論文体(「である」体)を使い慣れた学術・技術系の人は、
受動態表現に慣れていて、それが欧文的な日本語表現だと
は考えていません。一方、日本語的な受動態表現は「雨に
降られた」のような被害の受け身であることが多いため、
「机が置かれている」と書くと、そこに置かれた机が困っ
ていると感じる人も少なくないといいます。
受動態表現は、翻訳では明快な印象を損なうので避けるべ
きだとされ、それが金科玉条の一つになっています。これ
も、被害の受身と関係があるようですが、かく言う私は、
机が困っているとは一向に感じません。多分それは、古典
的な技術教育の毒が、本人が教室で居眠りをしている間に
総身に回ってしまったせいです。

自分が書いた文章が理屈っぽく見えることに気付いたのは、
技術的な内容の文書を「です、ます」体に翻訳するという、
矛盾含みの仕事をするようになってからです。技術者と普通
人の感覚の違いに気付き、「である」体と「です、ます」体
の世界を同時に視野に入れてしまうと、受動態表現の使用の
是非の判断が揺れ動いて困ります。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
翻訳力診断はこちら http://www.babel.co.jp/shindan/03.html
添削しますよ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━