Microsoftの違法コピー対策プログラムWGA強化版が公開されました。
全世界のソフトの3分の1は違法コピーとも言われていますので、違法コピー撲
滅が起業存続のキーということでしょうか。
今回は、Windows Updateの自動更新を通じてインストールされるもので、WGAに
よる警告通知はかなりの数に及んでいるようで、違法コピー撲滅へ...
と思いきや公開から数日後にはハッカーによる回避策が見つかるという、いつ
ものイタチごっこに突入しました。
最終的には個々人の意識を変える以外に方法はないのか...
Windows Updateでモラル向上の啓蒙書を配布し続けるというのはどうでしょうか。

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CONTENTS
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【1】翻訳ワンポイントレッスン ~「to不定詞構文―物理は頭から、論理は後ろから」
【2】今週のコラム ~ 「物理と論理」

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【1】 翻訳ワンポイントレッスン
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★to不定詞構文―物理は頭から、論理は後ろから

 学校では、to 不定詞句の副詞的用法の「後ろまくり訳」しか教えませんが、
マニュアルや技術文書の翻訳では、Do ×× to do …. の構文を、「…するた
めに××する。」と目的を直接表すように訳せばよい場合だけでなく、同じ目
的を「…して××する。」のように、結果として表現するのがよい場合もあり
ます。

 副詞的用法のto 不定詞構文は、このような「目的訳」と「結果訳」の 2 通
りのパターン訳で能率よく処理できます。原文の意図がどちらにあるかの判断
基準は、to 句の目的意識の強さです。目的を中心に記述するのなら、「…する
ために××する。」という「目的訳」にします。そのような論理的記述ではな
く、物理的事象の時間の流れに沿って、目的とする最終結果を示したいのなら、
「…して(その結果)××する。」という「結果訳」にします。文頭にある To
は、目的志向の強い表現ですが、専門家は「…するためには、」という表現を
好み、一般人は直訳を避けた「…するには、」という表現を好む傾向がありま
す。

[例文]翻訳してみよう
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A Zip drive is a disk drive developed by Iomega that uses removable
disks (Zip disks) to store hundreds of megabytes of data.

<ヒント>
関係代名詞説を直前の Iomega だけにかけてしまうと、誤訳になります。この
場合の to store は、論理的な目的を表しています。removable disk は、カ
タカナ訳にする企業もあります。

<直訳例>
Zip ドライブは、数百メガバイトのデータを格納するために取り外し可能ディ
スク(Zip ディスク)を使う、アイオメガ社によって開発された1つのディスク
・ドライブです。

<翻訳例>
Zip ドライブは、アイオメガ社が開発したディスク・ドライブです。この装置
には、数百メガバイトのデータを格納するために、取り外し可能ディスク(Zip
ディスク)が使われています。


[今週の課題文]
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以下の文章を翻訳してみましょう。

To change the size of any object, first select it, then drag one of the
black handles that appear on its frame.

<ヒント>
文頭にある To 句は、目的志向です。この文は、手順を述べた説明文の一部です。size、object、handle、frame は、この場合、カタカナ用語に訳すと専門用語に
なり、意味が明確になります。


★★★講師の模範訳例はこちら★★★
http://www.babel.co.jp/magmag/07.html


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【2】 今週のコラム Get IT! Got IT? アイティなっとく
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「物理と論理」

一般に、原文の発語順に基づいて「頭から訳」をするのがよいとされています
が、これは、日本語でも英文の論理と表現構造を踏襲するのがよいという、い
ささか単純すぎる考えから生まれた技法で、当然、英日の言語構造の違いを乗
り越えるための工夫を必要とします。また、筆者側の英語での発想を重視する
だけでは片手落ちで、読者である日本人の受け取り方についても考える必要が
あります。

to 不定詞構文の場合、文頭にあるTo不定詞節は、そのまま「ために」という
日本語表現で模擬できますが、問題なのは、文末寄りにある to 不定詞節を「
頭から訳」するか「後ろまくり訳」するかの判断です。この判断に役立つのが、
「物理と論理」という視点です。つまり、「…して」と訳すのは、主に操作手
順などの因果を文頭から時系列的に示すための物理的記述法で、「…するため
に」と訳すのは、目的を述べるための論理的記述法です。「ために」は、日本
語の論理では目的の行為の前に書くのが普通ですから、「後ろまくり訳」をす
れば自然な表現になります。