(4)思考力部会の柱と本時のかかわり
Ⅰ思考力部会では、本校の研究テーマ「大切にし合える仲間 活力ある児童を目指して」を踏まえて、あたたかな学習集団作りの視点を基盤としながら、ひとり一人の子どもたちの豊かな思考力の育成を目指している。
本部会は4月に新設された部会のため、まずは様々な学力調査の結果や最近の東明小の子どもたちの学習の姿から現状を分析して、学習指導方法上の問題点を焦点化するところからスタートした。
(1)活動が思考につながらない点(活動あれども思考なし)
・算数的な活動の工夫はされているが、それが思考の活性化に充分につながらない点。
(2)全員の思考が保障されていない点(学習集団の二極化)
・筋道を立てて考えることが苦手な子どもたちにまで「自分で考えなさい」という対応をして、結局有効な思考活動がないまま時間が終わってしまうという点。
(3)思考の共有化を目指した指導スタイルの欠如(個人思考偏重主義)
・思考過程で友だちと考えを練り上げたり、教師に相談や助言を受けたりする場の設定が不充 分なため、共感的な学び合いや友だちとの思考のずれを摺り合わせて、思考したことを共有化していく重要性に気がつかせる場が少ない点。やがて、自分の考え方だけに固執して、異質なものを受け入れる柔軟性に欠ける傾向を示す。
以上の問題点に切り込むためにⅠ部会では3つの研究の柱を設定した。
A 問題把握力を育てる
・問題作りを通して、全体イメージを把握させる
・問題を分析させることを通して、データの取り出しと解釈力を育てる
B 問題解決力を育てる(本時)
・すべての子に説明する場を設定することを通して、能動的に問題解決させる。
・初期には論理的思考モデルを示して、意欲と見通しを持たせる。
・問題の解き合いや説明交流を通して、思考を練り上げる場を設定する。
C リアルタイム評価
・授業時間内の積極的な適時評価活動を行う
本単元では 上記の中から特に「B 問題解決力を育てる」に焦点を当てて授業を構成した。雑然としたデータを抜けや重なりがないように整理するだけではなく、目的意識を持って能動的に結果を読み取って解釈していく思考力(読解力)を育てる一つのステップにしたい。
単元構成は教科書に沿った一般的なものであるが、グラフの書き方や横棒グラフを扱う場面では大きくて、動きのあるデジタルコンテンツを使用したわかりやすい授業をねらっている。グラフ化する過程を動的に細分化して理解することによって意欲と見通しを持たせることにつながると考えている。
本時は10月20日のテレビ電話から始めた総合的な学習「美川小とのネイチャー交流活動」とクロスする設定とした。11月下旬には美川小を本校に招き交流を深める予定である。このような流れの中で、総合的な学習の時間で調べるテーマの設定・データの収集活動・表作りと段階的に準備を進めてきた。本時はそれぞれが自分で集めたデータを表の形にまとめた所から始める予定である。子どもたちの意識には「グラフ新聞を作って美川小の友だちに東明小のことを伝えよう」という流れがある。したがって本時に作るグラフは淡泊な教科書の練習問題ではなく、見せる相手が明確なので子どもたちの目的意識や期待感も高くなってきている。この場面設定により能動的に課題を解決していく姿を願っている。
本時の主な思考場面は3つある。
1つ目は教師が提示するサンプルグラフを比較していく中で「見やすさ」といくつかの「要素」との関連性について考える場面である。子どもたちの現在の発達段階ではほとんどの子が「見やすさ」を感覚的に捉えている。これはこれで大切なセンスではあるが、3年生ではもう一歩踏み込んで目盛りの取り方と見やすさの関連性や「その他」という項目を作って項目数を精選することで資料の明快性を高めることができるということに気づかせていくことが大切だと考えている。そこで本時ではグラフを書く直前に、4枚のグラフを提示してゆさぶりをかけていく。比較させることにより見やすさを判断させ、何が違うのかを明確に切り分けて3つのポイントを子どもたちが意識できるように働きかけたい。
2つ目はグラフ化する時の思考場面である。ここでは「目盛りをこうするとできあがりはこうなる」「目盛りをどう取れば見やすいか」「表題はどうすればわかりやすいか」「何をその他にすると見やすいか」などを既習を思い出して自分の場合どうするかということを判断して、グラフを書いていく姿を期待している。本時ではグラフシートを選ぶ場面で思考が活性化されるであろう。また教師側としてはどの子がどのグラフシートを選んだかによって、その後の助言や評価の観点が明確になるというメリットもある。
現在の教科書は子どもたちの思考の混乱や停滞が生じないように配慮されたわかりやすい穴埋め式となっている。目盛り取りについて一から考える必要はない。このような学習だけで終わった場合、将来何も書いていない方眼紙を与えられた時、おそらく半数の子は何から手をつけていいか戸惑ってしまうに違いない。基本的な書き方を覚えた後には発展的な場面を設定し、既習の学習内容を生かす場を設定してこそ筋道立てて考える力を育てることができると考えている。教科書もこの点を踏まえ発展的な問題を取り入れてきているが1~2時間扱いとなっているのは残念である。外的な算数的な活動を行って子どもたち自身に調べさせて課題解決をさせるとなると配当時間の2倍から3倍の時間を保障しなければならない。本時はこの点を総合とのクロスという方法で解決しているが、これは原則として算数科の時間で実施できるカリキュラムを作成する方向で解決していくべき問題だと考えている。
3つ目は自分の作ったグラフから何がわかるか考える場面である。
表では見えなかったことが、グラフ化して図形資料とすることによって特徴がハッキリと浮き彫りになることがよくある。自分の作ったグラフの特徴的な点をピックアップして読み取ったり全体的に見てみたりすることによって3年生なりに「ここから何がわかるか」「ここからどうなると予測できるか」という読み解くレベルまで資料に踏み込んでいくことを教えたい。そのような解釈こそが人に伝えるべき大切なことであり、筋道立った思考力の素地となると考えている。
本時の手だては自分のグラフ化や読みがどうであったかを1対1交流で相互評価する場面を設定している。自分なりに考えたことで終わらせてしまうのではなく、それを人に話したり、人からコメントをもらうことは重要である。1対1の形式を取ることによってかかわりは油断できないものになり、相互評価にメリハリを与え本時の活動の手応えを感じてほしい。本時の手応えや不足感が次時の吹き出し作りの意欲につながることを期待している。