


【昭和4年(1929年)発行「無痛安産法」】
メルカリで、古書を手に入れました。
産婦人科医の木村介忠著「木村ー無痛分娩法」について書かれた本です。
「お産は、心の働きがとても影響する。心穏やかにお産に挑めば、全く痛みがない。最新の心理学に基づき、エミール・クーエの暗示を施せば、簡単に無痛分娩ができる。」
という一文にとても興味を持ちました。
ヒプノセラピー講座でも、クーエさんの暗示は、まず最初に学習します。しかし、木村先生の本の中では、「暗示は、催眠状態で行うものと、覚醒した状態で行うものと、2種類ある。」と述べています。
「木村ー無痛分娩法は、催眠術はかけません。覚醒した状態で、暗示を施します。」
イギリスの産婦人科医、グラントリ・ディック・リード先生が「恐れなき出産」という本を出版した頃とちょうど時期が同じくらいです。リード先生もご自身の著書の中で
「お産は怖いと思っていると、その思いで痛みを感じる。恐れのない人は、全く痛がらない。」
と、述べています。さらに、リード先生は、
「妊婦さん達に教えている内容を、『催眠術だ。』という人もいます。私は、催眠術を使っていないけれど、同じような効果があると考えられます。」
とも言っています。
木村先生が「催眠術ではない。」と、全く否定しているのに対して、リード先生は、「似たような効果がある。」と少し譲歩しています。
このリード先生の本から影響を受け、アメリカのマリー・モンガンさんが、催眠状態を利用した「ヒプノバーシング」を体系づけました。
「お産の際には、子宮内の筋肉が収縮と弛緩を繰り返すのですが、安心してリラックスしていれば、本来痛くない。」
というところは、木村先生、リード先生、モンガンさん、この御三方の考えは全く一致しています。
私は、初めから「お産は痛くない。」と思っていたので、4人とも超安産でしたし、本当に全く痛くなかったこともあります。
1970年代に入り、お産の際には「エンドルフィン」という鎮痛効果の高いホルモンが出ることが分かって来ました。
リラックスしていると、エンドルフィンがたくさん出て、全く痛みを感じない、ということも可能だと、エビデンスも変わってきました。
『お産は、本来痛くない。心の働きが、お産を左右する。』
これだけのことですが、なかなか浸透しないものですね。
木村先生は、医者と産婆に「木村ー無痛分娩法」をご自宅で教えていたそうです。
「希望するなら妊婦さんにも、教えます。」
と本には書かれていました。
こんな素晴らしい産婦人科医がいたのですね。
どの国にも、どの時代にも、お産の真理を理解し、伝えようと努力している方がいます。
1人でも多くの方に、この情報が伝わり、1人でも多くのお産が、幸せになりますように。
