教師になってからずっと紙芝居をしてきた。
紙芝居を始めたきっかけは長野県の教育センターの研修会で右手(うて)和子先生の紙芝居実演を見てからである。「ごきげんななめのコックさん」などのいくつかの定番の作品を演じながら、演者の心得を細かに話して下さった。たたき上げた本物の言葉には迫力があった。
早速右手先生の本を買って来て、何度も読み込んだのがそもそもの始まりだ。
教師になりたての頃は、紙芝居は「読む」と思っていた。
裏に書いてある文を大きな声で読めばそこそこ上手に子どもたちに聞かせられると勘違いしていたのだ。とんでもない。そんなの紙芝居じゃありません。テレビの方がおもしろい。
どシロウトの私には紙芝居を「演ずる」たくさんのポイントが一つも見えていなかったのである。
初めて出会った子どもたちと60秒で友だちになり、細かな技を畳みかけるように駆使していつの間にか紙芝居の場に引き込むことがスタート時点の押さえどころである。
意図された細かな伏線や集中を誘うテクニック、身のこなし、視線の振り方、声色、間など驚くほど綿密に組織され、かつ聞き手の反応に合わせて柔軟に場の流れを作っていくこと。
「これはすごい。」と感激してから、のめり込んだ。
素晴らしき紙芝居屋に憧れ、密かに修行。
場所は教員住宅。
立会人はこのころで部屋の中で飼っていた犬。
まずは技術とそれを使う意図をノートに書きうつすこと。
犬相手に手遊びや指遊びの反復練習。
紙芝居の絵だけを見てアドリブで話をする練習。
身振りだけで話を伝える練習。
観客の中に割り入って突っ込み、話す練習。
下読みを10回して、絵だけで演ずる練習。
20数種類の声色を出す練習。
(おじいさん、おばあさん、鬼、こびと、熊、象、蟻、狐、狸、犬、猫、お姫様、お后様、王子様、王様、大臣、幽霊、化け物、殿様、家来、侍、坊様、小僧、子ども・・・・)
こんなことをしていたおかげで私は変てこな教師になってしまった。
私の引き出しにはへんながらくたがいっぱいあります。