ダマー映画祭 イン 広島
ダマー映画祭とは「Spiritual Experiences」をテーマに2001年からアメリカ・シアトルで始まった国際映画祭です。2009年より広島で開催しています。“DAMAH”(ダマー)とはヘブライ語で「インスピレーションを与える比喩・たとえ」を表します。
人物の葛藤や心情の変化など、人間の内面の描写にスポットをあてたテーマ性のある作品を公募するのが特徴で、作品を通じて各国の文化や環境、地域社会の課題などが見えてきます。
今回は特別招待作品「河童」を紹介します。
特別招待作品 「河童」 ストーリー
世界的な報道写真家、鈴森雄太(藤竜也)の個展が15年ぶりに日本で開かれた。その会場に一人の若者が現れる。別れた妻との間の息子、戸田勇(原田龍二)である。幼い自分と母を捨てて顧みなかった鈴森に、憎しみと怒りをぶつける勇。と、鈴森が突然倒れ、病院へと運ばれた。以前に痛めた心臓の状態が悪化していたのだ。
自分の残り時間がわずかであることを悟った鈴森は、勇に故郷の北川村の名を告げ、「俺は少年の頃、河童を見た」とだけ言って病室を抜け出そうとする。戸惑う勇の前に、一個のボールが落ちた。まるで生き物のような不思議な動きで床や天井にバウンドするそのボールは、鈴森がずっと大切に持っていた”尻子魂(しりこだま)”だった___。
緑色の光に誘われて洞窟の奥へ入っていくと、河童の親子がいた。母河童は弱っており、二宮金次郎像や火の見やぐらなどを寄せ集めた巨大な塔のカプセルの中に入っていた。それにしても、彼らはどこから来たのだろう?不意に、雄太は地中の池の中に引き込まれた。水面の下には、水の代わりに美しい宇宙が広がっていた。これが、天なのか。「TEN」と呼ぶ雄太の声に、子供の河童が喉を鳴らして答えた。これが雄太とTENとの出会いだった。
あれから40年以上たち、村は今、ゴルフ場になろうとしている。勇に支えられて、変わりはてた村を歩きながら鈴森は語る。人間の狂気を撮っているつもりで、実は一番狂っていたのは自分自身だと気づいた、と。勇は天神沼のほとりに建つ勇吉の殉職碑を見て、自分の名前が祖父から貰ったものであることを知る。川嵐洞跡を歩こうとしたとき、鈴森の尻子魂が転がり落ち、二人を地中に埋もれた洞窟の中へ導いた。そこに、老いたTENがいた。鈴森との約束を守って、待っていてくれたのだ!古びたハーモニカをTENから受け取ると、鈴森はくずおれた。父の体と抱きかかえる勇。「俺はいつも大事なことを大事な人に言えなかった。すまなかった」そういって鈴森は息を引き取った。
TENの宇宙船が飛び立つのを見送りながら、勇はしっかりと心に刻む。父が自分に伝えたかったことを。父が、その父や祖父から受け継いだことを。
河童というと水木しげるさんのアニメの河童を思い出します。この映画では宇宙人になっています。
この「河童」は、石井監督の出身地の茨城県で撮影されたそうです。開発により日本の原風景といわれている山里が壊されようとしています。現代文明の進歩はこうした日本人心まで狂わしているのでしょうか。
最初の鈴森雄太の個展の開会式の場面が短くて、どういうテーマの個展かわからないが映画全体を見て言いたいことがわかってきました。
ゴルフ場建設のため、村の人々が崇めてきた「河童洞」を壊していいのだろうか。
映画のなかでは村人が河童の踊りがあったことから、河童は村の守り神と思います。
私は綺麗なものを見せるまたは記録を残す映像を撮影していますが、こういう話が進むたびに考えることも必要です。
20世紀は発見の世紀、21世紀は考える世紀といわれています。
見る人に考えさす作品も製作していきたいです。