彈眞空を名のった時のことを、思い起こそう
昭和63年(1988) インドから帰国して、藤由越山師の門をくぐってから1年、時代は昭和から平成へと変わった。
※帰国の翌年、昭和天皇がご崩御され、元号が「平成」となった
平成2年( 1990)、「普化宗尺八の作り方」を指導する話がまとまり、翌年の4月27日から3日間の集中講座をすることになった。
企画してくれたのは、目白工具店(現・株式会社目白)の三浦社長。
※当時、虚無僧研究会が発足して十年目にあたり、マニアの間では、虚無僧と共に地無し延べ管が主
流になりつつあった
※本来、尺八といえば「地無し」であったのだが、音の認識が真逆である西洋音楽に、引きずられる
ように改造された継ぎ管を「調律管」と呼んで、尺八としていたのが一般の尺八愛好家である
受講者募集にあたり、「講師の名前とプロフィールを載せた申込書を作るので、竹号を考えてほしい」ということで、一月ほど、あれやこれやと思い巡らせた記憶がある。平成2年(1990)4月頃
時系列は曖昧だが、下に書き出したことは、すべて考慮した。
- 名字・名前共に変える
- 他の尺八家の号と被らないこと
- どこかに濁音を入れる
- 空山師の「空」をどこかに入れる
- 阿修羅のごとく
- 虚霊は天上の音
田中康雄というのが、私の本名です。
同年代の方は、「なんとなく、クリスタル」で時の人となった作家・政治家の田中康夫氏を思い浮かべるのではないでしょうか?
※氏は、1980年、デビュー作「なんとなく、クリスタル」で文藝賞を受賞し、2000年には、長野県知事選挙に出馬し、当選している
当時、集会などで自己紹介すると、必ず「なんとなくクリスタルですか?」というリアクションが返ってきて、その度に「はあ、漢字は一字違いますけど.....。」という儀式の後、本題に入るということが常であった。
※1980年代初頭の話
※この記事を書くにあたって、改めて調べてみると、年齢も一つ違いで、出身地(私の出生地)も同じ武蔵野市であることが分かった
海童道祖(わたつみどうそ)の本名は、田中賢道で、後に田中雄飛とも名のっている。これも一字違い。
※海童道祖:巨管を駆使したパフォーマンスで一世を風靡した尺八家。この尺八パフォーマーの台頭によって、わずかに残っていた「一音成佛(いっとんじょうぶつ)」思想から湧きいづる音声は消え、受け狙いの俗技芸と其れを正当化するための理屈に分離した、古典本曲と称する単調な音楽形式による独奏が一般化した。 行き詰った西洋現代音楽の作曲家等の接触により、拍車がかかった。
もう一つ、ベルギー出身のリコーダー奏者のNathalie Houtmanさんが、「地無し管の指導を受けたい」と工房にきたときに、「タナカセンセイにキンコリュウをならった」と、しきりに言っていたので調べてみると、尺八家の大先輩で、田中康盟という先生の事だった。
Welcome from Paris - Nathalie Houtman
※2011年01月22日
ネパールやインドでは、「タナカ」が断然よかったが、天上天下唯我独尊、気位の高かった虚無僧の竹号としては、少し弱い感じがしたこともあって、姓・名ともに変えることにした。
濁音を入れた方が、半僧半武の虚無僧らしい?と思ったかどうかは忘れたが、最終的に「ダン」と決めたのには、理由がある。
小学生の時、音楽の先生は、Before_彈眞空にも書いた、米良先生ひとりに6年間お世話になったのだが、中学に上がると、入れ代わり立ち代わり、二年の一学期までで、四人の先生が赴任してきた。
この当時(今も?)音楽の先生は、片手間でやっていることが多く、最初と二番目の若い女性の先生は、「海外留学が決まったので」ということで退職、三番目は、理由は明らかではないが、一年の三学期で交代。
※「長崎は今日も雨だった」で知られる歌手の前川清さんと同郷・同級生と言っていた。
二年になって、四人目の先生を学年主任が連れてきて、第一声「この子たちは、音楽の先生に恵まれなくて、先生で四人目です云々.....。」
この先生は、東京藝大の作曲科出身で、「團伊玖磨の弟子です」と自己紹介。
近々、某テレビ局で、「作曲した歌曲の初演が放映されます」とのこと。
来学期は五人目の先生になる予感。的中。
それはともかく、「ダンイクマ」という響きと漢字の印象は強烈だった。
オーケストラの配置はどうで、コントラバスのような低音は何処で鳴っているか分かりにくい等々の授業は、ほとんど覚えていない。
ちなみに、五人目の先生は、卒業までお世話になった。
彈眞空公式website : http://park1.wakwak.com/~dan-shinku/index.html
地無し管工房website : http://park1.wakwak.com/~dan-shinku/khobo.html