ミーンミーンミンミンミンミーー
蝉が夏だ!俺たちの時代だとばかりに激しく羽を揺らす。俺はいつものカウンター前の椅子に座っていた。
「いつもの、、ゆめ?」
夢なのか考え事なのかわからないが、妙に懐かしさを感じるあの景色。デジャブのようにまるで現実世界でいつの日か実際に自分が経験したことあるような、、、、
「また、ボーッとしちゃってたな、いかんいかん」
俺はいつものように、作業場に入り何の魅力も何の愛着もない商品に餌を与える。餌を与え終わり、また物思いにふけながら店内、そして店の外をいつものように眺めるのである。
はて、今日も客は来ないのだろうか。と思いながら、気づくと時計はお昼を回っていた。
目の前に広がるものに新しい事は何もない。向かい側の店、道路、ビル影のおばちゃん達、どれもこれもなにもかも。こんな人生を夢見てた訳ではないのに。と、店の前にもの影を感じ、瞳が満月から三日月へと変化する。青年が店の前を横切っていく。やっぱり当たり前の、、。
「ん?おかしい。このにいちゃんさっきも店の前を通った。」
枯れかけた大地で、目の前にオアシスが現れたような希望の光。俺は、急いでメモをした。
12時45分 青いシャツ.白の短パン. 黒髪の青年.
こんなワクワク感に満ち溢れた瞬間は、生まれて初めての経験に感じた。青年が30分後にまた通るのを確認するまでの時間は、少年の時のような冒険心で溢れかえっていた。
「こい。こい。はやくこい。」
時計の針は、12時59分を指していた。