俺はMacの充電を気にしながら、駅前の珈琲屋へ向かった。
数日、日本を離れてただけなのに、この寒さはなんだ。
そんなことに敏感になるなんて、俺もいい歳になったのか。
カーディガンを羽織り、足元は白いラバー素材のハイビスカスのモチーフがついたビーサンで銀座を足早に動く。
5日前にハワイで6ドルだして買ったものだ。
たまに二度見されるが、東京においては関わらないことが絶対な風潮のおかげで助かっているのかもしれない。
少し重たい取っ手を引き、目の前の長いサロンを巻いた店員に天を指すジェスチャーをだした。
右手には幅の狭いチープな階段があり、
上階の店内はテーブルが広く、いつもの窓際の右端の丸テーブルは空いていた。
先客はもれなく、階段寄りの、黒い皮張りソファーをアピールしている四角いボックス席に群れている。
この珈琲屋はスーツ姿の人間と細いタイをつけた店員以外見たことがない。
パンパンに膨らんだデザイントートは貰い物だ。
この紺地に三本不規則に並ぶボーダーがお洒落な女子社員のセンスだそうだ。
中から無愛想がクールなMacをとりだし、窓に背を向け、座り心地の悪い椅子に腰かけた。
この店に通う唯一の理由であるコンセントからのびた線は、林檎を白く光らせた。