証明書など性別欄撤廃を 性同一性障害者が全市に陳情

(東京新聞茨城版 2004/05/24)


「どんな人間でも共存できる、そんな社会を望みたいんです」。生まれついた女性としての身体的な性に違和感を持ち、性同一性障害と診断された県央地域に住むAさん(26)。

今月、水戸市を除く県内二十一市などの議会事務局に、自治体が扱う証明書などの性別欄撤廃の陳情書を提出した。 (平木 友見子)



■『理解してもらう第一歩に』  水戸市議会は昨年十二月、Aさんが提出した性別欄撤廃の陳情を「性同一性障害が医学的に認められ、社会的にも認知されつつある以上、人権に配慮すべき」として全会一致で採択した。  


同市は今年四月から、市役所で扱う四百七十の証明書や申請書の約四割にあたる百八十七の書類から、県内で初めて性別欄を撤廃している。


同市総務課によると、印鑑証明書や選挙人名簿など法律などに記載の根拠があるものや、保健、福祉などのサービスを提供する上で性別の把握が必要な書類などを除き、市県民税課税・所得証明書や図書館利用登録申請書などの性別欄はすべて削除した。  



「生まれる場所は選べない。性同一性障害者は本当に少ないが、(性別欄撤廃を求める)活動をすることで、身近な存在だと考えてほしかった」とAさんは話す。


身体的な性に違和感を持つ性同一性障害者は、男性は三万人に一人、女性は十万人に一人の割合で、全国で七千人以上いるといわれる。取り巻く環境は、厳しい。  昨年七月、戸籍の性別変更が特例法で、性適合手術を受けたなどの条件付きで認められるようになった。  


しかし、「本来の性に戻す」手術は、保険が適用されないため三百万-五百万円かかる。専門病院も少ないうえ、定期的に必要なホルモン注射やカウンセリング費用なども保険の適用外だ。  



就職でも、性別欄のある履歴書や戸籍謄本が必要とされるため、なかなか正業に就くことができない。生活保護を受けたり、アルバイトで生活している人も多いという。


パスポートや選挙の投票券に記載された性別と外見の違いから、何度も確認されるなど、理解されにくい障害であるため、精神的に参ってしまう人もいる。


現在、水戸市のほか東京都小金井市や埼玉県新座市など全国の自治体で、公文書から不必要な性別記載をなくす動きが進んでいる。  



Aさんは「自治体への性別欄削除の働きかけは第一歩。身体的な障害がないため、理解してもらうのが難しいが、さまざまな問題を抱えており、社会的な認知が進んでくれれば」と話した。