最近マニア度が足りないとのご指摘を頂き、今回は一般の人がついて来ないのを分かった上でのマニアックな話題で。
垂直離着陸ティルトローター機と言えばV-22オスプレイが唯一の機体として実用化されている。その安全性については、いろいろな議論があるが、前にも述べた通り、オスプレイが得に危険な機体だとは思わない。
そらを飛んでいる以上、飛行機であれ、ヘリコプターであれ、ティルトロータ―機であれ、事故を起こす可能性はあり、全く安全ということはあり得ない。要は確率の問題だが、オスプレイが他のヘリコプターよりも特に事故率で遜色がある訳ではなく、頭の上を飛んでいれば、他のヘリコプターや飛行機と同じだということだ。
ただ、新しいメカニズムの機体ということで、不安心理が先行し、危険な機体というイメージだけが独り歩きしているように思う。しかしいい面を考えてみれば、通常のヘリコプターよりも3倍もの航続距離を持ち、その先でヘリコプターのようにホバリングできるということは、例えば海難救助や離島からの急患移送などで、今までヘリコプターの航続距離のために到達できなかった場所に到達できるという可能性がある訳である。これは素晴らしいことだと思う。
現在のオスプレイはあくまで軍用機だけが実用化されているが、これからアグスタウェストランド AW609が就航すれば、更なる活躍が期待される。(ただAW609は昨年10月に事故を起こしたので、今後の開発が少し心配だが)
一方で、実はオスプレイには設計的に弱点が一つある。それは構造として、ヘリコプターモードの時に、エンジンそのものを垂直にするため、下向きにジェット噴流が発生してしまうという問題だ。
オスプレイはターボシャフトエンジンというエンジンを使っており、これはジェットエンジンから回転力を得てローターを回しており、多くのヘリコプターと同じ仕組みである。問題はそのエンジンが推進方向に合わせて、水平から垂直に変わるようになっているので、ヘリコプターモードの際には、垂直になって、下方にジェット噴流が出てしまうことだ。
普通のヘリコプターは、ジェットエンジン部分は水平方向に固定されており、ローターだけが下方に気流を出しているので、基本的に常温の空気が下に吹き付けているが、オスプレイは熱いジェット噴流も下に吹き付けているので、それが人に当たると大変危険なのだ。よって、オスプレイには、普通のヘリコプターにあるようなサイドドアがなく、出入りは後方のカーゴドアからするようになっている。
これは運用上の制約になるし、救難ヘリのように、サイドドアからホイストで救助するということが出来ないことになる。
この欠点を解決するために、次世代ティルトローター機 ベル V-280 Valorが開発されている。
V-280は、オスプレイと同じように、ヘリコプターのように垂直離着陸した後、ローターを90度回転させて飛行機のように飛行できるのだが、その一番の特徴は、エンジンと翼は水平方向に固定されており、ローターシャフトだけが垂直方向に変わるという設計になっている。よって、熱いジェット噴流は、常に後方に向けられており、お蔭でサイドドアを持つ機体となっている。
垂直離着陸機はまだまだ発展途上の技術だが、ヘリコプターのように、色々な用途にこれからも普及していくと思う。その際、イメージではなく、その新しい技術が生み出す価値と、実際の危険性をきちんと評価しながら進めて行くことが大事だと思う。