" あなたへの想いを断ち切らなければ、気が狂ってしまいそうだ"

 

前回の記事で、自殺や周囲に助けを求めることについて触れたのですが、この曲は自分が助けを求めることで愛する人を傷つけてしまう恐怖を歌っています。

和訳がすでにある曲は基本的に記事にしないつもりなのですが、私が一番と言ってもいいくらい好きな曲であるのと、歌詞をすべて通して和訳しているものはなかったので、記事にしました。

ボーカルのジャスティン・フュルステンフェルトはこの曲の発表当時いわゆる病み期だったわけですが、今では元気そうで何よりです。自殺してしまうアーティストは多々いますが、これを歌っている人はもういないのだと思うと、彼らの曲に残る言葉は重たくなってしまう気がします。

 

 

[Intro: Girls Singing]

(If you're sleeping, are you dreaming?

If you're dreaming, are you dreaming of me?

I can't believe you actually picked me)

あなたは眠っているの? それなら夢を見ているの?

もしそうなら、私の夢を見ているの?

あなたが本当に私を選んだなんて、信じられない

 

[Intro: Justin's Mother]

(”Hi Justin, this is your mother, and it's 2:33 on Monday afternoon

I was just calling to see how you were doing

You sounded really uptight last night

It made me a little nervous, and a l... and... well... it made me nervous, it sounded like you were nervous, too

I just wanted to make sure you were really okay

And wanted to see if you were checking in on your medication

You know I love you, and...

Take care, honey

I know you're under a lot of pressure

See ya. Bye bye”)

こんにちはジャスティン、母です

今は月曜日の午後2時33分

あなたがどうしているか気になって電話しただけなの

昨晩のあなたは本当に思い詰めているように思えたから

それが私、少し気がかりで、そして…そうね…

それが私を緊張させたし、あなたも気が張っているように思えた

私はただ、あなたが本当に大丈夫か確認したくて

そして、あなたが薬をちゃんと飲んでいるかも

愛してる、それから…気をつけてね

あなたが大変なことはよく知っているから

それじゃ、また

 

[Verse 1: Justin Furstenfeld]

I have to block out thoughts of you so I don’t lose my head

They crawl in like a cockroach, leaving babies in my bed

Dropping little reels of tape to remind me that I’m alone※

Playing movies in my head that make a porno feel like home

あなたへの想いを断ち切らなければ、気が狂ってしまいそうだ

それはゴキブリのように這い回って、私のベッドに卵を産み落としていく

想い出が浮かんでは、自分が独りであることを思い起こさせる

頭のなかでポルノを映して懐かしさを得るんだ

 

There's a burning in my pride, a nervous bleeding in my brain

An ounce of peace is all I want for you; will you never call again?

And will you never say that you loved me just to put it in my face?

And will you never try to reach me?

It is I that wanted space

酷い自己嫌悪と不安で痛み続けている

私が唯一あなたに願うことは

「もう二度と電話してこないでくれないか?

愛してるなんてあけすけに言わないでくれるか?

私に手を差し伸べずにいてくれないか?」

安らげる場所が欲しいんだ

 

[Chorus: Justin Furstenfeld]

Hate me today

Hate me tomorrow

Hate me for all the things I didn't do for you

Hate me in ways

Yeah, ways hard to swallow

Hate me so you can finally see what’s good for you

今日、私を憎んでくれ

明日も私を憎んでくれ

あなたに報いることができなかったすべてのことを理由に

飲み込めないほど深く憎んでくれ

そうすればあなたはようやく、何が自分にとって幸せか気付くだろう

 

[Verse 2: Justin Furstenfeld]

I’m sober now for 3 whole months

It’s one accomplishment that you helped me with

The one thing that always tore us apart is the one thing I won’t touch again※

In a sick way, I want to thank you for holding my head up late at night※

While I was busy waging wars on myself, you were trying to stop the fight

丸三ヶ月もシラフで過ごしている

あなたの助けがあってこそやり遂げられたんだ

いつも私たちを引き裂くのは、私が二度と手を出せないもの

あなたのことで悩みもするけど、感謝したいんだ

夜更けでも支えていてくれてありがとう

自己破壊の衝動に突き動かされているとき、あなたはそれを止めようとしてくれた

 

You never doubted my warped opinions on things like suicide and hate

You made me compliment myself when it was way too hard to take

So I’ll drive so fucking far away that I never cross your mind

And do whatever it takes in your heart to leave me behind

希死念慮や自己嫌悪を抱くことについて、あなたは決して悪いこととは言わなかった

私が苦しんでいるときでも、あなたは私を元気づけてくれた

だから私は遥か遠くへ行こう、あなたがもう私のことで煩わされないように

私のことを置き去りにするために、なんだってすればいい

 

[Chorus: Justin Furstenfeld]

Hate me today

Hate me tomorrow

Hate me for all the things I didn't do for you

Hate me in ways

Yeah, ways hard to swallow

Hate me so you can finally see what’s good for you

今日、私を憎んでくれ

明日も私を憎んでくれ

あなたに報いることができなかったすべてのことを理由に

飲み込めないほど深く憎んでくれ

そうすればあなたはようやく、何が自分にとって幸せか気付くだろう

 

[Bridge: Justin Furstenfeld]

And with a sad heart, I say bye to you and wave

Kicking shadows on the street for every mistake that I had made

And like a baby boy, I never was a man

Until I saw your blue eyes cry and I held your face in my hand

And then I fell down yelling, “Make it go away!”

Just make her smile come back and shine just like it used to be

And then she whispered “How can you do this to me?”

悲しくても、あなたにさよならを告げる

歩道に延びる自分の影を蹴る

私の犯したすべての過ちが浮かぶ

私は子供で、立派な大人になんてなれなかった

あなたの青い目が涙で揺れ、濡れた頬をこの手で抱きしめるまでは

そして私は叫びながら崩れ落ちた

「自分なんて消えてしまえばいい!」

ただ彼女の笑顔を取り戻すため、かつてのように幸せになるために

そして彼女はささやいた

「なんでそんなことをしたの?」

 

[Chorus: Justin Furstenfeld]

Hate me today

Hate me tomorrow

Hate me for all the things I didn't do for you

Hate me in ways

Yeah, ways hard to swallow

Hate me so you can finally see what’s good for you

For you

For you

For you

今日、私を憎んでくれ

明日も私を憎んでくれ

あなたに報いることができなかったすべてのことを理由に

飲み込めないほど深く憎んでくれ

そうすればあなたはようやく、何が自分にとって幸せか気付くだろう

あなたのために

あなたのために

あなたのために

 

[Break 2: Girls Singing]

If you're sleeping, are you dreaming?

If you're dreaming, are you dreaming of me?

I can't believe you actually picked me

あなたは眠っているの? それなら夢を見ているの?

もしそうなら、私の夢を見ているの?

あなたが本当に私を選んだなんて、信じられない

 

[Outro: Justin's Mother]

Hey, Justin!

Hey, Justin!

Hey, Justin!

Hey, Justin!

Hey, Justin!

Hey, Justin!

Hey, Justin!

Hey, Justin!

Hey, Justin!

Hey, Justin!

Hey, Justin!

Hey, Justin!

 

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Blue Octoberはアメリカ・テキサス州出身のロックバンド。ヴァイオリンを取り入れた曲作りが特長で、私が一番好きなバンド(オアシスとの二択で選べない…)のひとつです。ジャスティンとはボーカル・ソングライターであるジャスティン・フュルステンフェルトのことを指します。

Hate Meは彼らの代表曲であり、元は恋人へ宛てて作られていましたが、制作過程でこれは母についてのものであると彼が考えるようになったことから、内容を変更して発表されています。

 

彼はこの楽曲について、自分が過去に経験したいくつかの問題によって傷つけ、許しを求めた人々への謝罪であると語っています。彼は当時、アルコールやドラッグの中毒症状とうつ病を患っており、それが彼の恋人を酷く傷つけたという経験がベースになっています。冒頭の[Intro: Justin's Mother]は実際に彼が母親から受け取ったボイスメールであり、彼が薬を欠かさずに服用しているか案じている様子が見受けられます。

また、この楽曲はMVでも高い評価を受けており、MuchMusic VideoAwardにもノミネートされています(どれくらいすごいのかはよく分からないですが…)。MVに登場しているのはジャスティンの母本人です。

 

これは母のために書かれたと言われますが、その感情はアンビバレントなものです。彼は母の愛を感じていながらも、それによって苦しめられています。自分は中毒患者で病気であり、与えられる愛に報いることができずにいるためです。また、母の愛と共に曲中で一貫して語られているのは彼が患っていた双極性障害(躁うつ病)についてです。彼は発病前の過去を記憶していながらも、それよりもポルノ映画を素晴らしく感じるほど記憶を抑圧していることが窺えます。

彼はその苦しみから逃れるため、そして母を自分から解放するために母のもとから去ることを選びますが、不安や苦痛は歩道の影のように実体がなく、それでいていつまでも付きまとうのです。彼は母の涙を目にして、ついに悟り、そして壊れます。自分のしたことすべてが利己的であったのだと。

曲の終わり、“How can you do this to me?”は少し皮肉めいた言い回しです。母はジャスティンを咎めながらも、彼のそばにいることが幸せであることを示しています。

 

また、[Girls Singing]の部分ですが、これは彼らの楽曲Calling Youからのサンプリングです。Calling Youはジャスティンの彼女に宛てた楽曲であるため、この部分はジャスティンの恋人であり、ジャスティンが彼女を愛していることの示唆になります。しかし私には、この部分の主体は母親であるようにも思えます。

母親がまだ生まれたばかりの我が子に枕元から呼びかけています。

「私のところに生まれてきてくれてありがとう」と。

 

 

 

※ memo

 

Dropping little reels of tape

映画のように想い出が頭の中で再生されていく様子を示します。テープのリールとは、映画のフィルムのことです。

 

The one thing that always tore us apart is the one thing I won’t touch again

アルコールによって彼らの関係が壊されたことを指し、だからこそもう飲酒はしないという意になります。

 

In a sick way, I want to thank you for holding my head up late at night

酩酊した夜も母親がそばにいてくれたこと(気道が詰まらないよう頭を持ち上げてくれていた)、アルコール依存症から立ち直らせてくれたこと(文字通り比喩としての頭を上げる)のダブルミーニング。

In a sick wayは、これまで述べられてきたようなアンビバレントな感情状態を指し、その一方で感謝しているという内容です。