今日はモーツアルトの誕生日とのことで、チェルニーが執筆した「ピアノフォルテ教本」から、モーツァルトの作品におけるペダルの使い方を解説した部分を紹介します。

 

昨年のジュゼッペ・マリオッティ先生の講座でも取り上げられていましたが、フォルテピアノの時代、ペダルの使い方は現代とは随分異なっていました。

 

チェルニーが1839年に出版したこの「ピアノフォルテ教本」では、第三部の15章99ページからの部分で「それぞれ異なった作曲家や作品に対する適切な弾き方」の解説がありまして、それにはもちろんモーツァルトも含まれています。

 

15章の§6によると、当時のフォルテピアノの演奏スタイルには、概ね6種類の傾向があると言うことで、そのうち、モーツァルトの様式は「レガートよりもスタッカートが想定され、ペダル(ダンパーペダルのことです)は滅多に使われず、義務ではない」と説明されています。

 

この記述から、モーツァルトは、ペダルをあまり使わずにフォルテピアノを演奏していたことがわかります。チェンバロにはペダルは無いので、それで育ったモーツァルトにとって、フォルテピアノでも「ペダルOFF」がデフォルトである感覚は自然なものだったのではないでしょうか?

 

また、チェルニーのこの本で解説されている当時のペダル奏法も、現代の踏みかえタイミングとは異なり、指の打鍵と同時にペダルを踏み、次の音を打鍵する前に離す奏法です。

 

現代の人気フォルテピアノ奏者のコンサートをNHKなどで見ていると、普通のピアノで演奏するのと同じようにペダルを使っている例が多いですが、昔は違ったようです。

 

ペダル控えめのフォルテピアノでのモーツアルト演奏の例としては、クリストファー・カイトの録音が挙げられます。

 

カイトは1990年代前半にロンドンのギルドホール音楽院で古楽器科の主任を務めていたチェンバロ・フォルテピアノ奏者です。彼の弟子であるトヴェルスカヤも、ペダルの使い方についてはたいへん注意深い演奏をしています。

 

クリストファー・カイトの弾く「ペダル控えめ」モーツァルト演奏

 

ソナタKV332 第一楽章

 

 

 

 

 

第二楽章もペダルなしです!

 

 

 

 

チェルニーの本(英語版)はこちら

http://vmirror.imslp.org/files/imglnks/usimg/e/e7/IMSLP356509-PMLP513421-Czerny_-_500_Complete_Theoretical_and_Practical_School_op_500_-_Book_3.pdf

 

 

実は日本語訳も出版されていますが、現在絶版であることと、訳者の解説が現代のピアノで演奏することを前提とした内容になっているので、できるだけドイツ語や英語など当時の素材で読んだほうがわかりやすいかと思われます。