2月26日の読売新聞一面が、山崎正和氏の「人工知能の開発 ~ 『薔薇色』実は深刻な問題」という論考を載せていました。

 

 このような内容です。

 最新の人工知能は、人間と同等か、それ以上の精神活動を行う能力を秘めている。ある推計によれば、肉体労働、事務労働の8割が人工知能に委ねられると予想されるという。これを聞いて朗報と受け取る人が多い。しかし、この薔薇色の背後には失業と転職という深刻な問題が潜んでいる。

 

 ここで、山崎氏は思考実験として、AIによって人類が100%失業した社会を考え、ロボットだけでできた無人企業の収益を適切に分配する問題を取り上げています。共産主義ではうまくいかないだろう。社会主義的分配は、強権と官僚支配を招いたではないか。この弊を避ける知恵を現在の人間は持たない。

「ここでも新しい英知を将来の人工知能に期待するほかはあるまい」

と皮肉を飛ばしながら、山崎氏は、そもそも人間とか歴史とかいうものはね、ときらめくような蘊蓄を傾けます。でも、ようするに「いったい、どうするの?」なのであります。

 

 山崎氏は収益分配の問題だと考えた。そして、社会主義では解決できないとしました。

 しかし、収益分配の問題ではないのです。それ以前の問題です。全員が失業者であれば、どの企業も、収益を上げることは不可能ではありませんか。ロボットだけの無人企業が生産したものを、いったい誰が買ってくれるのですか。ロボットですか?

 

 社会主義ではだめです。それは歴史が証明しました。しかし、社会主義の弊害を避けていながら、みんなが暮らせるようにする知恵はあります。それがベーシック・インカムです。

 

 ここは、思い切って発想を転換しないといけません。労働と生活費を切り離してしまうというのが、新しい発想です。生活費はすべての人に、無条件で渡してしまいます。社会主義は、そこまで踏み込んでいません。

 もちろん、好きなだけお金をあげるわけにはいきません。最低、生きていくのに必要なだけです。

 

 稼ぎたい人は、どんどん稼いでください。人間の能力に違いがあるのは当たり前です。平等なのは、「生きる権利」において平等なのです。収入を全員平等にしようということではないのです。でも、貧困はなくしましょう。食えなくて困る人はなくしましょう。最低限の収入は、無条件で保障しましょう。

 これが、ベーシック・インカムの考え方です。

 

 AIは、BI(ベーシック・インカム)と一緒に考えないといけません。

 AIとBI、語呂がいいじゃありませんか。

 


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