナーのクルーズ・ラミレスと共に特訓を開始するが……。

 

面白かったです。
もう「カーズ2」が本当に残念な出来だったので、今回も全然期待していなかったんですが、久しぶりに「カーズ」でした。日本ではそもそも「カーズ」自体が全然ヒットしていないし、「カーズ2」があの出来だったので、今回も興行的にはかなり苦戦していますが、面白いです。

残念ながら「カーズ」には負けますが、それでも今作もなかなかアツいし、面白いです。今作の影響で「カーズ」を観る人が増えるなら嬉しいな、と思いますね。タイトルを「カーズ3」にしなかったのも良かったです。「カーズ2」なんてなかった。
みんな、「カーズ」を観て「カーズ クロスロード」を観ればいいんです。そうすればもう感動の波が押し寄せますから。立川のシネマシティで「今度の『カーズ』は『ロッキー』だ」って宣伝文句がありましたが、もう、ほんとそれ。いや、「ロッキー」観てないんでわかんないんですけど、そういう熱さがある作品なんです。

叫びたくなるような作品です。応援上映があったら、男たちが汗と涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら、「行けええええええ!!!マックィーン!!!!!」と絶叫すること間違いなしです。そのくらい、心が動かされる作品なんです。「カーズ」とこの「クロスロード」は。

いや、こんなにハードル上げて良いの?って感じだし、これ前提で行ったらさすがに「うーん、良かったけどそこまでじゃないかも」ってなる人も多いとは思いますけど。それでも、好きなんです。「カーズ」が。色んな人に観てもらいたい作品なんです。2000年代のアニメで個人的なベストでドリームワークスは「ヒックとドラゴン」、ディズニーは「ボルト」か「ズートピア」、そしてピクサーは「カーズ」なんですよね。そのくらい好き。

気がつけば今回のレビュー、全然内容に触れていないですね。
まあ今作は一作目の「カーズ」の対となるような内容で、これだけ観ても面白いとは思うんですが、まあ出来れば「カーズ」を観た上で行くと更に感動が増すと思います。

「カーズ」は生意気な新人レーサーであるライトニング・マックィーンが初めての挫折を味わい、人間として成長していく話です。
そしてこの『カーズ クロスロード」はその彼が、かつての自分のような下の世代と出会った時にどうしていくか、という物語になっています。
合わせて観ると、対比も出ますし、「カーズ」が好きだった世代としては、一緒に成長してきたような感覚になれるんですよね。そういう意味では「トイ・ストーリー3」のラスト20分に巻き起こる感動に近いものがあります。

で、何で「カーズ2」がそんなにダメかって言うと、何もないんですよ。主人公がぶち当たる壁とか、そういうのが。だって全部「カーズ」でやり尽しているから。そこで無理矢理サブキャラクターのメーターにスポットを当てているんですが、その当て方が中途半端で、テーマも何もなく、ただただ世界でレースをしているのをぼーっと観ているだけの作品になっちゃっているんですよね。やるなら「ファインディング・ドリー」くらい思いっきり焦点を変えるべきだったし、メーターの持っている事情も思いっきり深くしなければいけなかったんだと思います。

逆にこの失敗が「ファインディング・ドリー」を生んだのかもしれないですが。

そんなこんなでいわゆる「安易な続編」になってしまった「カーズ2」ですが、この大失敗の反省を踏まえて作られたのが今作だったのではないかと思います。続編の必要性というか、描く余地があるから続編が面白くなるんだと思うんですが、それが今作にはしっかりありました。
なるほど、この観点から描くのか、と。
ただ売れているキャラクターものだから続編を作る、ではなく、描くべきテーマがあったから、続編を作った。というスタンス。これでいいのだと思います。

そういう意味でも、スピンオフはあっても、「カーズ4」が作られることはないのだと思いました。この世界が好きな人間としては少し残念だし、寂しくはありますが、描くべきものがないのに続編を作ると失敗してしまうということをファンも作り手も学んだ以上、もうないのかな、と思っています。

もし、「4」があるのであれば、そこに何か描くべきものが見つかったからなのだと思います。そう信じたい。

かなり長く思いをぶちまけましたが、それだけ好きな作品でした。子どもたちが行きたがったら、ぜひ連れて行ってあげてください。人を思う気持ちを教えてくれる、素敵な映画です。

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