奇跡の確率 | 詩人 黒田誉喜  Blog from globe

奇跡の確率



ナゼかはわからないけれど

宇宙が誕生し

銀河系ができ、太陽系が生まれ

太陽と地球と月との見事なバランスで円周軌道は保たれ

地球に雨が降り

昼と夜が始まり

アミノ酸の革命。

原始生命の誕生。

生命は変化と淘汰を搔い潜り

ただ単に適応という言葉では片付けられないほど
進化してきた。

海で生きる者。

新天地を求め大地に這い上がった者。

生き方は様々だったが

蔓延るという本質は変わらなかった。


生命は樹木が生長するが如く枝分かれし

数えきれないほどの種類になった。

もちろん淘汰の掟に従い

その存在を消した種族も数えきれないだろう。

そもそも、生命が寿命を全うできる可能性は何%だ?

そんなのわかるわけない。

俺は故郷を愛している。

何の因果か、俺は四日市山城町に生まれた。

想像できないほど広い宇宙で
この座標を魂の着地点とした。

なぜかは思い出せない。


四日市市
楠町
吉崎海岸。

ここを故郷と呼ぶ生命が居た。


海ガメは生まれた故郷に世界の回遊から戻り産卵するという。

孵化した子ガメたちは、まず殻から出るという試練

そして、天敵から身をかわし無事波打ち際まで辿り着くという試練

そして野生の海を独りで生き抜く試練が与えられる。

無事に大人になることができるのは何匹だろうか。

そして帰ってくる故郷が無事にあること。

無事に帰ってこられること。

そして産卵の場所を見つけ

外敵に卵を食べられないこと。

そして殻を破ったこの世界のルーキーたちがまた

海を目指す。


太平洋ベルト地帯の一部を担う四日市コンビナート。

その隙間に

吉崎海岸はある。

公害の町として有名な「 四日市 」

数年前まで海ガメの産卵があったこと自体驚きだ。

しかしながら、ここ数年は帰って来なかった。

故郷を捨てたのか。

それとも捨てられたのか。

少なくとも俺たち人間はゴミを海岸に捨てた。

砂浜には人工物の残骸が散乱していた。


赤ウミガメに帰ってきてもらおうと
必死に掃除をしていた人たちがいる。


四日市うみがめ保存会の皆さん。

月に一度、暑い日も、凍えそうに寒い日も掃除をしてきたひとたち。

拾っても拾っても、漂着物を含め、ゴミはなくならない。

俺はたった二度だけしか参加していないから偉そうなことは言えない。

でも早朝の吉崎海岸は気持ち良かった。

透明な水と風と笑顔。

その背後には赤白煙突が空に突き刺さる。

心底、報われて欲しいと思った。


そして、ついに

2010年7月27日
満月の翌日


「 産卵を確認 」


生命の進化の先端で
淘汰から身を守り
吉崎海岸生まれの
あの晩、波打ち際を目指し
野生の海を生き抜いた
赤ウミガメが故郷へと帰ってきたのだ。


そして卵を無事に産み
また海へと帰っていったのだろう。


四日市ウミガメ保存会の方々の活動と
今回の産卵の因果関係と問われたら

俺は「 100%ある! 」と答えるだろう。


奇跡の確率。


といっていいと思う。


おかえりなさい。

故郷へようこそ。