チョコレート物語「ファニーとペーター」 By AEGIS
若いファニーとペーターは恋に落ちた。
しかし、ファニーの父親は、貧しい青年ペーターとの結婚に猛反対した。
チョコレートの原材料であるカカオは、とてもにがく最初は薬用に使われていた。
ペーターはカカオとミルクの混ぜ合わせに成功した。最初のチョコレート(スイス発)とされる。
カカオバターとミルクを混ぜ合わせればよいことは、わかっていてもその方法がわからない。
試行錯誤の末、ペーターはその方法を自分の職としていた蝋燭(ろうそく)の製造過程にヒントを見い出した。ペーターはそれらを混ぜ合わす方法を見つけたのだ。
蝋燭職人であったペーターは当時「ランプ」の普及により、蝋燭が全く売れなくなり、職を失っていた矢先であった。
そんな折、ひとつの愛が甘い結果をもたらした。
かくして、二人の結婚は許された…。
ゼーレの眼
失職のスランプと、生活費がないと結婚もできない、追い込まれたペーター。しかし、ピンチをチャンスに変えた好例だ。ベースにはファニーの愛が支えになっている。どうしても結婚したいという想いが奇跡を生んだのだ。こうして、2人は幸福を手に入れた(富は後からついてくる)。
もし、儲けることが主眼であったならば、この世に「チョコレート」は存在し得なかったのかも知れない。愛情がチョコレートを誕生させたのである。語り継がれてゆく夫婦の物語。ファニーこそ夫を支え、愛した、まさしくベターハーフ(better half)そのものである。
また、英語圏では、告白する時「I love you.」と言うより「I am sweet on you.」と言ったほうがモテルらしい。確かに、SWEETはなにか甘味さとソフトさをイメージさせる。
「Sweetheart」は「恋人」の意味。恋人に会って、眼を見ただけで、話しただけで、手をつないだだけでも、世間にもまれて、閉ざされそうな、かたくなな心を甘くほどいてくれる。
恋愛は甘くとろけ、時々ビターがいい。
「足下を掘れ!そこから泉が湧く」(ゲーテ)
文・編集 栗城利光(SWAN)