昨年の四熊観音様まつり(平成24年10月)のときのゆかいな話です。
(語り 大田美和子さん)
ぴんとこしょ
むかし、あるところにちょいとうすのろ息子がおったげな。
ある日、その息子が親類のところへ行って、おはぎもちをごちそうになったが、そのおはぎもちのうまかったこと。
「おばさん、こりゃあ、ほんまにうまいのう、うちのおかあさんにも作ってもらおうと思うが、これはなんちゅうもんかのう」
「そうか、そんとうにうまかったかの。それはおはぎもちっちゅうもんじゃ」
「へええ、おはぎもちか」
息子は、忘れちゃいかんと思うて、
「おはぎもち、おはぎもち」
と、いいながらかえりはじめた。
ところが、小みぞのところにさしかかったとき、
「ぴんとこしょ」
とかけ声をかけてとびこえたんじゃ。
すると、息子はそのまま
「ぴんとこしょ、ぴんとこしょ」
といいながら、家にかえってきた。
「おかあさん、ぴんとこしょちゅうもんがうまかったけ、作ってくれ」
おかあさんはびっくりして聞きかえした。
「ぴんとこしょちゅうてなんかの、そんなもんはなはど」
「ぴんとこしょちゅうたら、ぴんとこしょじゃ。」
息子はそういうて、おって、おかあさんのひたいをたたいた。
「親に向かってなにをする。おまえがたたいたけ、これ、ひたいがもちのように ふくれてしもうた」
おかあさんが息子をおこると、息子はきゅうににっこりとして
「そうじゃ、それそれ、もちじゃ。おはぎもちじゃ。」
と思い出したげな。