BABEL UNIVERSITY東京キャンパスでは、『TRADOS速習コース』を5月に開講し
ます。
TRADOS(トラドス)とは、原文と翻訳文を一対としてデータベース化する翻訳
メモリで、一度訳出した文章を保存し、以降類似したセンテンスが見つかれば
過去の訳文を表示します。
実務では必要不可欠なツールですので、この機会にぜひ使い方を覚えてみてく
ださい。
■コースの詳細はこちら
http://www.babel.co.jp/tech/guide03.html
では、今週のレッスンです。
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CONTENTS
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【1】翻訳ワンポイントレッスン ~「特殊な用語 ― ジャーゴンのルーツ」
【2】今週のコラム ~ 「ハッカーの辞書」
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【1】 翻訳ワンポイントレッスン
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★特殊な用語 ― ジャーゴンのルーツ
ジャーゴン(jargon = ちんぷんかん言葉)の筆頭は、boot strap (ブート・
ストラップ)です。これは、ブーツを履くときにかかとの側を引っ張るための
つまみ皮のことですが、この世界では、O/S をマシンの主記憶に引っ張り込む
ための小プログラムのことを指します。これは、pull oneself up by one's
own boot straps(独力でやり遂げる)という英語の成句に由来し、ブーツを
無理やり履くときには自分で自分自身を引っ張り上げる恰好になる、つまり、
コンピューターを「自己起動させる」プログラムです。
1945年の9月、アメリカ海軍が使っていたコンピューターのプログラマーだっ
た海軍予備役大尉グレース・ホッパーが、First actual case of bug being
found. と日誌に書いたのが bug(虫)という用語の始まりだといわれています。
つまり、当時のリレー式コンピューターのリレーの接点に、マシンから出る暖
気に惹かれて飛来した蛾が挟まって故障したというわけです。以後、debug(
虫取り)が、エラー修正という意味で使われるようになりました。
[例文]翻訳してみよう
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A boot strap is a paradoxical means of getting started on something
where you need some of that something in order to get started.
<ヒント>
自己起動の意味の boot(ブートする)は、『ほらふき男爵の冒険』の主人公
が騎馬で濠を跳び越えようとして水に落ちそうになったとき、自分の辮髪を自
分で上に引っぱったら跳べたというドイツ生まれのほら話に由来します。
<直訳例>
1つのブート・ストラップは、何かに対して始めさせることについての1つの矛
盾しているようで実は正当な手段であり、そこでは、始めさせるために、あな
たはその何かの一部を必要とします。
<翻訳例>
ブート・ストラップは、何かを始めるためにはその何かの一部をあらかじめ必
要とするという意味で、逆説的な手段だということができます。
[今週の課題文]
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以下の文章を翻訳してみましょう。
After you fixed the bug, you need to verify the fix.
<ヒント>
もちろん、昆虫を標本箱に虫ピンで止める話ではありません。verify は、検
査して確認するという意味で使われます。専門的文脈では、「検証する」、
「検査する」などに訳します。
★★★講師の模範訳例はこちら★★★
http://www.babel.co.jp/magmag/08.html
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【2】 今週のコラム Get IT! Got IT? アイティなっとく
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「ハッカーの辞書」
その昔、「余の辞書には"不可能"という言葉はない」と言い切った英雄がい
ましたが、ハッカーの辞書"The New Hacker's Dictionary"(MIT Press)には、
ハッカーは主にプログラミングが好きで上手な人、建設的な知的挑戦を楽しむ
人であると好意的に定義されていて、覗きまわって機密情報にちょっかいを出
す悪い奴という定義には賛成しないと書かれています。
製品にセキュリティー・ホールを抱える企業が使う「脅威(threat)」とい
う言葉が、ハッカーは悪い奴という観念を定着させてしまいました。しかし、
元はといえば、前記の「善いハッカー」たち―AT&T社のベル研究所の天才プロ
グラマーたち―が悪いという人もいます。多重処理システムの元祖、MITの
MULTICSのセキュリティー機能を外して小回りの利くUNIXを作った彼らの功績は、
「悪いハッカー」の跳梁跋扈を許す無防備さのゆえに帳消しになりかねません。
「浜の真砂」は何とやら…。皆さん、Web でサーフィンするときも、「悪い
ハッカー」にはくれぐれもご用心。