9 パンドラ
今日の冷たい雨が、
人々の恵みの雨に変わるように、
今日の悲しみが僕の愛に変わってくれたのなら…。
僕達は一体何をしてきたのだろうか?
幸福を追っていたというのだろうか?
それならばその追いつめた幸福は何だったのか!
誰もが幸福を追求するあまり自分の弱さや卑しさをさらけ出し合っているようにも思えてきた。
幸福とは言葉ばかりカッコ良くて、後には何も残りはしない。
彼女と一緒のときはそれほど感じなかったが、いなくなればいなくなったで、ポカンと穴があいたようで…、まだまだ話し合う時間があった。
僕は焦っていた、
自分の人生に、自尊心に、虚栄心に…、
そしてケアレスウイシュパー、そう!そうだったんだ。
どこからともなく聞こえてくるケアレスウイシュパーに迷わされたんだ。
今となってはすべてがなくなった。
あの頃の自分そして思い出、そして純粋理性だけが最後の頼みとなった。
最後の純粋理性よ!
人々はそれを「希望」と名付けた。
本当にまれなる望み…、あなたへの最後のプレゼント。
ゼーレの眼
ギリシャ神話に登場するパンドラ【Pandora】とはギリシャ神話に見える地上最初の女性である。天の火を盗んだプロメテウス【Prometheus】(ギリシャ神話で、チタン族の英雄。アトラスの兄弟。天上の火を人間に与えてゼウスの怒りを買い、コーカサス山に鎖でつながれ、大鷲にその肝臓を食われたが、ヘラクレスに助けられた。また、水と泥から人間を創り、他の獣のもつ全能力を付与したという。)を罰するためにゼウスがヘファイストス(【Hephaistos】ギリシャ神話で、火と鍛冶の神。ゼウスとヘラ(またはヘラだけ)の子で、足がわるく醜貌。美の女神アフロディテの夫)に彼女を造らせた。そしてゼウスがパンドラに、あらゆる災いを封じ込めて人間界に持たせてよこした箱。それを「パンドラの箱」という。パンドラはこれを開いたため不幸がとびだしたが、急いで蓋をしたため「希望」だけがそこに残ったという。
ところで、希望って何だい