2 サグラダ・ファミリア
時空を超えたロマンがあった。
決して天には届かぬその心が、到達した時、あの人はここで何を考えていたのだろう?
恋人のことか、家族のことか、金か、名誉か、いやそんな事ではない。
生き方だ。それも天才にふさわしい生き方だ。
そうなんだ、もっと考えるべきなんだ!
こぼしたワインを拭きとらずに、それを手に付けて、額を濡らしてごらん。
思いがけない幸福が飛び込んでくるから…。
後を追ってはだめだよ。絶対的に逃避本能を起こしてしまうから…。
何の役に立たない事をしているよりか、何か良い事をしよう!
それがあの人の基本だった。
あの広大な思考はほんの少しの善意のバリアーに守られていた。
ほら、もう少しだよ。完成するさ、それのみを信じていれば…。
僕にとって、それ以外は補足的なこと、もっと足るべきことを望むべきだから…。
しかし、僕の生きている間にあの建物は完成するのだろうか…。
ゼーレの眼
サグラダ・ファミリア(聖家族教会)とはスペインの天才建築家アントニオ・ガウディの建築物の一つである。もっぱら現代建築に頼らず、石をベースに鉄骨を使わない建築物。建築というより芸術作品に近い。すでに主を亡くしたこの建物はいつできるのかな。おそらくこの建造物の前においては誰をも詩人に変えてしまう力があるのかもしれない。
テーブルなどにこぼしたワインを額につけると何かいいことがあるんだって(ヨーロッパ)。