42 アシュラリスト 用意された泥濘(ぬかるみ)
用意された泥濘。動いているようで止まり、止まっているようで動くサイコロ、上の目と下の目を足すと7になる。
まずは「認めろよ」を強制される。
進んで不条理は呑めない。意味もなく信頼を裏切られ、前に進めないほどがんじがらめに追い込まれた時、いかにして再び一歩を踏み出すのか。怒りは心の刀を抜いたり振り下ろしたりで、忙しい。
どのようにして立ち直るのか。
「ありがとう」が響かない悲しい人、氷の部屋。
セレブレイトレス・プア・マインド。胸を張って生きにくい時代、圧迫と融和の板挟み。悪口と陰口の袋綴じ。何にもしなければ心は病に気に入られ、魂は腐食の愛人になる。魂と心、塗炭のカップル。互いに呑んで呑まれて吐き出す関係。
人生は用意された泥濘(ぬかるみ)をひたすら歩くこと。さらに準備された落とし穴に墜ちるように仕組まれている。しょうもないことのラリー。確信犯仲良しサークル。冤罪シンドロームの気分詐欺。
心に届く言葉、魂に届く言葉、どこにも届かない言葉。
騙し討ちのルーティン。
ザゼンソウのように沈黙想をするのだ。
クルミ割り人形、操る者はいない、クルミは割れる。
いちいち反応せず、注意深く見守れ。
オペレーション・ストップド(運行見合せ)。
顔は識別のコード番号、肉体は魂の船、心は精神の舵。
一度に二つの命令をする人。必ず失敗する、そこに付け込む人。空気の空回り、難癖を発見する人、何が気に喰わぬ。気に喰わぬことが気に喰わぬ。それじゃ、立つ瀬がなくて、ズブズブだよ。真実の口は重く、すぐには見つからない。
人生の老成香(ひねこう)。
搦手 (からめて:背後から敵を襲う)の上手い奴ら。
絆(きずな)と絆(ほだ)されるの距離と明暗の深度。
不条理を求め、理不尽を探すかのような所作と仕草。つきまとう泥濘の泥。しかし、それらと闘う前にすでにそれらに取り組まれている、勝ち目のない闘い、それでも人は闘わねばならない。あたかもナルシストとシュールレアリスムの往復、自己満足が次の自己満足を求めるように。はてのない渇望の先を夢見る人よ、共に歩こう!
今日も時間のわからない時計をもって、競う相手なき競争に挑む。迷える子羊から賢い子羊へ。
天使はいつも辛い時に現れる。
いつだって、コーラスガールの旅だから、恋愛には期待していないの。
期待しても、傷つくのは自分ばかり…。
夢は重荷、成功は幻、時間はマチ針、どう見てもいい条件は見当たらぬ。
それでも人は敵が多い方が力を増す。
☆
ゼーレの眼
「ザゼンソウ」には自己発熱機能がある。その温度は約20度、北国の積雪時周囲の雪を溶かす、それは環境にやさしいエネルギー。ミトコンドリアの作用として注目され、耐寒冷植物への品種改良に期待が高い。しかし、有毒で悪臭があるのが玉に瑕(きず)だ。
―――――
人生は用意された泥濘、ひたすら少しずつ前に進むしかない。絶望ではない、歩けば何かにぶつかる。それは用意された幸福、それはあなたのすぐ近くにある。
◇
AEGIS シリーズ全編及び「ゼーレの眼」と画像
転載、コピー等はご遠慮ください。
Copyright(c)2000-2010