然程な町のバスターミナルに、ジャージ姿の学生がいた。
彼はラケットバッグを横に立てかけ、ベンチにしなだれ、お気に入りでもあるのだろうか、イヤホンを耳に突っ込み、まんじりともせずスマホを視ていた。
バスでも待っているのだろうかと思ったが、本数もそう多くもない町でバスを待つのも難儀だろうにと思っていた。
ひと時おいてまたターミナルを見やると、当然来るバスもなく、未だ待ち続けていた。
昼も過ぎ去り半ドン文化無き今に、これからどこなりとへテニスでもするのかと思うところに、隣町からバスが来た。
隣町から来たバスの終点は然程な町の学校なので、部活でもしに行くのかと思いきや、彼はしなだれたままだった。
はてと思うところに、バスからひとりのジャージ姿の学生が降りてきた。
そちらは無手で、降りるや否やしなだれる彼へ駆け寄るではないか。
なるほど、彼女か。
隣町からバスで小一時間かけてきたのかもしれない。
しかし然程な町より大きい隣町から彼氏の元へ来て、何処に遊びに行くのやら。
そうも思ったが、若い二人はどこへ行くでもなく、ターミナルの外のベンチに腰かけたまま、イヤホンを分かち合い、一つの画面を長閑にシェアしていた。
なるほど、青春か。
これがエモいというやつなのだな。
後を知るのは無粋なもので、邪魔しちゃいけないと足早に立ち去ったのであった。