アヅキ・バルの夢の中 -7ページ目

アヅキ・バルの夢の中

気が向いたらぷちSSとか上げるかもしれません。

 こんにちは、アヅキです。
 聞いてください、昨日不思議な夢を見たのですよ。
 アラクニア人は催眠学習で知識を習得するのですが、こちらに来てからはそれができず、普通に寝ているのです。
 そのせいか最近夢をよくみるのです。
 しかもかなりリアルのなのをですね。
 この前は女装したふるべぇさんが出てきたりしましたが…まぁ、これは別の話なので脇に置いておくとして。
 昨日の夜はショッピングビルから持ってきた服の寸法直しをしててですね、ちょっと遅くなってしまったんですね。それでどうも途中で寝てしまったようでして、目を覚ましたら私は見覚えのない洋風の部屋の中央に立っていました。
「あ、あなた誰?ここで何をしているのですか?」
 見た目、地球の中世時代の貴族の令嬢っていう感じの衣装を身にまとった女性が椅子からずり落ちかけながら、問いかけてきました。
 銀髪ロングで、肌がすっごく白い。
 白磁という形容をしたいレベルの白さ。
 年齢はたぶん私より2、3つ上ぐらいかなぁ。
 まぁ、ふるべぇさんの年齢詐欺を考えると、見た目で判断すると危険かもしれないですが。
 とりあえず、このまま黙っていると次はガードとか叫ばれ、昔冒険者だったが膝に矢を受けてしまった衛兵が猛スピードで走ってきて、スタァァプ!!とか言われそうなので。
「私はアヅキ・バルです。怪しい者じゃないです」
 胸の前で両手をぱたぱたとクロスさせる感じでですね、わたしはわるいエイリアンじゃないよ、っていうアピールをしたわけです。
「アヅキバル?アヅキさんですか?貴女、いったい、どこから入り込んだのです?ドアには鍵をかけていたはずですが」
 不安そうに室内を見渡す彼女。まぁ、私が同じ立場でもたぶん同じことする。
「えっと…なんというか気づいたらここにいました」
 嘘は言ってない。
 言ってないけど、目の前の女性は、小首をかしげて探るような眼差しを向けてきた。
 それはそうだよね。
 自分で言うのもなんだけど、今の発言はものすごく怪しいもん。
「なるほど…貴女は私を誰か知っていて?」
 なので、次の瞬間、彼女が私の言葉をすんなりと受け入れた事実に、不意を突かれて正直ちょっと戸惑いました。
「い、いえ、存じ上げません」
 とか妙に馬鹿丁寧な言葉遣いになっちゃっいましたよ。
「私はマーガレット・ヘイルシャム。コーンウォリス公国の貴族で、貴女は今私の私室の中にいるのですよ」
「恐縮です」
 ああ、やっぱり貴族なんだ。
 なんかにじみ出る気品っていうのかな、そういう高貴な人オーラを放ってるもの。
 でも、コーンウォリス公国?
 そんな国が地球にあったかな?
 地球の地理に関してはネイティブの地球人並みには知ってるつもりだけど…
 ああ、でも、そもそも私は地球から漫月に召喚されていた訳で、ここが地球のどこかである可能性はかなり低い。
 ということは、もしかしてまた異世界に飛ばされたとか、あるいは、また夢を見ているのかの二択。
「そうね、まず…貴女、どこから来たの?私は館の中にいる者の顔はだいたい知っていますけど貴女を見たことはありません。それに貴女の服装もかなり変わっていますよね。それはどこの衣装ですか?」
 マーガレットさんの問いかけに私は自分の姿をチェック。
 私がこの時着てたのは、漫月に召喚された時に着ていた白地に黒のボーダー柄のトップスと白のスカート。
「これは地球のものですね。地球では一般的な衣装ですよ」
「チキュウ?それはどこの国かしら?そのような名前の国や地名をこれまで聞いたことがありませんが?」
「あ、いえ、地球は国や地名ではなくてですね、星の名前です。国で言うなら日本です」
「ニホンも初耳ですけど、星の名前とはどういうことです?星って空に浮かんでいるあの星のこと?」
「えっと、そうですね、そう、星です」
 これは夢ですね、そうだ、夢に違いない。めっちゃリアルだけど、そうに違いない。
 そう自分に納得させかけていた最中に、いきなりパンっていう乾いた音が響いて、ちょっとビクッってなりました。
 ちょっと飛び上がったかもしれません。
 何かと思ったら、マーガレットさんが両手を合わせるように手を叩いたんですね。
「ああ、これ夢ですね。なるほど、どうやら私は執筆作業中に寝入ってしまったということですね」
 あ、なんかマーガレットさんも、これは夢という認識で一致したっぽいです。
「ですよねぇ。最近私も変な夢よく見るんですよ。もともとアラクニア人は寝ている間は催眠学習するんですけど、今それができなくて、そのせいで変な夢を見ちゃうみたいで」
  夢なんだと思ってしまうと、気が楽になりましたね。
 夢なわけですから、どんなにおかしなことが起きていても、何の不思議もないですしね。
「なるほど。それで、先ほどの話のことですけども…」
「えっと、どの話ですかね?」
「チキュウが星の名前という話です。空に浮かんでいる星の」
「ええ、そうですそうです。地球は星の名前で、私はそこに住んでいたんですよ。もっとも私のお父さんはアラクニアという別の星のエイリアンで、宇宙船の事故で地球にたどり着いて、地球人の母と出会って出来たのが私。なので、厳密に言うと、私はアラクニア人と地球人のハーフです」
「チキュウやアラクニアという名前の星も知らないですね。まぁ、星自体ここ3年程見てないですが」
「星を見てないんですが?ですけど、この窓からも空は見えますよね?」
 この部屋にはもちろん窓がついてました。
 カーテンが引かれているので外は見えてなかったですけど、不思議に思って尋ねると、マーガレットさんは、ちょっと驚いたように眉を引き上げてから、ああという表情になった。
「そうね、チキュウから来た貴女は知らないのね。このマテオ・テーペは海の底にあるのよ。世界は3年前の大洪水でおそらく大半が海の底に沈んだ。マテオ・テーペは水の神殿の結界のおかげで残っているけど。だから、ここからは空も星も見ることはできない」
「えっ?それって大変ですよね。ヤバくないんですか?」
「もちろん安全ではないですよ。いつまでも水の結界は持ちませんし、結界で守られている範囲も徐々に狭まっています。なので地上に出る為に箱舟を作っています。一隻目はすでに出航して、今は二隻目を建造中です」
 なるほど脱出計画が現在進行中というわけですね。
 でも、箱舟かぁ。この世界の技術力がどれぐらいあるのかわからないけど、部屋の中を見ても近代的なテクノロジーの産物が見当たらないところを見ると、潜水艦のような潜水能力を持つ艦船というよりは、魔法的な船かな?
「星に人が住んでいて、星を行き来できる船があるんですね」
 私の思考はマーガレットさんの質問で遮られた。
「え、あ、はい、そうです。厳密に言うと地球にはワープ航行技術がまだないので他の知的生命体がいるような星まで行けるような宇宙船はまだ作れませんね。アラクニアの宇宙船ならば可能です」
「なるほど。私は造船について詳しくないのでワープというのはよくわからないですが、星によって造船技術にかなりの差ががあるということですね」
 マーガレットさんは確認するように言いつつ、手に持ったノートに何やらせっせと書き込んでいる。
「え、あの…何をされてるんです?」
 私の問いかけにマーガレットさんはノートを走らせる手をパタと止めて、しばしどうしたものかっていう感じの思案顔で、私を見ていたけど、
「そう、ですね。まぁ、これは夢ですし、いいでしょう。自慢するわけではないですけど…実は私はエリザベスというぺンネームで小説も書いておりましてね、公都でもちょっと名を知られておりました。私の執筆しているBL本には熱心なファンがここにもそれなりにおりまして、現在執筆中の薔薇騎士物語はお陰様で好評です。まぁ、それはともかくとして、アヅキさんのお話はとても興味深いものですから、忘れないようにノートに書き留めていたのです」
 今のは自慢以外なにものでもない気が…そっかぁ、マーガレットさん、小説家なんだ。
 つまり今手に持っているのはネタ帳ということですね。
 でも、薔薇騎士物語?
 まぁ、なんとなくタイトルで内容分かるけど…
 BLって言葉はこっちにもあるんだ。その辺は次元を超えた共通認識なのかなぁ…
 いや、私の夢だから私の知識を基にしているだけか。
 でも、なんでBL?私そのジャンルに興味ないんだけど…
「私はノーマルなのがいいなぁ」
「ありますよ」
「はい?」
「ですから、ノーマルな恋愛物も。古王国物語というタイトルで、亡国の姫君とその騎士となる青年の物語です」
 やっば、口に出てた。
 でも、亡国の姫君と騎士のラブストーリーとか超ベタだなぁ。
 日本じゃ亡国の王女と騎士の物語とか古典的すぎて、たぶん売れないよ、マーガレット先生…こっちの世界だと違うのかなぁ。
 まぁ、私はそういうベタなのも嫌いではないですけどね。
「もっとも古王国物語はまだ構想中です。ヒロインの姫君のモデルはサーナ・シフレアンという私の知り合いなので色々と彼女からお話を聞いてる段階です」
「へぇ、そうなんですか。やっぱり小説の登場人物って実在の人をモデルにすることって多い感じなんです?」
 心の声を口に出しちゃってた気恥ずかしさもあって私は、畳みかけるようにマーガレットさんに尋ねてみた。
「そうですね、他の人はわかりませんが、私は主要登場人物は実在する人をモデルにしますね。私は随筆家としても活動してましたし、特にそうなのかもしれません。ちなみにサーナさんは今は水の神殿で神官として結界の維持に尽力されてますが、ウォテュラ王国の王族の末裔です。公にはされていませんけど、大洪水の原因はこのウォテュラ王国の実験が原因で引き起こされました。彼女はそのことに責任を感じて自分たちは生きてはいけないと思っていた時期もあったようです。その為に二年間も牢に繋がれていました。脱獄した後も、王国に虐げられ虐殺された原住民の末裔の女性アーリー・オサードと行動して世界の破滅させようとしたりですね。ですが、最終的には常に彼女の為に盾となって尽くした青年騎士の愛でその考えも変わったようです。私はまぁ、サーナさんの家庭教師みたいなものですかね。そういうわけでサーナさんから聞いた話の中には公にしずらいものも多々ありまして、まだまだ熟考の余地ありという段階です」
 ちょっと待ってください。
 姫様のモデルのサーナさんがガチすぎませんか。と、いうか本物じゃないですかぁ。
「と、ということは、古王国物語の騎士のモデルは、やっぱりサーナさんの恋人の騎士さんなんですよね」
 動揺する私をよそにマーガレットさんは、涼しい表情で頷く。
「まぁ、そうですね」
 真実は小説より奇なりって言うけど、ヤバいですね、ちょっと読みたくなってきましたよ、古王国物語。
「っていうか、そんなこと私に言ってしまって大丈夫なんですか?」
「うん?何がですか?」
「ですから、その…王国の実験が大洪水の原因とか、サーナさんがその王国の王族の末裔とかいう話を」
「いや、大丈夫でしょう。だって、これ夢ですしね」
「それもそうですね」
「あと、つけ足しておくと、サーナさんと行動を共にしていたアーリー・オサードも私の友人のウィリアムが一途に尽くした結果改心して彼と一緒に最初の箱舟に乗りました」
「そうなんですか?なんか凄いですね。やっぱり、そのウィリアムさんも騎士か貴族なんですか?」
「ウィルアムが?まさか、彼は破滅派というアーリー・オサードが組織した犯罪者集団のメンバーですよ。アーリーが投降した後は、特赦が出るまで一緒に投獄されていました」
 御冗談をって言わんばかりに、苦笑しながら手を振ってみせるマーガレットさん。
「ええ…で、でも、そのウィリアムさんはマーガレットさんの友人なんですよね」
 貴族と犯罪組織のメンバーが友達って意味がよくわからない。
「そうですよ。彼は鍋の絆で堅く結ばれた友の一人です」
 マーガレットさんは真剣な表情になって一度こくりと頷いた後、懐かしむような眼差しで虚空に視線を向けるのだけど…
 何ですか、その鍋の絆って…
 男女が同じ鍋をというとなんか親密な関係を連想するけど、友の一人ということは他にもいるんだ、鍋の絆で結ばれた友…もしかしたらカルト的な秘密結社とかそういうものかもしれない。
 鍋の友団とか…これ本当に私の夢なのかな?なんかちょっと自信なくなってきたかも…
「それで、貴女のいた世界にはほかにどんなものがあるの?」
 ネタ帳を手にしたマーガレットさんがその話題はもう終わり、とばかりにさらに別の質問をしてきた。
 どうやらマーガレット先生は、この際私から引き出せるだけネタを引き出すつもりのようです。
 私はちょっと考えてから、マーガレットさんが興味を引きそうな話題は何だろうって考えた。
「そうですねぇ…例えば本あるじゃないですか。地球だと本は印刷して出版されてます。印刷機という機械を使ってですね、本を量産できるんですよ。あと、電子書籍も普及してます、これだと物理的な本もありません」
「インサツキで量産?それは写本しなくもいいということ?私の本はメイドたちが写本しているのだけど、そのインサツキというのがあったら、いらないの?すごく便利そうね。あと、デンシショセキっていうのは、もう少し詳しく」
 予想以上に食いついてきましたね。
「えっとですね、どこから説明したらいいかな…」
 その後もマーガレットさんの質問攻めにあって色んな話しました。
 地球の話だけじゃなくて、私もまだ見たことがないお父さんの故郷アラクニアの話も…
 B級SF映画には反応いまいちでした。うーん、面白いのになぁ。
 一方で、地球で流行っていたライトノベルの話には、食いついてきてたなぁ。
 あとは、日本の幕末という時代に彗星のように現れて消えていった剣豪集団の話には真剣にネタ帳に書き込んでた。
 ごめんね、土方さん。薔薇騎士物語のネタにされたかもしれない。
 でも、これ全部夢なんだよね。
 目の前にいるネタ帳に書き込みながら、ブツブツ言ってるマーガレットさんも、マーガレットさんの知り合いのサーナさんも私が生み出した夢の中の産物にすぎない。
 初めて会ったはずなのに感じるこの親近感というか、昔から知っている人のように感覚も、私の心が生み出したものだからな訳で…そう考えるとちょっと寂しさも感じる。
 目が覚ましてもマーガレットさんのこと覚えているかなぁ。
 忘れてたら嫌だなぁ。
 でも、じょそべぇさんのこともしっかり覚えていたし、きっと大丈夫だよね。

 と、いう夢を見たぜって話なんです。
 それにしてもずいぶんとリアルな夢でした。
 結局明け方近くまで色々話してて、いつの間にかマーガレットさんが机に突っ伏して先に寝落ちしちゃって、仕方ないんで私はマーガレットさんの肩にタオルケットをかけて、私はソファで横に…
 で、目を覚ましたら、居間のソファの上で寝てましたよ。
 ちゃんと寝れてなかったのか、徹夜でもしたみいたいに今まだ眠いです。
 でも、夢だったとしても、マーガレットさんにまた会えるといいなぁって思います。
 話したいことまだ一杯あるし…あと、古王国物語が出来てたら、ぜひ読みたいなぁ。
 それに聞きそびれた鍋の絆の正体も今気になっててですね。
 えっ?
 薔薇騎士物語は…うーん、それは別にいいかなぁ。

 

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 マテオ・テーペも終了したので、マテオのマーガレットから、ロスオルのアヅキにバトンを引き渡す的な感じで仕上げたのですが、直後にマテオの次回作はコンバート出来る的な話が出てきたので、やっば、とかちょっと思った。

 まぁ、マテオに似た世界とかそういうことにしておこう。というか、夢の話だし。