私の私塾で、生徒にたまたま歴史を教えていました。なぜ、文明が興り、滅びるかについて、また、これからどうしたらよいかについて話していました。

 古代ギリシャ世界は、高い文明に行き着きました。しかし、たくさんの都市国家を統合する政治的な仕組みを作れませんでした。それぞれの都市国家の部族主義を越えられず、お互いの戦争で自滅していきました。
 それに対して、古代ローマは、はじめは都市国家でしたが、地中海世界の覇者となりました。その成功のカギは、市民権にありました。征服した他の民族に「あんたもローマ」と言って、市民権を賦与していったのです。

 当時のローマ市民権は、現在からみれば、限定されたものです。男子のみの、世襲、財産による買収、功績による獲得などで得られるものです。
 しかし、自分が自由でありかつ責任を負い、自分の力によって幸福を追求できるという立場の人が多くなると、人々は力を発揮します。その国は栄えます。

 その市民権よりもさらに進んだものを、現代国家の多くは、すべての人に保障しています。それは基本的人権と呼ばれています。生存権、参政権、思想・表現の自由などは、われわれにとっては当たり前のことなので、意識にすらのぼりません。しかし、基本的人権こそが、人々の力を引き出しているのです。科学技術が一つの柱、基本的人権がもう一つの柱となって、われわれの文明は支えられています。

 いま、私たちの文明は岐路に立たされています。国家主義という名の部族主義にとらわれて、お互いの闘いで自滅していくか、より普遍的な世界市民意識、人権意識を発達させることができるかです。

 これからの人類が利己主義と部族主義を越えて生き延びるために、新たに三つの柱を打ち立てることができます。

1 新たな基本的人権としての、人を殺傷することを拒否する権利。

 これによって、軍隊が機能しなくなります。そんなものが可能なはずはない、と思われるかもしれません。しかし、どの国も自分の国の兵隊には認めたくないけれど、他国の兵隊がこの権利を持つことには大賛成のはずです。どの国も一斉にならよろしい、ということになるでしょう。

2 ベーシック・インカムによる生存権の無条件保障。

 市民権によってこんなに文明が伸びたのだから、無条件の生存権があれば、もっと伸びます。脅しの原理では、人の力は引き出せません。
 生存権保障だけでなく、ベーシック・インカムは新たな経済原理を創り出すことができます。資本主義は経済成長の終わりとともに終焉を迎えつつあります。それに代わる、生活本位経済と言えるものを作ることができます。

3 教団宗教を離れた、普遍的でかつ個人的な宗教のひろがり

 いま、「悟ってしまった」「生命と愛につながっている」人たちが急速に増えつつあります。この人たちに共通しているのは、個人的にすごく苦しんだことと、それぞれ自分の言葉で語っていることです。
 人類が進化して、自分の人生体験だけで、生命の源を意識化できるようになったのだと思います。この源から汲むことなしに、どんな社会も文明も、じきに枯渇してしまいます。


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