66 アシュラリスト 笑いと闇
「女の自立」と言ったとき、そこには「男は自立している」ということが、暗黙の了解として含まれている。しかし、現在の社会システムが男の自立さえも危機に瀕している。女は自らを支えるだけでなく、家族や職場とか、いろいろなものを支えなければ到底やっていけない時代になった。

「ユーモアとは、「○○にもかかわらず」笑うこと。」だと言ったのがドイツの哲学者アルフォンヌ・デーケン氏だという。つらいこと、悲しいことがあったにもかかわらず、笑うことだ。一瞬変だが、変ではないことに気づかされる。それは精神の本能的防御機能ともいうべき活動だと思う。あなたは○○にどんな言葉を入れるだろう…。
「ユーモリストとは不機嫌を上機嫌にぶちまけること」(フランスの作家:ジュール・ルナール)。ユーモアは帯として存在する。点であればそれはその場のエキス、精神潤滑剤。ないよりはいい。ユーモアの帯は苦悩の総体を養分として咲く花群としてその姿を現す。
「無暗に烈しい言葉を用いると、言葉が相手の心の内部に入り込む前に暴発してしまう。言葉は相手の心の内部へ静かに入って、入ってから爆発を遂げたほうがよいのである。」『論文の書き方』(清水幾太郎)と言っているのだ。
葛藤は「純粋」からの賜物(たまもの)。このギフトは受け取ることを断れない。笑いは苦しみ悲しみの掃き溜めに咲く花。
名もなき若者よ。時代はいつも名もなき若者が変えていった。名前がないだけで、力もないと思うな、あきらめるな!悲しい人の前で笑うだけでも闇のなかから、光という力がわき出てくる。
闇を照らすのは、光を携えた笑いなのである。笑いを求めても光を伴わなければ、闇を照らすことができない。だれしもが心に大事に安置している光。それは、つらい時悲しい時に動き出す安全装置のこと。
「美を求めて、世界を旅行し回っても、美をたずさえて行くのでなければ、美を見出すことはできない。」(エマーソン「美について」)

ゼーレの眼目
「笑」の象形文字は、上のつくりが酒を入れるふたつのおちょこであり、下の部分は巫女がそれを両手で持ちながら、踊っていることを示す。実に愉快な説明だ。
オリバー・ストーン監督の映画「プラトーン」ベトナム戦争が題材の映画。敵の一掃のため、小さい村に入り込んだ米軍地上部隊。息子と老いた母のいる粗末な小屋。敵はどこにいる!体の不自由な息子に言いよる米兵。笑う息子。何がおかしい!それでも笑う息子。激昂する米兵。そして殺される。
彼はおかしくて笑ったのではない、恐怖にひきつり、恐怖のあまり笑って(笑う要素のない笑い)しまったのだ。そんなワンシーンがあった。わたしも、一瞬だが心理的恐怖のあまりに顔が笑っている(自分では気がつかない)ことがあった。当事者は当たり前のように激昂する。しかし、すぐにはそのことが原因とは分からない。この心理作用を、「悲しみの仕事」のひとつとして数えておこう。

キープスマイリング
「人間、笑っていないと幸福(しあわせ)が来ないのよ」(瀬戸内寂聴)
悩んでいても何の解決にならない、笑顔でいれば誰か声をかけてくれる。笑顔には不思議な力がある。

テーマにシンクロする曲「カサブランカ(Casablanca)」カサブランカとは「白い翼」という意味。

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