詩との再会 「 SUBWAY 」
久しぶりにmixiの自分の日記を観ていて、アメブロの読者の方にも観てもらいたくなって、アップロードしました。良かったら暇つぶしにどうぞ。
「 SUBWAY 」
いつだったかは忘れたけれど
あれは俺がまだ自分の居場所を見つけられずにいた頃の
秋の六本木での出来事だったと記憶している。
ツヤマーリーと俺は ばっちりキメて
CLUBへと繰り出していた。
店の名前は もう忘れてしまったが
黒人の用心棒がドアーを守っているような店で
客の80%は不良外国人だった。
グラマラスな視線が飛び交う
多国籍な空間。
ヤセッポッチのアジアンボーイは
まるで用無しと言わんばかりに
美女の視線は俺を素通りだった。
お立ち台で一心不乱に踊る娼婦のような女たち。
男たちはみんな海兵隊に見えた。
俺は少々そのハイパーな雰囲気に耐えらなくなり
その旨をツヤマーリーに告げて外の空気を吸いに表に出た。
街灯に照らされた交差点の向こうに
コーヒーショップが見えた。
俺はタバコ-ヒ-でもしようと思い
自動ドアーをくぐった。
温かいコーヒーを注文し
風景を眺めることの出来る席に腰掛け やっとリラックスした。
カフェインとニコチンのハイボール。
血管は膨張と収縮を余儀なくされ
脳は錯覚のリラックスを手に入れる。
俺はCLUBで手に入れた
フライヤーとペンで
言葉を書き始めた。
昔から俺の暇つぶしといえば
「言葉」だった。
言葉の羅列。
決して誰にも見せることのない言葉。
俺はくわえタバコで紙に向かい
紙の上をペンで散歩するように言葉を書いた。
退屈そうに言葉たちは行儀悪く紙の上に散らばっていた。
時折 タバコを吹かし
夜の路上を眺めた。
いい女が黒人に肩を抱かれ
まるで映画の主人公のような歩き方で
過ぎ去って行った。
俺は また 紙に視線を落とし
書き始める。
時の針は角度を変え
世界がまた少し変化したことを告げる。
書く場所がなくなった頃
ツヤマーリーが「SUBWAY」へとやって来た。
俺の前の席に座ると同時にタバコに火をつけ、視線を俺へと向けた。
「何してたの?」
とツヤマーリーは微笑み混じりの
優しい口調で俺に訊ねた。
「言葉を書いて暇つぶししてた。」
と俺は少し自嘲気味に答えた。
「みせて。」
とすかさずツヤマーリーは言った。
内心 俺は
「えっ?こんなもの見せられねぇ!」
と少し焦ったが、
さも平気な振りをして冷静に
「うん いいよ。」
と、その落書きだらけのフライヤーを
ツヤマーリーに手渡した。
ツヤマーリーは一読したあと
俺にこう言った。
「96ちゃんは 普段から言うこととか発想が面白いから詩を書けばいいのに。」
あの日、どんな会話を交わしたか
正直全く覚えていないけれど
この時の「SUBWAY」での
このやり取りは一字一句間違わずに覚えている。
俺は思い出した。
子供の頃、詩を書いて遊んでいた時のことを。
詩を書くことがなにより喜びだったことを。
詩が大好きだったことを。
俺はこれまでの10年間
まったく詩を書いていなかった。
忘れていたのだ。
詩人の魂はこの時まで
熟睡していた。
ツヤマーリーのこの一言が
俺の中で眠りこけていた詩人の魂を目覚めさせた。
俺はこの日から
錆びついた感性を取り戻そうと
言葉を書き始めた。
俺の詩人としての再出発は
「SUBWAY」だった。
「地下鉄」
まさにアンダーグラウンドを突き進む列車のように
ふたたび 俺は詩人として
駆けはじめた。
2006年08月28日23:54