MISSING PARTS | アドベンチャーゲーム研究処

アドベンチャーゲーム研究処

アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。

【紹介】

 『久遠の絆』『風雨来期』などで知られるFOG制作のコアファンから支持を集めた探偵AVG。初登場となったドリームキャスト版はドリームキャスト生産中止発表後に3部作として発表され、PS2への移植もひっそりと行われるなど、支持の高さと比べて販売数は全くと言って良いほど振るわなかった。その地味な絵柄や堅実なゲーム作りを含めて、最も「FOGらしい」タイトルと言って良いだろう。最近廉価版が販売さえたこともあって市場価格は、一昔前より抑えられており2000~2800円程度で手に入れることが出来る。



【システム】

 選択肢によって話が分岐するオーソドックスなフラグ立て型AVG。ベストエンディングへたどり着くには初見の1周目は殆ど不可能で、話の大筋の流れやキャラクターの行動がある程度予測できる2周目以降が本番というかなり硬派なゲームデザイン。行動回数も制限されているため、推理して行動を決めて行く緊張感は高い。とはいえ、これによって難易度がかなり上がっている。別にベストエンディングまで行かなければならないというわけではないので、一応クリアするだけならば容易だが…。


【ゲームテンポ】

 基本的には選択肢を選ぶのみで、既読スキップも早いのでゲームテンポが良さそうに感じる。


 だが、肝心のテキストが良くも悪くもキャラクター任せにしすぎており、例えば会話における結構な量がかけ合いとなるため、キャラクターへ好感が持てるか否かによって「退屈」とだるく感じるか、「楽しい」と感じるかが明確に二分されてしまうのではないだろうか。演出も拡大縮小を駆使しているが、キャラクター以外に変化が乏しく画面的に少し寂しい。また、たまに入るクリック形式の捜査パートも細かい部分まで見なければならないので面倒に感じるときもあるだろう。


【ストーリー】

 オーソドックスな探偵アドベンチャーということで、主人公を含めて登場キャラクターの設定自体はよくあるもの。はっきりいって話としては1話と2話は絶望的なまでにつまらなく、ゲームとしても変化が乏しい。


 しかし3話以降はシナリオ自体の作り込みが徹底されてきて、かなりの数のサブキャラクターイベントが用意されたり、よくある「~へ来たが、何もなかった」とか、前に聞いたことをリピートすることは殆ど存在せず、ゲームとしてもプレイヤーの捜査進度によってはキャラクターが死んだりするため、周回プレイ前提ながらプレイヤーのやる気も維持される。都合主義が目立つものの、話としての盛り上がりもありそれに伴って難易度も上昇するなどバランス調整もちゃんと取られている。


【ここが○!】

・難易度が高く、噛み応えがある。

・後半から話が面白い。

【ここが×…】

・難易度が高く、一般のプレイヤーはベストエンドへ行くのは難しい。

・序盤がつまらない。


【総括】

1~2話をクリアできるかと、キャラクターとフィーリングが合うか否かによって評価が変わるのではないだろうか。最近のぬる目なのに飽きて、厳しめなAVGを求めていているならお薦めだけど、見えない欠点も多いので注意が必要だろう。DC末期という、AVG展開がかなり難しくなっていた時期にこのレベルの作品が出ていたこと自体には個人的に感動。



【得点】

7/10