34 アシュラリスト 霧の貴公子

まともに見たら、耐えられない、だから霧の貴公子はこうして霧の幕を張る。

愛はちゃんとあったか?

人は悲しみの中でより連帯感を感じることができる。

邪悪と善意の間に幕を張りながら、混ぜれば突き抜けることができるかも知れない魂。

その鋭い嗅覚と実行力を持ちながら、女に奥手の貴公子。

俺は仕事を楽しめるタイプではなく、産む苦しみのタイプ。

肉眼では見えない星を探す日々。

星が集まると淡い光の帯となる。その果てしない奥行きと満天の星、魂とのシンクロと不可思議。人の時を思い、日夜、ひとつとして同じもののない苦悩の形と質にフィットする噴霧力を研鑽する貴公子。

彼は「普通の1日」がどれだけ大切かを教えてくれる。

失敗した後の挫折に備えよ!遠回りと足踏みという忍耐。

目隠ししたままの影踏み、クラインの壺で水を飲み、メビウスの帯でできたプロムナードを歩く。それらに耐えられるのか、耐えるのか。

もう一度聞く、耐えたのか、あるいは絶えたのか、その恋。

恋の力量を瀬踏みされ、模様眺めされる。その上で試される。

正面を見ていながら、誰とも目を合わさず、恋をする。

自意識は追い詰められるとよそ見をしない、恋は追い詰められると濃縮し、真実の愛に還元される。恋の真ん中に愛があり、端にいる恋は遠心力に耐え切れず、聞こえる恋から、聞こえるはずのない「嘶き(いななき)」に変わる。

どの恋に向けられた分からない拍手が鳴り響き、どの恋も自分に向けられたものと思い込むサイレントミュージカル。

就中(なかんずく)、満足した顔を見せる居るはずのない観客の退屈。

ゼーレの眼目

恋は後退すると、満足した顔を見せる居るはずのない観客の欠伸(あくび)になる。

ベル

A sound mind in a sound body. 《ことわざ》健康な身体に健全な精神(が宿らんことを).

サウンドには健康という意味がある。健康体は様々な音を発する。そして健康であればこそ様々に聞くことができる、いいことも悪いことも森羅万象も…。

私は「言葉音」を一旦ゼーレの中にまき散らし、そして丁寧に回収する、そこ過程で集合化された音源をポエッセー(Poessay、愛の目方をはかることの試み)と呼ぶ。


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