72 アシュラリスト 昼のささくれ(今を生きる者の責任)

暗い道を避けようと袖を引く。

いつから、夜道が歩けないトラウマになったんだ?

貧乏の活気。システムがギシギシ、社会がギスギス、胃がキリキリ。

帰り道、駅前でティッシュ配りしていた知り合いの店員。

私に気付き、声をかけられる「俺、今月いっぱいであそこ、辞めまっすよ!」

元気で大きな声だった。「元気」とは張りつめながらも悲しい響きだ。

弁解と言い訳のありえぬ基準。

生き方は「弁解」寄りか?あるいは「言い訳」寄りか?

今時、「同僚」とは不満たらたらのメンタリティーを保持しながら、積極的に協力しない者を言う。「家庭」とは崩壊を前提として成立している。

笑いが凍てつく、この極寒はいつ緩む…。温もりは遠い昔の話なのだろうか?

今夜も時代に泣けてくる。

ゼーレの眼目

作家の池波正太郎の半生記『青春忘れもの』に、小学校に入学してすぐ、両親が離婚した。母親はまもなく再婚するものの、また離婚して実家に戻ってくる。昭和の初めごろの話だ。「あわれなのは子供の私というわけだが、その実、ちっともあわれではなかった」。と書いている。また職人だった祖父は義太夫や芝居の見物に、必ず池波を連れて出かけたという。粋な祖父だ。天ぷらやすしの味だけでなく、チップの出し方まで教えた。その祖父が亡くなり、一家の稼ぎ手は、母親一人となる。といっても、まわりもその日暮らしの人ばかり。困ったときは、隣近所で助け合うのが当たり前だった。不景気つづきの世の中でも、「町中に貧乏の活気がみなぎっていた」というのだから、私にとってはうらやましい時代だ。助け合いの精神が、失われていく昨今、家族だけでなく、町内の人々、行きつけの屋台のおやじに見守られ、時に叱(しか)られた。そんな時代には戻れないにしろ、これ以上、社会とシステムがますますギスギスしていくのをどうにかしたい。今を生きる者の責任である。

ボランティアの中で感じたこと(原文:2001116 NEC社会貢献部担当者への送信メール)
「ボランティア用に薬の配布をします」との情報を受け、先週の112午後5時ごろ、赤坂見附にある鹿島建設(株)本社内のKVネット(鹿島建設ボランティアネットワーク:会長・小坂順一氏)に出向き、薬のパッケージ30組を受け取り、その足で都内の「母子家庭支援施設」に持っていきました。
ちょうど、帰宅のラッシュアワーその上、金曜日のアフターファイブということで渋谷方向へ向かう若者達で満員状態の電車の中、荷物がバラケないようにして、汗をかきました。
施設のスタッフは私の突然の訪問で驚いた様子でしたが、薬のパッケージ(胃薬とかぜ薬各1箱)でしたので喜んでくれました。
この施設は、様々な家庭環境、あるいは問題を抱えた母子が入居しています。入居すれば電気代など光熱費を除き家賃はいりません。この施設は経済的自立を支援する公的施設です。
夫との死別の他、その半面、夫の暴力等から着の身着のままで逃げてきて子供を連れてくる若い母親もいます。現代版の「駆け込み寺」ともいえます。男性は所長のみで、スタッフの皆さんはすべて女性です。私はバザーの手伝いなどでかれこれ45年くらい、ボランティアで関わってきました。
女性スタッフにいつも言われることですが、「やっぱり、気になるのよね・・・」と今回もいわれました。
何が気になるのかスタッフに聞いてみると、「小学校低学年の子供達は栗城さんを気にしているようですね」と・・・。
私は入り口を背にして座っていましたので、分からなかったのですが、ちょうど職員室が、人の入退室が見える位置にありました。帰ってくる子供たちはいちいち私をチェックして、気になって覗いたりしていたようです。
それは私に自分を必ず迎えに来てくれると思っている父親の面影を見ているのでしょうか?あるいは暴力を振るわれた思い出のある子は心配しているのでしょうか・・・。
この夏の納涼バザーを手伝った際は、テントの後片づけのため汗で服が濡れていたところ、後ろから小さい男の子が背中に乗っかって来ました。ふざけていると思い、「汗で濡れているから、ふざけちゃだめだよ。」首に回した手をどけようとして、振り返ったら少年はふざけている顔ではありませんでした。少し淋しい顔をしていました。心の中で悪いことしたなと思いましたね。
次からはされるままにあるがままに振る舞おうと思いました。一緒にふざけて遊んであげようと思いました。小さなことですが、現場にいない限り分からないことでもありました。
ある女の子(たぶん小学生低学年)は、じっと様子をうかがい、こちらを見ていたので、私は帰りがけに「また遊びに来るから、それまで元気でね!」と言って施設を後にしました。

―中略―

子供たちの主な受け入れ先(全国)

乳児院 124か所・2972

児童養護施設 579か所・30600

里親(委託数) 2837世帯・3836

母子生活支援施設 272か所・9913

驚くことに上記の子供たちの約83%に親がいるということだ。虐待、育児拒否などの理由でやむを得ず上記、施設で共同生活をしている。(2009年度厚生労働省/全養協による)

人並みに親がいる、面倒見てくれる大人がいる、という家庭ばかりではない。でも、こどもは健やかに育つ権利がある。社会も子育てに責任を持つとの考え方があったはずなのだ。

「あなたのこころがきれいだから なんでもきれいに 見えるんだなあ」(あいだみつを)

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