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atamanonaka

頭の中

本当はいますぐあの場に戻って否定の言葉を聞きたかった。
でも、私達のこれからに希望がないことをしっていた。



毎度別れ話をするような馬鹿な女じゃないと、自負している。
ただ愛の確認は必要不可欠なものだ。

今回のそれも、愛の過信を試す試さないの話に聞こえたのかもしれない。
私には尋問する理由があった。

ー私をなんだと思ってるの?
ホテルで待ち合わせなんて嫌だよ、
あなたのセックスパートナーじゃない。

ーそんな風に思ってないよ。
忙しくて時間がとれないから、
 ゆっくり話せる場所がほしかったんだ。

何度かこんな会話がループしていくうちに、悲しそうな顔をしたあの人はもう私のための言葉を探してくれなくなった。

ー帰ります。

怒りに任せて吐いた台詞に、自己陶酔した。
自分は強いんだと。
男なんてどうせ下半身をゴール地点に設定しているような下等生物!

雨の中、家路につく足取りはおもい。
ー天気のせいだ。
声に出して自分に言い聞かす。
赤いさび止めの塗装が剥がれかかったアパートまで数十メートル、片手には携帯電話を握りしめマナーモードは解除している。
待ち人からの連絡は永遠にないのに。

負け犬根性が染み付いていた。
いままで恋人に大事にされたことなんてなかった。
そもそもあの人にとって私と付き合うメリットなんてなかったんだ。
体の関係はもうずいぶん拒否していたし、
見ての通りの貧乏暮らし。
お金は全部あのひとがもってくれていた。
お話も楽しくて外見もかっこよくて仕事も頑張ってる。
なにも私じゃなくてよかったんだ。
しがみついてたのは私だった。
あと何回、愛してるを言えばよかったの。
あの日の私は百回でも納得できなかっただろう。

全部終わったと理解した私は、
田舎から送られてきた箱にもたれて
帰ろうと思った。
交わりつつあった線を
簡単に疑って簡単に突き放して
対角上に吹き飛ばして
もう重なることもないところで昔を思い出してる。

あのとき肯定するしかなかったことも
あのとき否定するしかなかったことも
互いに歩み寄ればわかっただろうけど
きっと新しい毎日に追い付かなくて
必死に追い付こうとしていて
そんなあなたのことが目に浮かぶので
私からはなにも言えるわけがないよね

流れのなかに小さな渦ができて
まるでなにもかも飲み込んでいくようにみえるけど
飲み込んだものは全部自分のものになって
目に見えるものすべてが
自分のためにあるジオラマだと思えばいい。
1分半をくれてありがとう。
30分×2回をくれてありがとう。
愛情もって接してくれてありがとう。
あったかい目で見てくれたのが、たとえ異性間の気持ちでなくとも、
その柔らかい声がずっと聞きたかった気がします。

あるインディーアーティストのアルバムを再生した。
ネット上で無料配布しているものだが、完成度は高い。
奥田民生や忌野清志郎のような。
ギター一本と声しか入ってないのに、本人の想像している絵が見えてくる気がする。
今日は自分のために泣きたい日だから、インストのバンドにしようかと思ったけど、まずはあの曲を聴いてから他に移ろう。
少し酒やけのような声が甘美だ、きっと女性ホルモンをくすぐっている。
歌詞に希望だの、愛だの、そんな台詞がないだけで、一層いいと思えてしまう。
シロップ16gのような鬱ソングに近い感じもするな、詞に関して言えば。
一曲のつもりが、丸々一枚のアルバムを聞いてしまう。
その間消費した煙草は6本、フィルターの茶色いのがおしゃれに見えて吸い始めたマルボロ。
かれこれ、10年来の相棒といってもいいのかもしれない。
禁煙ブームなんてきたことない、私には。
途中二回カフェオレをつくりにレンジを使った。
基本的には鍋で湯を沸かすなんてしない、食事もレンジでチンできるもので済ます、興味がないのだ。
茶渋ならぬ、カフェオレ痕を残した白いマグにはやたらとテカテカになるリップクリームのあとが残っている。
私のマグにでいいから、口づけしてほしい、誰でもいいから、愛してほしい。
すべてのアルバムから慎重にBGMをさがしてみたが、目に入ったtoeをクリックした。
インストバンドという括りでいいのか悪いのか。
グッドバイという曲をボリューム30パーセント前後にして流す。
そういえば、この曲のいいカバーがあったならと、さらにクロームのタブを増やしてyoutubeにアクセスする。
私のお気に入り動画、後で見る、という項目に入れておいたはずだ。
見つからない。見つからない。下唇のガサガサを噛む。
やっぱり見つからない。