AEGIS覚醒 SEELの姿 少年の思い:僕のすべきこと 第3夜
悩んだあげく、事故現場近くのトンネルから出てきた少年はついに姿を現し、毅然として警察官と老母の娘に、そしてトラックの運転手に向かって話し始めた。
少年は重い口をこじ開け、その口から言葉が流れ出した。
「僕は全部見ていました。悪いのはトラックの運転手のおじさんだよ。運転中居眠りをしていたし、お婆さんはちゃんと青信号を守りながら、歩く前に左右を確認してから、ゆっくりと歩いていました。それから急に飛び出しなんてしていなかったよ!悪いのは猛スピードで走ってきたトラックの方だよ!!」
その言葉を聞いた警察官は運転手に向い、強い口調で「君!言っていることが違うじゃないか。署に来たまえ!」。
老母の娘は「そんなこと、ひどいじゃないですか…、かわいそうな、お母さん!」と声を震わせながら言った。
運転手は心の中で、「ちぇっ!目撃者がいたのか、ついてねえな」そして観念したのか、警察官に本当のことを話した。
警察官は少年に「よく、証言してくれたな、あの被害を受けたお母さんも娘さんも今後いろいろと助かるだろう。ところで、僕の両親はどこにいるのかな?後で警察署から感謝状を贈るから…、住んでいる所はこの近くかい?」
少年は「はい、この近くで母さんと2人で住んでます」と答えた。
少年は本当のことを言ってなんとも清々しい心地でもあった。
しかし、「あの約束」があったことを少年はすっかり忘れていたのだった…。
少年は必死で証言をしたのだ。
しかし、トラックに引かれた老母はすでに事切れていた。
即死であった。
間もなく倒れた老婆の体から、白く、まばゆい老婆が出てきた。
その老婆が少年の方に近づいてきた。
それに驚いた少年は、「お婆さん、僕が分かるの?」
老婆は「そうよ、こちらの世界にいたときは病気のせいでよく見えなかったけど、今はよく見えるのよ、景色やものだけではなくて人の心の中もね、それもはっきりと」、「ありがとうね。皆の前で本当のことを言ってくれて。私の娘は結婚もせず、ずっと私の面倒を見てくれたのよ、私は眼の病気でこれ以上一人娘に心配をかけさせたくなかったから…、そして寝たきり老人にならないためにも自分で体を鍛えようと歩く練習をしたら、あのトラックと事故に遭ってしまったのね。これが運の尽きというのかしらね。しかし、あなたのことは忘れないわよ、命の恩人?いや、違うわね。もう死んでしまったから心の恩人ね。本当にありがとう。今度は娘の幸福のため私が見守っていくのよ…。小さい頃から体が丈夫ではなかった娘だったけれど何か危険なことがあったら知らせてあげるの、しかし娘には私が見えないかも知れないけどね…、娘が私といつも一緒にいてくれたようにこれからもいつまでも一緒なのよ…」なぜか死んだ老母は心なしか嬉しそうにも見えた。そして老婆は少年に対し頭を深く下げ、そして向きを変え、悲しむ娘のいる方向へと歩き出した。
“運は天にあり”というように運は天にあって、人の力ではどうすることもできないものなのだ。しかし、果たしてそうなのだろうか?
第3夜おわり
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