〈問われているのは、地方政治の「熟度」である〉⎯⎯新聞記事で一番読まれないのが社説だ、なんて陰口を聞いたことがりますが⎯⎯ならば新聞は、熟しすぎて◯っているのではないですか?

 

 

世の中がというより、新聞社内の皆さんご自身が落ち着いたからなのか、いろんな意味で「参っちゃうなあ」という社説です。

 

 

(中日新聞7/26-5面)

 

 

 

何となく読んでしまうと、何となく「そうだった」と思わされてしまうのが「新聞に書いてあった」の恐ろしさで。

 

個々人それぞれが持つ記憶を(誰にとってのかは置くとして)都合よく改竄されたりしないよう、気を確かに保っていなければと思います。

 

 

ということで、以下、備忘録的に。

 

 

 長く迷走した愛知県豊橋市の多目的屋内施設(新アリーナ)建設問題は、住民投票の結果、賛成が多数となり、計画が進められることになった。2020年以来、2度の市長選で主要争点となりながら、市長と議会の対立などで推進とも中止とも決められない状態が続いていた。民意の代表として市政を担う両者は、議論で一致点を見いだせず、最終的に住民投票に委ねなければならなかったことを厳しく受け止めるべきだろう。

 

⎯⎯〈2度の市長選で主要争点となりながら〉と言うけれど、それは先から反対していた人々にとって、の話ではなかったかと思います。

 

2020年は、佐原さんの多選批判とユニチカ疑惑の方が大きく扱われていたはず。

 

2024年は、アリーナは既に契約済み着手済みであり、争点が見えにくい、くらいに言われていました。それを、他ならぬ中日新聞が「アリーナ問題」を蒸し返し、争点に仕立て上げた、が正解ではないですか。

 

 

 経緯はいささか複雑だ。230億円を投じ、豊橋公園内に、地元プロバスケットチームの本拠地にも使えるよう、5千人収容規模のアリーナを新設する計画が持ち上がったのは前々市長の時代。前市長は、計画見直しを掲げて前々市長との対決を制し、当選したものの、「総合的に考えた」結果、推進を決めた。しかし、昨年11月の市長選では、計画に反対し業者との「契約解除」を公約に掲げた現市長に敗れた。議会も推進と反対で割れており、一種、膠着(こうちゃく)状態に陥っていたが、結局は今年5月、住民投票条例の可決に至った。

 

⎯⎯前市長は、見直しを掲げて実際見直した、だけですよね。

 

現市長が「契約解除」を公約に掲げていたのは事実ですけれども、それがどこまで広く一般に知られていたでしょうか。

 

浅井さんは、長坂氏の公約に敗れたわけではないでしょう。

 

まず、保守系2人が立候補したことによって票が割れたこと、加えて、パワハラ疑惑ビラの影響もあったかもしれません。

 

「議会も推進と反対で割れており」は、雑すぎる表現です。選挙を経たうえで、およそ 7:2 の比率ですからね。

 

 

 巨額の税金を投じるプロジェクトであり、当初からバスケファンやスポーツ愛好者らに期待が広がる一方、将来的な市財政負担への不安や環境、生活への影響など懸念を抱く市民も少なくなかった。計画の方向性が二転三転する中、十分な説明もなく、「市民不在」の状態が続いていた面があったことは否定できない。

 

⎯⎯「巨額」には違いないにしても、年割すれば 7、8億円、一般会計約1,500億円のうちの、それです。

 

そういった「解説」こそ、マスメディアの役割ではないのですか? アリーナ関連の報道は「不安」や「懸念」に寄り添うフリでそれを増幅させるばかりではなかったですか?

 

〈十分な説明もなく、「市民不在」の状態が続いていた面があった〉は、長坂氏が市長になって以降の方が、より、その傾向が強くなっているのに、そうだと指摘したことがありますか?

 

 

 住民投票は、「反対」を表明した現市長が勝利した昨年の市長選とは裏腹な結果となったが、市長選では「賛成」票が複数候補に分散したともみられている。住民投票に法的拘束力はないが、現市長は「結果に従う」と明言した。

 

⎯⎯〈市長選では「賛成」票が複数候補に分散したともみられている〉ここまで読ませて、ようやくそれですか?

 

〈現市長は「結果に従う」と明言した〉から、「新アリーナ計画中止が支持された」という解釈に基づく長坂氏のこれまでの行為は不問に付すと?

 

 

 ただ、反対票が4割強に上ったことを忘れてはならない。将来世代の負担や交通渋滞など反対派の懸念に対し、市当局は具体的な対策や財政見通し、事業の進捗(しんちょく)状況などについて高い透明性をもって説明することが肝要だ。「市民との協働」という意識を、これまで以上に強く持たねばならない。

 

⎯⎯〈反対票が4割強に上ったことを忘れてはならない〉など、言わずもがなです。

 

ならば、市長選挙において、長坂氏以外に投票した人が60%以上いたことに触れていたでしょうか。

 

「先の市長選挙結果」を強調する長坂氏に対して「市民との協働」を強く促していたでしょうか。

 

 

 今回は、首長と議会が市政上の大問題に結論を出せず、直接民主主義に頼らざるを得なかった。異なる主張が対立する時、いたずらに問題を停滞させず、どう議論を進め、いかにして合意を図っていくのか。問われているのは、地方政治の「熟度」である。

 

⎯⎯いやいや、他ならぬ中日新聞様こそ、市政混乱・混迷の打開策として住民投票に積極的だったように思うのですが、違いましたっけ?

 

 

とまあ、こんな調子で。

 

私にとっては、「ここが」というのではなく、全編にわたって「違う」と言わなければならないほどに、違うのです。

 

 

一昔前との比較で、かなり限定的になっているとは言え、新聞購読者層へのその影響は侮れません。

 

何しろ、その層こそが投票率の高い層と重なるわけで。

 

 

ただ、今回の参議院選挙と住民投票については、我が豊橋では投票率が高く、したがって、その分だけ新聞報道の御威光が弱かったのかな、とは思います。

 

だったら、新聞を読まない人達は、他に何処から情報を得ているのだろう、という点は気になりますが・・・
 

 

ともあれ、

 

 

この傾向が続いてくれるなら、未来に希望が持てるかもしれません。

 

偶然ではあるのでしょうけれども、今、豊橋は「キテる」ことですし。

 

 

長坂氏には、とにかく「邪魔だけしないで」とお願いしたいです。