「特別なチャンス」は実はあなたのすぐ目の前に



わたくしが初めてその『石』に出会ったのは、フラメンコを始めてまもなくの50年前のことです。


練習場所を探していたとき、広い公園に足を運びました。

その公園は、まだ開発が始まったばかりで遊具もなく、大きな噴水を囲むようにさまざまな石が敷き詰められ、木々が心地よい日陰を提供していました。



その中で、目を引いたのは約50センチ四方の美しい透き通った『石』


わたくしはその魅力に惹かれ、そっと上に足を乗せてみました。そして、当時生まれたばかりの長女を抱えながら、その『石』の上でステップを踏み始めました。



当時のわたくしは、まだ技術が定まっていなかったものの、練習したい気持ちが強く、その『石』に立つことで自然に重心が安定し、思わず楽しんで踊ることができました。



フラメンコでは、しっかりとした足の動きが求められます。足の裏全体や指の付け根、かかとを使って音を出しますが、硬い石の上では、重心がずれると驚くほどの痛みが伴います。


痛みを感じながらも、きちんとしたフォームを意識することで、意外にも自分の軸が定まりました。そうすることで、何時間でも練習を続けることができたのです。



最初は2時間も持たなかったのですが、気がつくと夕暮れまでの時間が経っていました。毎日、その公園の『石』の上で練習することが心の支えとなりました。


長女のオムツを替えたり、授乳をしたりしながらも、通りがかりの人と会話を楽しんだり、学校帰りの子どもたちの悩みを聞いたりする時間を大切にしていました。実際に、しっかりと練習に専念できたのは8時間が限界だったかもしれません。



わたくしのフラメンコの原点は、この公園の『石』にあります。当時もフラメンコの稽古ができるスタジオはありましたが、衛生的な面や換気など小さな子供を長時間置くには危険で何よりお金がかかりました。



自分の目の届く範囲で、赤ちゃんから目を離さず踊れる時間は、わたくしにとって本当に幸せな時間でした。


わたくしの師匠は厳しく、レッスンは1週間に1時間しか受けられませんでした。そのため、私は自分で公園で練習し続けることで、フラメンコの基礎が形成されていったのです。



あの『石』との出会いが、わたくしのフラメンコの旅を促してくれました。他の石では得られない感覚があり、まっすぐ足を打ち下ろしたときの『石』の音は、本当に心地よかったのです。



今振り返ると、全くお金のなかったわたくしは、あの『石』のおかげで思う存分練習でき、フラメンコの根幹を習得することができました。


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もしかしたら、あなたの身近にも、あなたの可能性を引き出すための大切な存在が待っているかもしれませんね。