子どもの親権争いで敗れ去った側は、子どもと面接する権利を求めることになります。

離婚した者同士が子どものためとはいえ、面接時に相手が同行してくるのは、よい気分でないこともあるでしょう。それでも親としては子どもに会いたいものです。相手に会いたくないのであれば、面接場所に相手の親(子の祖父母)に連れてきてもらうのも一つの方法です。

それよりも困るのは、相手がどうしても子どもに会わせてくれないときです。そうなれば、調停・審判の手続きを踏まざるを得ません。

面接交渉権のことに限らず、離婚に際してはいろいろなことをきっちり話し合い、決めておくことが必要です。面接交渉権についても忘れず協議書に記載しておきましょう。

子どもの健全な心身の発育のためにも、親子の絆は大切にしたいものです。絆の存在が子どもに「安心」を与え、逆にその欠如が子どもに「心の闇」「心の病」をもたらすと、考えることもできるのではないでしょうか。
結婚(婚姻)とは、役所に届を出すことで法的に成立します。離婚も役所に届を出すことで成立します。

そこで気になるのが、「内縁」と「同棲」です。両者とも法的な届出とは無関係です。

まずは、「内縁」。
内縁は、何らかの事情で婚姻届を出していないだけであり、実態上の夫婦関係にある状態のことを指します。二人で町内会の役員を務めたり、結婚式や葬式に出席したりして、普通夫婦単位で行動することを日常的に二人でしているならば、これは内縁の夫婦と呼んでも差し支えありません。

一方、「同棲」とは何でしょうか。
「同棲」とは、一時的に男女が共同生活を送ることであり、「内縁」とは異なり、社会生活上の行為を二人共同で行うことはありません。男性が会社に出勤し、女性が家事をしながら帰りを待つというだけでは、「内縁」ではないのです。

それら以外でも「内縁」と「同棲」は大きく違う点があります。
それは、別れることになったときに、慰謝料を請求できるかという点です。

「内縁」は、事実上の婚姻(これを「事実婚」と呼びます)なので、同居を解消すれば、慰謝料や財産分与が認められます。子どもがいれば、養育費を請求できます。
 一方、「同棲」は一時的に男女が同居していたことに過ぎないため、慰謝料や財産分与は発生しないのです。たとえ一方が生活費の大部分を負担していたとしても、それは単に共同生活を維持するためだけのことであり、解消したときに清算されるという類のものではありません。

相当昔になりますが、私は、歌謡曲で「同棲時代」(確か歌手は「おおしだれいこ」)という曲がヒットして、初めて「同棲」という言葉を知りました。昭和の匂いがプンプンする時代のことです。そういえば、「神田川」も同棲生活を描いた映画だったような…余談でした(笑)。
どこまで婚姻費用を負担すべきか。
次のような場合は、どう結論づければよいでしょうか。
東京高裁(昭和58年)の裁判例から考えます。事実の概要は簡略にまとめてあります。


<事実の概要>
A女とB男は昭和37年に結婚。その後二女をもうけた。B男は酒癖が悪く、これを非難したA女と口論になり、B男はA子に家財を投げつけたりしたため、A子は実家に帰った。しかし、その後A子はもう一度やりなおそうと家に戻りB男との共同生活を続けていた。

その後は普通の生活が続いていたが、昭和45年、B男が躁うつ病に罹り医師から入院を勧められ、A子も会社から入院についての同意を求められたが、A子は判断がつかぬまま二人の子どもを連れて実家に帰ってしまった。

その翌年B男は職場復帰しA子に同居を求めたが、A子はそれに応じなかった。その間A子は別居後実母や姉の協力を得て子育てをしていた。しかたなく、B男は昭和54年C子と見合いをし、離婚について話し合いを持つべくA子の実家に何度も足を運んだが、会えなかったため、C女と結婚を前提に同棲生活を始めた。

同年B男は離婚調停を申立てたが不成立に終わり、昭和57年地裁に離婚訴訟を提起した。対してA子は家裁に監護養育の申立てをした。

家裁がA子の申立てを認容したので、B男は高裁に抗告した。

その決定の要旨は以下の通り。

<決定>
婚姻費用の分担請求は認められない。ただ、同居の未成年の子の監護費用を婚姻費用の分担として請求し得る。

<理由>
・婚姻が事実上破綻して別居生活に入ったとしても、離婚しない限りは夫婦で婚姻費用を分担すべきであるが、
 (1)A子はB男の意思に反して別居を強行した
 (2)A子は同居再開につき真剣な努力を全くせず、そのため別居生活が継続した
という理由により、少なくともA子本人の生活費に当る分についての婚姻費用分担請求は権利の濫用として認めらない。

この決定の是非については学者の間でも賛否両論ですが、妻が別居ないし婚姻破綻について責任がある場合は、婚姻費用分担を請求しても相当額が減額されることになるでしょう。

離婚に至るまでに別居生活に入ることが多くあります。別居中の生活費はどのように負担すればよいかは、難しい問題です。きょうはまず、その導入部分。

民法には次のような規定があります。

第760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

つまり、夫婦は同居してお互いに助け合って生きていかなければならないと定められているのです。しかし、なんらかの理由で夫婦が別居するようになってしまった場合の生活費の分担はどうすればよいでしょう。

さて、「婚姻費用」とは何を指すのでしょうか。それは、夫婦と子の共同生活で、その財産・収入・社会的地位に応じた程度で社会生活を維持できるための生計費のことをいいます。

つまりこの問題は、夫婦間の相互扶助(民法752条)と親の子に対する扶養(民法877条1項)という二つの問題に関わるものです。

賠償請求と時効 




4年前に夫の不貞が発覚した。本人もその事実を認めている。すったもんだしたが、いろいろな事情もあり、離婚せずにいままで結婚生活を続けている。夫が白状した後は、うまく隠れて浮気をし続けているのか、女と別れたかどうかは定かではない。

なんか、気持ちがすっきりしないこの際、夫と女に対して損害賠償請求をしてやろうか。



こんな場合、慰謝料を請求できるでしょうか。



夫婦には貞操の義務があり、夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、他方の配偶者の夫または妻としての権利を侵害した不法行為責任を負うことになります。(最判昭54.3.30より)



しかし、不法行為による損害賠償の請求権は、被害者がその損害及び加害者を知ったときから3年間行使しないときは、時効により消滅します。(民法724条より)



したがって、上記の場合は、請求できません。正確にいえば、相手が時効を主張すれば、請求権を失うことになります。



時効の起算点は、不貞行為があった時点ではなく、あくまでも「知った」ときになります。





また、損害賠償請求は、夫(妻)に対しても愛人に対してもできます。あなたが被害者なら、その事実をいつ知ったか、よく確認してみましょう。もし、明確に3年以内の日にその事実を知ったことが証明できれば、時効にはかかりません。








離婚後の姓と戸籍

結婚により姓を変えた者が離婚すれば、基本的には旧姓に戻ります。

結婚前の父母の戸籍に戻ることも、新たに旧姓で戸籍をつくることもできます。

一つの例をあげてみましょう。
夫長崎太郎の妻花子(旧姓香川)との間に息子真平がいます。そこで太郎と花子が離婚しました。

特に手続きをしなければ妻花子の姓は香川に戻ります。香川姓に戻り、父母の戸籍に戻ることも、新たに戸籍を作ることもできます。しかし、真平の姓は両親の離婚によって影響を受けることはありません。そのため、母親が親権者になり、母親が旧姓に戻った場合、いっしょに生活しているにもかかわらず、母は香川、子は長崎というように母子の姓が違うことになります。それでは社会生活上何かと不便であり、都合の悪いこともあります。

そういう場合、子は家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立書」を提出し、許可をもらうことで母親の姓香川を名乗ることができるようになります。

そこで注意しなければならない点があります。同居している母花子が監護権を持つだけで親権をもっていない場合です。子の年齢が15歳以上か否かで違ってきます。15歳以上であれば、子自身で申立てることができるのに対して、15歳未満であれば、法定代理人たる親権者が申立てることになります。そこで母花子が親権を持っていない場合、太郎が申立てることになり、太郎の協力が必要です。太郎の協力が得られなければ、真平が15歳になるまで待つか、親権者変更の申立てをするかということになりますが、親権者変更は簡単に認められるものではありません。

思い出すのですが、小中学生時代に一人の親しい友人がいました。頭も良く、しっかりしていた印象があります。彼の苗字が中3の頃、変わりました。おそらくこのような事情があったのでしょう。

また、離婚により旧姓に戻ったが、婚姻時の姓を名乗り続けるほうが都合がよいこともあるでしょう。仕事を持っている場合、旧姓に戻ることで周囲に離婚したことに気づかれたくないと考える人もおられるでしょう。その場合、離婚した日(離婚届の受理日、調停成立日または審判・判決確定日)から3ヶ月以内であれば、届出により婚姻時の姓を称することができます。
 
姓の問題も、離婚にあたって熟慮しなければならない重要なポイントです。



養育費は、親権監護権者(つまり、夫または妻)が受取るものではありません。





それではいつを終期とすべきでしょうか。

これまでは、成人するまでと取り決められることが多かったのですが、相対的に高学歴化が進むなかで、最近では、大学卒業までと取り決めることが多くなりました。しかし、もしその子が中学卒業後に就職すれば、その時点で打ち切られます。

こと養育費に関しては、非扶養者側(引き取らない側)の支払能力や最低限度の生活を送っていくための権利もあり、現実には、なかなか思うような額に取決めることは困難です。

しかし、いったん公正証書や調停調書で養育費が定められれば、心強いものです。2004年から民事執行法が改正され、養育費の確保がしやすくなりました。不払いがあれば、過去の未払い分だけでなく、将来の分も相手の給料を差し押さえて確保することができるようになりました。


勘違いしそうになるのですが、これはあくまでも子ども本人の権利です。

離婚後妻が子どもを引き取る場合、妻から夫に対して養育費を求めてきます。この場合、妻の立場は子ども本人の法定代理人という立場です。

母親としては、「この子を立派に育てあげる」ことを考え、子に代わって養育費を請求してくるのです。

それでは、養育費がもらえる始期と終期はいつになるでしょう。
まずは始期について。
求める側としては、離婚直後から現在、将来までを求めることになります。

これまでは離婚裁判は地方裁判所で行われていましたが平成164月から人事訴訟法が施行され、家庭裁判所で行われるようになりました。

 裁判には概ね1年から2年を要し、また結果的には和解で決着することも多く、労力・資力を費やすにはあまりに非効率的です。裁判所での結論を求めるあまり、いたずらに歳月を消費することは、あまり賢明な方法ではないとも思えます。



 裁判を提起する前にもう一度、裁判所外で話し合い、協議書にまとめることも選択肢に含んではどうでしょうか。


若くして結婚する人がいます。

民法753条では「未成年者が婚姻したときは、これによって成年に達したものとみなす。」と定められており、これを法律用語で「成年擬制」と呼びます。自分の名義でクルマを買うことも会社を作ることもできるようになります。

注意が必要なのは、この「大人扱い」は民法上の話だけであって、選挙権や飲酒・喫煙については、まだ子どものままです。

対して、若くして離婚する人もいます。では、19歳で離婚した場合、もう一度「未成年者扱い」に戻るのでしょうか。

答は「ノー」です。

夫婦の一方が死亡した場合や離婚した場合、成年擬制の効果はなくなりません。
経済的な理由が原因で離婚する夫婦が多くみられます。そこで気になるのが、夫婦はどの範囲まで相手がした経済行為を連帯して責任を負うものかという点です。

最近は取り締まりがきつくなったこともあり、無茶な債権回収行為は減ったようですが、それでもいまだに恐ろしい業者もいます。

「夫の借金を妻が支払うのは当然やろ!嫁はんのおまえが払わなあかんのは当たり前じゃ!」とすごまれてしまうと生きた心地もしませんね。

 民法761条には「日常家事に関する債務の連帯責任」が定められています。

「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う…以下略」

これを読むと、「妻は夫が事業で作ってしまった借金も支払わないといけないいんや」と心配になると思われるかもしれませんが、ここに最高裁の判例があります。

「前段略…相手方においてその夫婦の日常の家事に関する法律行為と信じるにつき正当の理由があるときに限り、…中略…相手方(債権者)が保護される」

この「日常の家事」の範囲は、どこまででしょうか。夫が勝手に購入したテレビの代金あたりは日常の家事にあたり、支払う義務があるでしょう。しかし、夫が事業で作った借金は「日常の家事」にはあたりません。

夫の事業に関しての借金の場合、妻は保証人、連帯保証人にさえなっていなければ、法律的には心配することはありません。

ですが、現実的には、それでも妻に対して強引な取立てをする貸金業者が存在することも確かで、不幸なことにそれが原因で離婚せざるをえなくなるケースも多く見受けられます。