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すべては「死のまち」と表現したことからはじまった。「ゴーストタウン」と言っておけば、記者たちは記事にしなかっただろう。

9日午前の閣議後会見。鉢呂前経産相の発言はこうだったという。
福島第一原発周辺について。「市街地は人っ子一人いない、まさに『死のまち』という形だった」(朝日新聞より)

これを「市街地は人っ子一人いない。まさにゴーストタウンだった」とすれば何の問題もなかった。

鉢呂氏にすれば同じ意味のことを言っているのだが、すぐに適切な言葉が浮かばなかったのだろう。

ついこの間まで生き生きとした人々の暮らしがあった場所の、むなしい現実を目の当たりにし、そのときに感じた思いを記者たちに伝えたかったに違いない。

ところが、鉢呂氏は記者の性分に精通していないのか、言葉づかいに無防備すぎたようだ。つい「死」という、衝撃度の強い日本語が出てしまった。

「死のまち」とはなにごとかと、全体の文脈とは離れた単眼思考が記者たちに広がりはじめる。やむなく故郷を離れざるをえなかった人々の、望郷の思いを断ち切るような冷酷な言い方であり、大臣の資質に欠けるのではないか。「死のまち」という言葉だけを切り取れば、たしかにそうだ。

誰かがそれを問題にして書きそうな気配を見せると、特オチを恐れて記者クラブの全員が一斉に走り出す。それを受けて本社デスクはさっそく福島の住民や町長らの声を取材するように指示する。

話の全体を知らないで「死のまち、と言ったそうですがどう思いますか」と記者に問われれば、誰だって誘導のまま「それはひどい」と言うだろう。

マスコミって怖いですね。ほんとによってたかってハイエナみたいですね。