(1)ASD特性と人の気持ちを考えて行動すること

 

 ASDのお子さんは人の気持ちをあまり考えない行動を取ってしまいます。それが特性なので、仕方がないのですが、定型発達が多数を占める現状では、このような行動を取り続けていると、行きづらくなってしまいます。それでは、彼らが生きていくうえで不利益を被ってしまうので、人の気持ちを考えて行動できるようにならなければなりません。

 

(2)空気を読むことが苦手なら、知識として知る、状況に応じて考える

 

 ASD特性があると、人の気持ちや状況を読むのが苦手です。

「どうですか?」

「私学に進学させようと思っているのですが、この子の兄に『大人になったら厳しい環境になるのだから、甘やかす環境にしても効果はないのでは』と言われました」

 

このお子さんのお兄さんもASD/ADHDの特性がありました。中学校時代はいろいろと問題行動がありましたが、何とか公立高校に進学できて、今は中学校の頃が嘘のように真面目にやっています。私は以下のように話しました。

 

「確かにお兄さんの立場からはそう思うのかもしれませんね。診断名で言えばこの子もお兄さんもASD/ADHDで同じになります。しかし、お兄さんよりもこの子の方が特性が強いと思います。また、お兄さんはサッカーをやっていたせいか、人間関係が結構うまくいっていたように思います。しかし、この子はASDの特性が強く、人間関係に非常に不安があります。また、お兄さんは結果的に今は状態が安定していますが、一歩間違えば非常によくない状態になってしまった可能性もあります。そして、お兄さんも私立中学校に入学していたら、今よりも学力レベルは高くなっていた可能性が高いと思います。こんなことはお兄さんにはとても言うことはできませんが」

 

「結局はいろいろな人の中で生活していかなければならないのだから、公立中学校に行くべきだ、という意見は根強いことは私も感じています。しかし、植物を例に私立の環境と公立の環境を考えて欲しいのです。子供達は植物のようなものだと思います。小学校、中学校、高校と成長するに従って茎が太くなり折れにくくなります。小学校の穏やかな環境に比べ、公立中学校の環境はシビアです。嵐の中で生活するようなものだと思います。それに比べ私立中学校の環境は温室の中のようなものなのかもしれません。社会に出たら公立中学校出身も私立中学校出身も同じ厳しい環境で暮らさなければなりません。しかし、折れやすい時期に折れてしまうと回復しきれないこともあると思います。折れやすい時期を温室で過ごして厳しい環境をやり過ごします。茎が太くなったら厳しい環境でも耐えられるようになるのでは、と思うのです。発達に特性のあるお子さんは更に茎の細い折れやすい植物のようなものだと思います。だから、よりよい私立の環境で育てた方がよいと思うのです」

 

同じ診断でも、特性に濃淡があることがあります。兄がうまくいったからといって、弟が同じようにうまくいくとは限らないのだと思います。折れやすい植物は折れやすい時期には大事に育ててあげた方がいいと思うのです。

 

「どうですか?」

「学校に行けません。朝が全くだめです」

 

母に詳しく状態を聞くと、毎日学校を休んでいるわけではなく、

「朝が起きられない」

「朝頭痛や腹痛を訴えている」

「遅刻が多いが、送っていくと何とか登校できる」

「先週と今週に1日ずつ学校を休んだ」

というような状態のようです。

 

「土曜日や日曜日にも症状がありますか?」

「土日は特に症状がありません。ただし、部活の行事があるようなときには朝なかなか起きません」

 

「平日の学校から帰ってきてからはどうでしょうか?」

「家に帰ってきてからは表情的には暗いですが、症状の訴えはありません」

 

学校への行き渋りや不登校の初期には、頭痛、腹痛、嘔気、めまいなどの身体症状を訴えることがあります。感染症などの身体の病気でもこれらの症状が出現することはありますが、何か学校で嫌なことがある場合に、身体症状を訴えて学校を休み始めることが多いのです。

 

以下の様な特徴がある場合には学校に何らかのストレスがある場合が多いように思います。

・曜日によって症状の出現頻度が異なる場合。月曜日に多く、土日は少ないような場合には要注意だと思います。

・1日の中で変動がある場合、朝は頭痛や腹痛を訴えているのですが、学校を休むことが決まると症状の訴えがなくなることが多い場合などは要注意だと思います。

・感染が原因の症状は1週間前後で症状は良くなっていきます。症状が長引く場合は要注意だと思います。

 

このお子さんの場合は、土日や帰宅後には症状の訴えがないために、学校に何らかのストレスがあることが考えられました。

「何か学校生活において、ストレスになるようなことはありますか?」

「副学級委員になりました。それがストレスになっている可能性があります」

「他には何かありませんか?」

「昨日面談があり、宿題がたまっていることが判明しました。それがストレスの原因になっているのでしょうか?」

「その可能性はあると思います。担任の先生と相談し、宿題の締め切りを夏休み明けまで延ばしてもらえないか交渉してみたらどうでしょうか?副学級委員に関しては担任の先生に相談してみて、その仕事で負担を感じているようなことがないかを見ていてもらうように頼んだらどうでしょうか?」

「宿題の締め切りを延ばしてもらうなんて甘やかすことになってしまわないでしょうか?」

「宿題をためてしまうと先生に結構きびしく、あるいはしつこく注意されることがあります。中学校の宿題は少し頑張ればできそうな内容ですから、先生からは『宿題はやって当然』というようなプレッシャーを与えられることが多いのです。しかし、発達に特性のある子は他の子が楽々こなせる宿題をやるのが大変なことも多いのです。宿題を負担に感じて不登校になってしまう子が一定数います。今はいつ連続的に学校を休むようになってもおかしくない状態だと思いますから、不登校に陥らないようにすることを最優先に対処したらどうでしょうか」

 

 いったん学校を休むことが常態化してしまうと、それから再登校に向けようとしても非常に困難だと思います。休みがちになった時に、原因を究明し、早期の対処を心がけるべきだと思います。もしくは休む前に頭痛や腹痛などの身体症状を訴えることがあります。この段階でストレスの存在に気がつくと更にいいと思います。

 

 学校を休みがちになった時に、叱っても効果はないと思います。お子さんの態度に腹が立つこともあるかと思います。しかし、本人なりにつらい理由があると思います。「我が子に危機が訪れた」ことを自覚し、最大限に智慧を働かせ、最大限に気を遣いましょう。そうしないと、不登校が本格化したらより大変な日々が待っているのです。

(1)不登校と引きこもり

 

不登校と引きこもりの関係は

 

①不登校⇒引きこもり

②不登校⇒いったん社会復帰⇒引きこもり

③不登校を経験せず引きこもりへ

 

という3つのコースがあるようです。

(1)人間関係を良好にする「3つのション」

 

 人間関係を良好にするためには、「3つのション」に気を遣うことが必要だといいます。

 

 「3つのション」とは「コミュニケーション」「リアクション」「ファッション」の3つです。

 

(2)コミュニケーション

 

 相手がどのようなコミュニケーションを求めるかを考えることが必要です。

 

 基本は「相手に合わせる」でしょうか。

 

 相手がゆっくりした口調で話しているのなら、ゆっくりと話す。

 相手が早口で話しているのなら、早口で話す。

 

 相手が笑顔で話しているのなら、笑顔で話す。

 相手が真面目な表情で話しているのなら、真面目な表情で話す。

 

 

男ウケのするコミュニケーションとは、『明るく、愛嬌たっぷり、程よく本音』。
これがナチュラルにできているトークの達人は弁当屋のオバチャンだと十倉シェフは言います。
常にアウェイの状態でありながら、初対面の男性客に気持ちよく弁当を買わせるポイントとは、

  • 【1】声のトーンが明るい
  • 【2】表情に愛嬌たっぷり
  • 【3】程よく本音で話す

ということ。それに対し、主人公・みやびをはじめキャリア女性は、仕事場では部下をかかえる立場ということもあって、男性から見ると、どうしても偉そうな話し方になっているのだそう。

  • 【1】威圧感を与えない明るく高めの声で
  • 【2】愛嬌たっぷりにニッコリ微笑み
  • 【3】建前トークだけじゃなく本音をまぜつつ話す

この必勝法なら婚活パーティに向けて、今すぐ身近で練習できそうですね!

男が求めるリアクションとは?

人間は基本的に「他人から認められたい」「褒められたい」という“承認欲求を”持っています。誰かと話すときにも、自分が話している内容が相手に伝わっているか、共感してもらえているかを非常に気にする動物。もちろん男性も同じです。
恋愛マスター・十倉シェフは、男ウケするリアクションとは「本物の感動」であると断言。

主人公・みやびも参加した婚活パーティですが、ほとんどの場合、最初のトークタイムで参加者の男性たち全員と2~3分ずつ話をするスタイルになっています。会話が終わるとそれぞれチェックシートに「3番○ かわいい系」「4番× 話が合わない」「5番 第一希望」などと特徴や印象を書き込んでいきます。
この最初のトークタイムをいかに制すかが、婚活パーティ必勝のためのカギなのです!
男性の話す内容に心から耳を傾け、自身の共感する部分を探して本当に感動すること。この「本物の感動」があれば、たった2~3分の短い時間の中でも強く印象づけることができます。
ドラマでは、みやびは参加男性の話に熱心に相槌を打ち、本物の涙を流してみせることで、婚活パーティで大人気に。
承認欲求は、食欲や睡眠欲といった生理的欲求に並ぶ人間の基本欲求の一つですから、これを満たすことで男性は心から安心し「結婚するならこんな人がいいな」と思うこと
間違いありません!

いつの時代も男ウケするファッションは同じ!

美貌も地位も名声も手にする主人公・みやびの考えるファッションのポイントは“華やか、シャープ、オシャレ“。しかし恋愛マスター・十倉シェフは、こんな“いかにも”なキャリアファッションに対し、自己表現であると一定の理解をしめしつつ、生まれ変わるチャンスだと思って、男ウケする服を買えとアドバイスします。

  • ・パステルカラーのワンピース
  • ・シースルー
  • ・細ヒールの靴
  • ・てろてろスカート
  • ・アンサンブル
  • ・タイトスカート

男性と対等に仕事をこなしてきたキャリア女性にとっては、男ウケするファッションなんてちょっと気恥ずかしいですよね。みやび曰く「うすぼんやりした新人女子アナみたいな恰好」ですが、実際に着こなしたみやびさん、シャープで近寄りがたい雰囲気から、かわいらしくも美しく変身!ものごしまでやわらくなっているようでした。

婚活を志したからには「うすぼんやりした服」も戦闘服。男ウケする服を買ったって、誰に恥じる必要もありません。
さあ、今こそ婚活パーティ必勝法“3つのション”をマスターし、恋愛強者へ生まれ変わりましょう!

恋のビタミンでは貴方の「隠れた恋愛傾向」や「理想の結婚相手」がわかる診断テストをご用意しています。
よろしければ、無料ですので診断してみてはいかがでしょうか?

 

TBSドラマ『私結婚できないんじゃなくて、しないんです』が、婚活女性の中で「リアルすぎて心に刺さりまくり!」「参考になる!」と話題沸騰中です。
原作はベストセラー作家の水野敬也さんが手がけた婚活本『スパルタ婚活塾』。
徹底的なオトコ目線からアラフォー女性の婚活をバッサバッサとぶった切りますが、実は、目からウロコの婚活アイディアがいっぱい紹介されているんですよ!
そんな中から、婚活パーティに使える必勝法をピックアップしてみました。

男が10人いたら10人から好かれる秘策『3つのション』

主人公のアラフォー美人女医・みやび(中谷美紀)に恋愛マスター・十倉シェフ(藤木直人)が伝授する秘策が『3つのションを男ウケに変えろ!』です。
同窓会で再会したかつての想い人・桜井(徳井義実)に告白するもふられてしまったみやびは、意を決して婚活パーティに参加することに。
そこで恋愛マスター・十倉が力説した婚活パーティの必勝法こそ「コミュニケーション、リアクション、ファッションの『3つのション』を男ウケに変える」なのです!
このすべてをマスターすればどんな男にも好かれる女性になり、婚活パーティでも大人気、本命からのプロポーズも夢じゃない!?

コミュニケーション極意は弁当屋のオバチャンに学べ!

男ウケのするコミュニケーションとは、『明るく、愛嬌たっぷり、程よく本音』。
これがナチュラルにできているトークの達人は弁当屋のオバチャンだと十倉シェフは言います。
常にアウェイの状態でありながら、初対面の男性客に気持ちよく弁当を買わせるポイントとは、

  • 【1】声のトーンが明るい
  • 【2】表情に愛嬌たっぷり
  • 【3】程よく本音で話す

ということ。それに対し、主人公・みやびをはじめキャリア女性は、仕事場では部下をかかえる立場ということもあって、男性から見ると、どうしても偉そうな話し方になっているのだそう。

  • 【1】威圧感を与えない明るく高めの声で
  • 【2】愛嬌たっぷりにニッコリ微笑み
  • 【3】建前トークだけじゃなく本音をまぜつつ話す

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男が求めるリアクションとは?

人間は基本的に「他人から認められたい」「褒められたい」という“承認欲求を”持っています。誰かと話すときにも、自分が話している内容が相手に伝わっているか、共感してもらえているかを非常に気にする動物。もちろん男性も同じです。
恋愛マスター・十倉シェフは、男ウケするリアクションとは「本物の感動」であると断言。

主人公・みやびも参加した婚活パーティですが、ほとんどの場合、最初のトークタイムで参加者の男性たち全員と2~3分ずつ話をするスタイルになっています。会話が終わるとそれぞれチェックシートに「3番○ かわいい系」「4番× 話が合わない」「5番 第一希望」などと特徴や印象を書き込んでいきます。
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男性の話す内容に心から耳を傾け、自身の共感する部分を探して本当に感動すること。この「本物の感動」があれば、たった2~3分の短い時間の中でも強く印象づけることができます。
ドラマでは、みやびは参加男性の話に熱心に相槌を打ち、本物の涙を流してみせることで、婚活パーティで大人気に。
承認欲求は、食欲や睡眠欲といった生理的欲求に並ぶ人間の基本欲求の一つですから、これを満たすことで男性は心から安心し「結婚するならこんな人がいいな」と思うこと
間違いありません!

いつの時代も男ウケするファッションは同じ!

美貌も地位も名声も手にする主人公・みやびの考えるファッションのポイントは“華やか、シャープ、オシャレ“。しかし恋愛マスター・十倉シェフは、こんな“いかにも”なキャリアファッションに対し、自己表現であると一定の理解をしめしつつ、生まれ変わるチャンスだと思って、男ウケする服を買えとアドバイスします。

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(1)「先生疲れていますね。大丈夫ですか」

 

 今日は土曜当番でした。

 あと少しで当番の時間が終わりそうな頃に事務の〇〇さんが心配して声をかけてくれました。

 

 よっぽど疲れた表情をしていたのでしょう。

 心配させてはいけないと思い、

 

 「大丈夫、大丈夫。少し昨日ね眠れなかっただけなんだ」と答えておきました。

 

 患者さんのお母さんにも時々、「先生大丈夫ですか?」といわれることがあります。

 

 もしかしたら診療の質が少し落ちているのかもしれません。

 

 私が疲れた表情をしている時はたいてい睡眠不足の時です。

 

 

(2)私の不眠症

 

 私は40代の後半ぐらいから、寝つきが悪くなってきました。病院勤めの時代は

Cさんは小学校の1年生の頃から授業中の離席がありました。

授業に集中していなかったため、成績は全般的によくなかったといいます。

 

小学校3年時にはWISCを行いました。IQは80台でした。学校側は彼が授業の理解度が低かったので、少人数での教育が望ましいと考え、特別支援学級を勧めましたが、父は「通常学級で頑張りたい」と主張しました。結局父の同意が得られなかったので、通常学級のままでいることになりました。

 

お父さんのスパルタ式の指導の下、彼は頑張りました。小テスト前の休日は10時間ほど勉強をすることもあったといいます。小テストにも何とか合格していました。

 

そんな頑張りも学年が上がるにつれて、負担が大きくなり、頑張りきれなくなっていきました。小学校6年生の頃は彼は勉強するのを拒否するようになりました。

 

中学校に入学後、いったん学習意欲が回復しましたが、最初の定期テストが終わった頃から再びやる気がなくなり、時に漢字の宿題をやる他は家庭学習をほとんどしなくなりました。

 

定期テストは非常に点数が悪く、0点の教科もあり、5教科250点満点で30点前後になってしまいました。授業中はほとんど寝ているそうです。

 

このような状態になり、お父さんも通常学級での学習や高校進学が困難であることを理解して、特別支援学級への転籍や中学校卒業後の特別支援学校への進学を考えるようになりました。

 

特別支援学校へ進学するためには、静岡の特別支援学校は知的障害のための支援学校なので、療育手帳がないと進学しにくいようです。そこで療育手帳の申請をしたのですが、WISCでIQが80台になってしまい、そのままでは療育手帳がもらえないため、相談のために私たちの病院を受診しました。

 

発達暦、経過、症状、検査所見を総合すると、不注意優勢型のADHD+自閉スペクトラム症の診断でした。

 

IQはやや低めだけれど、知的障害のレベルまで低くはない。しかし、ADHDやASDの合併があり、小学校の中学年で学習不振で授業についていけなくなってしまっている。C君のようなお子さんはわりとたくさんいます。

 

静岡市の特別支援センターのある指導主事の先生は、「IQ70台のADHDやASDのお子さんは通常学級でやっていくのは難しいと思います」と言っていました。そのようなこともあり、IQが70台だと効果が期待できないと考えられているようで、通級指導教室に通うことができなくなるようです。C君はIQが80台なのですが、勉強をしようという意欲がほとんどない状態になってしまっています。

 

C君のようなお子さんには私は

①勉強を教えてくれる放課後デイサービスに通うことを勧める。それで十分でなかったら個別指導の塾も併用する(ただし、お金はだいぶかかる)。

②ADHDの合併があるのなら、薬物療法を併用する。

などの対応を勧めます。

C君が意欲を持って勉強に取り組んでくれるといいのですが・・・。

 

もし、学習にしっかり取り組めないなら、学校の先生が勧めるように、知的の特別支援学級へ転籍し、中学校卒業後は特別支援学校へ進学するのが、C君にとっては最もよいでしょう。ただし、知的障害ではないのに、知的障害のための特別支援学校へ進学するのは、なんとなく納得できないのです。

 

もう少し早く医療機関に受診してくれなかったのか、と思わずにはいられませんでした。

 

ただ、学校の先生がほとんどの授業を寝ているC君を起こさずに寝かしてくれたのは英断だったと思います。もし、起こされていたら、わからない授業を我慢して聞くのは大変な苦痛だったと思います。おそらく不登校になっていたでしょう。ほとんどの授業に寝ていても、多少起きて授業を聞いている時間もあるでしょうし、休み時間における友達との交流も彼にとってはプラスだと思います。現状は不登校よりはましなのだと思います。

 

 

「どうですか?」

「最近親の言うことを聞きません」

「どんなことを聞かないのですか?」

「歯磨きをなかなかしないんです。『歯磨きしたの?』と聞いても『やったよ』と嘘をつくこともあるんです」

 

ADHDのお子さんは基本的にめんどくさいことが嫌いです。

歯磨きだってできることならやりたくないのです。

小さい頃はお母さんに褒めてもらいたくて、言うことを素直に聞いていますが、年齢が上がるにつれて自我が出てきて、お母さんから独立したいという気持ちが強くなります。それとともにお母さんの言うことを聞かなくなるのです。

 

定型発達のお子さんは、歯磨きをめんどくさいと思う気持ちが比較的弱く、「ちゃんと歯磨きをしないと虫歯になってしまい後で自分が困るよ」とか「不潔にしていると友だちに嫌われるかもしれないよ」などという親の注意を素直に聞き、歯磨きをちゃんとするのであまりトラブルにはならないのです。

 

ADHDのお子さんは親が何回注意しても、めんどくさい気持ちを抑えることは出来にくいです。そのため歯磨きを習慣づけるためには何回も、時には何十回も注意する必要があります。果たしてこのように注意し続けることがよいことかを考えて頂きたいのです。

 

親が注意すると次第に子供は親の言うことをうるさく感じるようになっていきます。注意するとその行動は改善するかもしれませんが、親と子供との距離は広がっていってしまうのです。ですから一定の年齢を超えたら、注意をするかしないかはよく考えてからの方がよいと思います。小学生の頃にしつこく言い過ぎると、中学校になった時にアドバイスが効かなくなる危険性があるのです。

 

ペアレントトレーニングの極意は、「良い行動は褒め、大目に見られる行動はあえて注意せず、許せない行動のみ注意をする」です。「歯を磨かないの」は「大目に見られる行動」ですか?「許せない行動」ですか?

 

 

 

 

この患者さんのお母さんには以下の様に説明しました。

「親があまり注意しすぎると子供は『うるさい』と思って言うことをだんだん聞かなくなります。小さい頃はお母さんに褒めてもらいたい気持ちがあるのでお母さんの言うことに素直に従いますが、年齢を重ねる毎に、お母さんのお子さんに対する力はだんだん弱まっていくと思って下さい。

 

注意をする内容は十分に考えて下さい。何を注意するか、何は敢えて注意しないかを十分考えて下さい。『歯を磨きなさい』と『勉強しなさい』のどちらか1つしか注意できないかとしたら、お母さんはどちらのことを注意しますか」

 

「私だったら『歯を磨きなさい』ですが」

「確かに歯を磨くことは大切なことです。しかし、中学生ぐらいになり他人の目を気にするようになったら、ちゃんと歯を磨くようになる可能性が強いと思います。勉強の方は積み重ねが大切です。今積み重ねておかないと中学生の段階では手遅れになっている可能性もあると思うのですが」

 

発達に特性のある子供達に対する対応は、定型発達の子供の数倍、数十倍大変だと思います。子供のしつけにどのように対応するかは難しい場面がたくさん出てくると思います。定型発達のお子さんなら、良くない行動があれば単純に注意すればいいところでも、特性のある子の場合は注意すべきか、スルーすべきかを考えなければならないのです。知識もたくさん必要です。特にペアレントトレーニングの知識は身につけておいた方がよいと思います。ご両親は知識をつけて、一つ一つの場面で慎重に考えて対応して欲しいと思います。そうしないとお子さんにとっても不快な親子関係になってしまいますし、ご両親にとってもお子さんの困難な思春期時代に立ち向かわなければならないかもしれないのです。不機嫌全開の思春期のお子さんと対するのは大変ですよ。

「テストはどうでしたか?」

「あまりよくなかったみたいです」

「最初のテストはどんなふうに勉強すればいいのかわからないことが多いから、仕方がないかもしれません。他には何かありますか?」

「2日前に同級生に殴られたけれど我慢したみたいです」

「へー、すごいね。よく我慢したね」

本人曰く、「あいつ、やばい奴だとわかっていたし、あいつの母ちゃん、モ〇〇ターペアレントだから絶対にもめるな、と母さんが言っていたから我慢しました」

 

私は心底びっくりしました。彼はスポーツの一流選手で、非常にとんがった小学生でした。小学生当時同級生や先生方ともめごとをよく起こしていました。彼なりの正義はあったのですが、見方が一方的な面もあり、「もう少し空気を読めよ」と思っていました。

 

そして、彼がスポーツの一流選手であり、かつ結構イケメンだったので、中学生になったら同級生や上級生に妬まれないか心配でした。中学生になると、うまくいかない感を持つ生徒が出てきます。そういう生徒たちには生意気な成功者は格好のターゲットになってしまいます。1対1なら勝てても、相手はぐるになって彼を陥れるかもしれません。そうならないためには、生意気な態度を取らないことが大切だと、彼に事あるごとに話していました。ソーシャルスキルトレーニングの一環のつもりでした。

 

 

当時彼は、「やるときはやる」とか「言いたいことを我慢するのはごめんだ」とか言っていました。どうなるか本当に心配でした。

 

しかし、実際の場面で彼は我慢できました。お母さんが注意を促したのが功を奏したのだと思います。私も自分の取り組みが少しは彼に届いたのかうれしくなりました。

 

「偉かったね、偉かったね。テストの点数が多少悪くてもいいと思うよ」

「先生、テストも頑張ってもらわなければ困ります」

「ごめんなさい、今の言葉を取り消させてください」

 

男の子の成長を感じた1日でした。

「どうですか?」

「あまりに勉強しなったので、『そんなに勉強が嫌だったら、中学校を出たら働きなさい』と言ったら、それは嫌だと言っていました」

 

「へー、どうして中学校卒業後に働くのが嫌なの?」と傍らにいた本人に聞きました。

「中卒だと職業の選択肢が狭くなるからです」

「すごーい!100点満点の答えだね」

 

「じゃあ、高校卒業したら働くのと大学まで行くのは職業の選択肢はどうだと思う」

「大学まで行った方が選択肢が少し広がると思います」

「少しじゃなくて、だいぶ広がると思うよ」

 

「ところで将来君は何になりたいの?」

「薬剤師です」

「薬剤師は高卒でもなれると思う?大卒でなければなれないと思う?」

「高卒でもなれるかな」

「ブブー、6年間大学に通って更に国家試験に受からなければ薬剤師にはなれません」

 

「他にはなりたいものはあるの?」

「数学者になりたいです」

「数学者は高卒でもなれると思う?大卒でなければいけないと思う?」

「高卒でもなれるかな」

「そうだね。数学者は独学で勉強することも絶対に不可能とも言えないから、高卒で数学者になれるかもしれない。ただし、一人では数学の勉強をすることはすごく難しいから、99.99%の数学者は大学を出ていると思うよ(これは後から考えると正確ではなかったかもしれません)」

 

「ところで医者になるのと数学者になるのはどちらが難しいと思う?」

「医者になる方が難しいと思います」

「ブブー、医者には年間8000人ぐらいなれるけれど、数学者になれるのは年間数十人ぐらいだと思います(これは後から考えると正確ではなかったかもしれません)。数学者になれる人はすごく頭のいい人なんだ。医者になるより数学者になる方が難しいと思うよ」

 

「ところで、君は今1日どれぐらい勉強しているの?」

「数十分ぐらいです」

「中学生になったらどれぐらい勉強するつもり?」

「1~2時間ぐらいです」

「高校生になったらどれぐらい勉強するつもり?」

「2~3時間ぐらいです」

「それぐらいの勉強量で薬剤師になれると思う?」

「・・・」

「たぶん、難しいと思うよ。数学者はもっと無理だと思う。数学者になるような人は他の教科はともかく算数は1日何時間も勉強している人がなるのだと思うよ」

 

「君は頭自体はいいんだ。あなたの頭の良さを偏差値という数値に換算したら62にあたります。でも勉強しなければその頭の良さを活かすことができません」

「お母さん、IQと偏差値はちょっと持つ意味は違うけれどある程度の関連はあります。大学入試における大学や学部ごとの偏差値は調べればわかると思うから、どの大学のどんな学部がどれぐらいの偏差値なのかを本人と一緒に見てみたらどうでしょうか?その時予備校ごとに偏差値の数値は違います。これはテストを受けている受験者が違うからです。そこら辺のことを考慮に入れてお子さんに説明してください」

「お母さん、〇〇君は潜在能力は高いと思います。順調に伸びれば大きな可能性がありますし、伸び悩めば大したことがことがなくなるし、お母さん次第ですね。うまく彼の才能を伸ばしてあげてください。地元の中学校に行くよりも私立中学校に進んだ方がいいと思いますよ」

 

IQの高いADHDのお子さんは、勉強にしっかり取り組めば順調に伸びるけれど、めんどくさいのが嫌いなので、勉強量が足りずに伸び悩むことが多いです。ASD特性があると、好きなことには熱中するけれど、嫌いなことには取り組もうとしないので更にやっかいです。両親が上手に導くと大きく伸びますが、そうでないと全く伸びません。両親の手腕によって大きく変わるのです。本来ならば子供たちの可能性は社会全体で伸ばしていくべきだと思います。しかし、残念ながらそうなっていません。

 

勉強ができる、できないの次元だけで見ていると可能性を見誤ることがあります。WISCをやっておくと、思わぬ可能性に気がつくこともあります。発達に凸凹があると、本当にどうなるのか幅がめちゃめちゃ大きいです。私は自分たちの病院に受診している子供たちの可能性が最大限に伸びることを願っています。そして、自分たちの病院に受診していない子供たちの可能性も最大限に伸びてほしいと思っています。

 

定型発達の子は、「勉強した方がいいよ」というだけで、勉強に取り組んでくれるかもしれません。しかし、発達凸凹の子供は自分が納得しなければ勉強をやってくれません。なるべく子供たちに外来を受診してもらい、 勉強することの大切さを伝えられたらいいな、と思っています。