私は力を付けなければならない。清華に対抗出来るレベルまで。


あの時、
清華はまるで本気じゃなかった。清華にとっては虫ケラを指で弾いたくらいのものだったに違いない。おそらく三人分の心圧を取り込んだ今の私でも、清華からしてみれば大差ない些末な変化なのだろう。





もし、このままのやり方で清華に追い付こうと思ったら、





一体何人分の心圧を抜き取らなければならないのか…
恐らく100人分以上の心圧は最低でも必要だろう。



私の心圧がパワーアップしたことに少し浮かれていたが、こうやって何人も心圧を抜き取っていけば、清華にバレてしまうだろう。


私はそれがあったからおそらく転送者の巣窟になっているであろうエステニア製薬の女の子には直接近づいてなかったのだ。


しかし、亜希子に頼んだ一件がある。
バレるのは時間の問題だ。もしかしたら明日にもバレてしまうかもしれない。






ところで私は三人分の転送者の心圧を取り込んだことにより、清華にはかなわないにしろレスポンスが大幅にパワーアップしている。


まず、レスポンスの射程距離。今までは10数メートルだったが、今では50メートルはいける。



伸ばせる触角の距離。

今までは、ほぼ相手と密着するくらいの距離、手の届く範囲くらいまでしか伸ばせなかったが、今では軽く3メートルはいける。



そしてもちろん、気力の充実により、身体能力も向上している。

ただ、この取り込んだ心圧、何かしっくり来ないというか、

得たものがあった反面、何かを失ってしまっている。



その失ったものを再び手に入れれば、私は飛躍的に強くなれる予感がするのだが…


以前の私にあって、今は欠如しているもの…




清華への憎しみ




だと思う。


今の充実した心圧を怒りで爆発させれば、
とてつもない力が生まれそうなのだが。



私は今正直、清華に憎しみの感情は抱いてない。


大切な存在を何人も殺されたにも関わらず。

そう、何人も殺された…

思い出すだけで悲しさと悔しさで心が苦しくなる。私にこんな思いをさせているのは間違いなく清華だ。


でも


…清華と対峙した時にわかってしまったんだ。


敵とか味方とかじゃない。友達でもない。


清華と私の関係性は、

陰と陽。


氷の太陽と、激情の月




多分、私は清華を必要としているし、清華も私を必要としている。はず。

ただ、私はこの取り込んだ心圧の影響もあるのかもしれないが、清華に感化されてしまって激情が薄れてしまっている。







美音ちゃん…


私が美音ちゃんに感じたものと清華に感じるものは同じ感覚。



もしかしたら清華も…美音ちゃんに何か同じものを感じとっていたのかも知れない。





清華と美音ちゃんは、どうやって知り合い、どんな関係だったのだろう。


でもどんなに同情しても何をしても清華をこのままにしておくわけには…


いかない。










その頃

亜希子とエステニア製薬に勤めている女が電話で会話していた。


ほんとだってば!マジ気持ちいいんだから!有加も絶対虜になるよ!あいつが言うには、エステニア製薬の女をたくさん呼んで欲しいらしいよ。有加の他にも三人声かけたよ。みんな行くって!

もしもし?聞いてる?


その話、詳しく聞かせろ


は?あんた誰?有加は?



続く。