100回記念国展において本県から6人が入賞しました。

国展は、長い歴史を持つ全国規模の公募展であり、そこに秋田県から6人もの作家が入賞されたことは、大変喜ばしく、誇らしいことです。

絵画は、単に「上手に描く」ものではありません。
その人が何を見つめ、何を感じ、何を表現しようとしているのか。
作品には、その作家の生き方や眼差しがにじみ出ます。

今回、受賞された6人の作品には、それぞれに強い個性があり、見る人の心を静かに揺さぶる力がありました。


阿部伸子さん(新人賞・準会員推挙)

阿部伸子さんの作品は、色彩の重なりと線の動きが印象的です。

画面全体に、記憶の断片のようなものが広がり、見る人を作品の奥へと引き込んでいきます。
華やかさの中にも、どこか静かな深みがあり、時間の積み重なりや心の揺らぎを感じさせます。

一見すると抽象的ですが、そこには確かな構成力があります。
色と形が自由に動きながらも、画面全体としてしっかりと成立しているところに、作者の力量を感じます。


小川廣子さん(奨励賞・準会員推挙)

小川廣子さんの「水底」は、深い青がとても美しい作品です。

青の世界の中に、光や泡、流れのようなものが見え、まさに水の底に沈み込んでいくような感覚があります。
静けさの中に、生命の気配がある。
暗さの中に、光がある。

この作品は、派手に語りかけてくる絵ではありません。
しかし、じっと見ていると、心の奥にゆっくりと広がっていく力があります。

青という色の持つ深さ、静けさ、そして神秘性を見事に引き出した作品だと思います。


佐藤久美子さん(会友賞・準会員推挙)

佐藤久美子さんの作品は、タイトルのとおり、大地が持つ豊かさや生命力を感じさせます。

画面には、さまざまな形や色が重なり合い、自然の中で生まれ、育ち、また土に還っていくような循環を思わせます。
黄色や緑、黒や灰色が複雑に響き合い、単なる風景ではない、内面的な大地の表情が描かれています。

自然は美しいだけではありません。
荒々しく、複雑で、時に混沌としています。
その混沌の中から、確かな生命の力を感じさせるところに、この作品の魅力があります。


松田弓舞さん(横手城南高校・OY賞)

松田弓舞さんの作品は、鮮やかな色彩と多様なモチーフが強い印象を残します。

動物、植物、人の姿のようなものが画面の中にあふれ、まるで一つの物語の世界に入り込んだようです。
ピンクを基調とした背景の中に、さまざまな存在が共存しており、不思議さと華やかさが同時に感じられます。

この作品には、若々しい感性と、世界を自由に組み替えていく想像力があります。
見る人によって、感じるものが変わる。
そこが大きな魅力です。

作品の前に立つと、こちらの想像力まで刺激されるような、楽しく力強い作品です。


山田蓮人さん(新人賞・秋田高校)

山田蓮人さんの作品は、日常の一場面を題材にしながら、そこに心の揺れや現代的な感覚を重ねた作品です。

「学校行かなきゃ」というタイトルには、誰もが一度は感じたことのある、少し重たい気持ちが込められているように思います。
画面には、室内のような空間が描かれていますが、そこに走る線や色の動きが、単なる現実の描写を超えた心理的な空間を生み出しています。

行かなければならない。
でも、心はどこか別の場所にある。
そのような現代の若い感性が、静かに、しかし確かに表現されています。

タイトルと画面がよく響き合った、印象深い作品です。


南園泰杜さん(奨励賞・秋田高校)

南園泰杜さんの「僻地」は、非常に密度の高い作品です。

赤や青、茶色などが重なり合い、画面全体に強いエネルギーがあります。
細かな線や形が幾層にも積み重なり、見るたびに違う表情が見えてきます。

「僻地」というタイトルからは、遠く離れた場所、見過ごされがちな場所、あるいは心の奥にある風景のようなものを感じます。
しかし、この作品は決して寂しいだけではありません。
むしろ、そこには強い生命力と、土地に根ざした記憶のようなものが感じられます。

重厚で、力強く、長く見続けたくなる作品です。


今回の6人の作品を見て、改めて感じたのは、秋田の美術には確かな力があるということです。

静かに深める表現。
大胆に広げる表現。
日常から出発する表現。
自然や土地の記憶に向き合う表現。

そのどれもが、作家一人ひとりの積み重ねから生まれたものです。

受賞された皆さまに、心よりお祝い申し上げます。
そして、これからのさらなるご活躍を楽しみにしております。

秋田の美術が、これからも多くの人の心に届いていくことを願っています。

 国画会会友・佐藤久美子氏による初めての個展が、東京・銀座のあかね画廊にて開催されています。

 これまで佐藤氏は、国画会展をはじめとする発表の場で研鑽を重ね、静謐さと内的な強度を併せ持つ独自の抽象表現を深めてきました。

 本展は、その歩みの集大成として、作家自身の現在地を率直に示す展覧会となっています。

 重層的なマチエール、抑制された色彩の中に現れるリズムや痕跡は、感情に訴えるというよりも、観る者に思索の余白を与え、ゆっくりと作品との対話を促します。

 初個展ならではの緊張感と誠実さが、画面の随所に感じられる展示です。

 首都圏での初個展という節目に、ぜひ多くの方にご高覧いただければ幸いです。

佐藤久美子 初個展
会期:2025年12月8日(月)~12月14日(日)
時間:11:00~18:30(最終日16:00まで)
会場:あかね画廊(東京都中央区銀座)

第99回国展出品作《遠心力》(200×200cm)を中心に、佐藤洋子氏の創作活動を俯瞰できる展覧会が開催されています。

会場には、大作2点、小品14点、計16点が並び、画業40年を超える作家の軌跡と深化を一望することができます。

佐藤洋子氏の作品世界は、長年にわたる国展出品の中で培われた「線の哲学」と「意識の構造化」の結晶といえるでしょう。
今回の展覧会では、個の記憶と宇宙的な広がりが一つの空間で響き合い、鑑賞者に「描くとは何か」という根源的な問いを投げかけています。

会期は10月31日まで。
秋の柔らかな光が差し込む市民ギャラリー阿吽で、ぜひ佐藤洋子氏の“心の遠心力”を体感してください。