私の名前は平手友梨、22歳。
例の5時間しか開けないメイドカフェ妖で
ガンナー(銃を扱う兵士)をやっている。
他の仲間は格闘技、霊能力とナイフを
使って事件を解決するけど、銃を扱えるのは
私だけ。
んー、ちょっと違うわね。
銃を使っていいのは私だけなの。

単純に扱える扱えないという話でなく、この
3人組に銃を扱っていいのは私1人だけと
決まっている。
私達の様な闇を退治するような仕事と組織は
戦前にはもうあったと聞いた。
けど、その歴史の中では仲間の裏切りや組織を抜けたヤツからの情報のリークもあり、組織が
壊滅寸前まで追い込まれたこともあったみたい。
そんな裏切った仲間を処分するためにも
昔は組織の実行部隊の武装は刀やナイフで
そんな武装が美意識として当たり前だった
けど、事件を素早く解決できる武器として
銃が導入され、新しく出来たポジション
というのが私がやってるガンナーなの。
だからガンナーになるまでは過酷な訓練と
この組織への忠誠心が試された。
なんせ組織のリーダーは番場のおっさんで
私はセカンドリーダーだけど、裏切りと
見なせば私は番場のおっさんはヤれるの。

でも過去にただ1人だけ、ガンナーであっても
組織を裏切った人物がいた、、、。
「栗田恵美」
そう私のガンナーの師でもあり、私が裏切り者
としてはじめて処分した人物でもあったの。

今から4年前、その頃の私は当然、ガンナー
なんて立場ではなく2部組織の処理班にいた。
実行部隊は妖のメンバーだけど、私達の仕事
の後を片付けたり、擬装して違う事件に
見せたりするのが2部チームの仕事なの。
その仕事のなかでも最悪なのは仕事は
死体処理。
もちろん何かの事件に見せかける場合は簡単。
その事件のシュチュエーションを作り、
それなりの証拠を残すだけ済むの。
でも死体を処理の場合大変。
現場から素早く死体を引き上げて、組織の
特別施設に移送し、、、。
まぁそのミンチにしたり、薬品でとかしたり
して存在自体を消したの。
処理仕事をするとその後は肉が最低5日は
喉を通らなくなったわ。

そもそも私は捨て子なの。
児童養護施設の前に捨てられて、そのまま
その施設で育てられた。
誕生日も施設前に捨てられた日だったわ。
そんな境遇が嫌で嫌でしょうがなかった。
中学の時、とうとう私は我慢出来なくなって
私をいじめてたヤツ数名を半殺しの目に合わせて逃亡し、それ以来は施設には帰らず、
いつしか1匹狼の不良になってた。
喧嘩や窃盗は当たり前、クスリに手を出す
のも時間の問題になっていた。
そこに現れて、私を闇の世界に引っ張り出して
くれたのは、番場荘吉。
そう番場のおっちゃん。
荘吉は妖のリーダーもあり、2部チームの
リーダーでもあった。
番場のおっさんの強い勧めもあって、私は
2部チームに加えられたの。
それが18(歳)の時。
処理班として血みどろの毎日を過ごして
2年たったある日、妖のガンナーがやめると
いう噂を聞いた。
そしてガンナーに志願し、2部チームの仕事の
傍ら、ガンナーの修行をした。
私に色々教えてくれたのは当時の妖の
ガンナーでもあった栗田恵美。
ガンナーがやめる時の条件はただ1つ、
自分を超えたガンナーを育てる事。
そして私は一年半に渡りガンナーの修行を
死に物狂いで栗田の元で行って、
そして師である栗田とリーダーの番場荘吉に
認められてガンナーとなったの。
明子と愛はその時には妖チームに先に居て
先輩だったけど、あくまでガンナーである私が
妖のサブリーダーなの。
明子と愛とチームを組んで1週間くらい経った
くらいね、、、。
確かチームとしては2回の事件を片付けてたわ。
ちょうどメイドカフェ妖に居て、明子はいつもの様にサンドバッグを蹴り、私と愛はテレビを
見て冗談を言い合ってたの。
その日は珍しく番場のおっさんは店に顔を出してなく、お客さんも来ないから店を閉めようかと3人で相談していたところだったわ。
入り口のドアが「ドカッ」割れんばかりの音を立てて少しだけ開いた。
人影はなく3人で恐る恐る近づくと番場の
おっさんがドアにもたれる様にして地面に
倒れてた。
脇腹からはかなり出血してた。
私は2部チームを呼んで、組織の施設に
いる医療チームに治してもらおうとした。
「愛、2部チームよん、、、」
すると番場のおっさんが私の腕を掴んだ。
肩で呼吸をしながら
「平手、、、ちょっと待て。その前に話が
ある。」
私は番場のおっさんに「なに?!」と聞いた。
「栗田に呼び出されて、撃たれた。そして
組織の施設のICカードを奪われた。
目的はわからんが栗田、お前の師匠は
この組織を壊滅しようとして、、、る、、」
番場は気を失った。
「友梨、施設には今は頼れないわ。この近くに
ヤブ医者だけど口が硬いじーさん先生がいるから番場さんはそこに運ぶわ」
前田明子が言った。チーム歴も長く人脈も
あってありがたい存在。
「そこまでとにかく運んで、それから施設の
人達を救出にむかいましょ」
私は2人に言うと2人は私を見て首を横に振った。
「おっさんは明子と2人で運ぶ。
平手友梨、ガンナーの役割を実行して
恵美ちゃんを、、、いや栗田恵美の処分を
お願い」
静かに宜保愛が言った。
「出来るなら恵美ちゃんがなんでこんな事を
したのか聞いて欲しい。
それがガンナーとして相応しくないと感じた
のなら栗田恵美を処分してあげて」
悲しそうに前田明子も言った。
私はうなづいて奥の部屋のロッカーを開け、
銃を選んだ。
ガンベルトを腰に巻き、左右にワルサーppkを
ねじ込んだ。
更にコルトガバメントを腹に突っ込み、
背中にはスミス&ウェッソンM29の6.5インチを背中に突っ込んだ。
少し派手だけど組織の敷地内でドンパチしよう
としてるんだから大丈夫でしょ。
そう私は考えた。
「でも何故、師はこんな事をしたのか?」
私も全然思い当たる節ははなかった。
店の入り口の方が騒がしくなった。
どうやら2人が番場のおっさんを病院に
連れて行こうとしてる様だった。
「番場のおっさん、気をつけて
私は私の責任を果たすよ」
そう言ってバイクに跨り、栗田恵美が狙って
いる組織の施設に向かった。

バイクをはるか手前で止めて、音がなるべく
早くしない様に施設へと近づいた。
まずは正面玄関を確認しようとした。
したが、その光景に驚いた。
玄関のど真ん中に栗田恵美があぐらをかいて
右手を頬にあて不機嫌そうな顔で座っていた。
私は林の中からそれを確認し、作戦を立てよう
とした。
すると、、、
「遅いよ、何やってんの!」
こちらの林を見ながら栗田恵美は言った。
思いっきり出鼻をくじかれたが負けちゃいられ
なかった。
背中側に刺してあったM29を栗田恵美をめがけて放った。
44マグナム弾の激しい衝撃が伝わった。
私は肩がはずれたのかと思った。
M29を素早く背中に戻して、両手に
ワルサーppkを持ち変え、林を走り抜けて
栗田恵美の居る場所へ向かった。
しかし栗田はもうそこには居なかった。
「遅いわね」
どこからか栗田の声がしてバンバンと発砲音がし、私の足元のコンクリートを爆ぜた。
私はわかった。
「二階の屋根の影から狙ったわね。」
私はワルサーppkを両手にかまえて二階に
向けて発泡した。
「相変わらずすごいですね、あの間にそこまで
昇ったとは」
私は栗田に言った。
そして言いながら大きく左に飛んだ。
栗田恵美もつられて私の走った方に飛んだ。
「見えた」
私が叫ぶ
栗田恵美が二階の屋根影から月明かりで
見えるところまで出てきた。
「チッ」
栗田の舌打ちが聞こえ、慌てて影の側に
戻ろうとする
そして腹に刺してたコルトガバメントを
抜いて構えると同時に撃った。
パンパンパンパンパンパンパンと乾いた
発砲音が続けて7発。
影側に逃げる栗田を追いかけてながら撃った。
「当たった?」
すると屋根づたいに血がスーッと垂れて、
一階のコンクリートにポタポタたれた。
屋根からズルズルと音がして、血まみれの
人がやがてドサッと音を立て一階まで落ちた。
私は弾切れのガバメントを放りだし、
ワルサーppkを持ったまま銃の構えを解かず
に近づいた。
「恵美ちゃん、、、、」
私は血まみれの人に声をかけたが反応は
なかった。
栗田恵美に何故こんな事をしでかしたのか
聞けず仕舞いだった。
私は暫く栗田の横に呆然と立っていたが、
処理係の2部チームが姿を現した。
気を遣ったのか
「顔をご覧になりますか?」
と、私に聞いたが、私は小さく首を横に振り
その場を離れた。

私は何となくメイドカフェ店の妖に戻った。
前田明子と宜保愛がいた。
部屋の中は静まりかえっていた。
「おかえり」
明子が私に言った。
「ただいま、終わったわ」
と私は彼女たちに言う。
今度は愛が
「なんか聞けた?」
と私に言ったので、私は首を横に振った。
「そう、、、でも良かった」
でも2人の本音はどうなんだろう?
栗田恵美の方が付き合いは長く、私はここに
きて1週間しか経っていなかった。
心の中では私の方がヤられた方が良かったと
思ってるのかな?そう思った。
そんな思いも断ち切る様に
「おっさんは入院したの?」
「いびきかいて寝てたよ」
愛が私の気持ちをほぐす様にふざけて言った。
私はプッと吹き出しながらこの子達は優しい
な、ずっと生まれてひとりで生きてきた。
はじめての師、友でもある栗田恵美を処分した
私に優しく声をかけてくれる、、、、。
私は涙がこぼれる前に
「疲れたから帰るよ、明日おっさんのいびきでも
聞きに行ってみるわ、戸締りよろしく」
そう言って店を出た。
東の空が明るくなりはじめていた。

それから3日は何もする気がなく、ずっと部屋
に閉じこもっていた。
ずっと閉じこもると心も身体も鈍ってくるのが
わかってきた。
気晴らしも兼ねて番場荘吉のお見舞いに行く
事にした。

その病院は店から10分もしないところに
あった。
散歩するには絶好の天気だったが、考え事を
していたのであまり感じなかった。
病院の戸を静かに戸を開けて中に入った。
診察はしてない様子だった。
時計を見ると14時少し過ぎたところだった。

とりあえず静かに近づいて番場を驚かせよう
と考えていた。
気配を消して歩くのも栗田に教わった事の一つ
だった。
3部屋しかない病室の中の一つだけ戸が
閉まっていた。
部屋の中には気配が2つあるのを感じた。
ガラスに影が映らない様に屈んで部屋の中の
音を確認した。

「番場さん、大丈夫なの?
ここまでしなくてよかったんじゃないの?」
私はその声を聞いて涙が溢れそうになった。
「いや、敵を欺くにはまずは味方からってね」
番場がそう言った。
「防弾チョッキ着けてたとはいえ、栗田も
ずいぶん、弾食らったな。
しかも45ACP弾だからな」
番場はひとり楽しそうに笑っていた。
「平手に殺されかけましたよ、マジで
あのクソガキ、左腕と腿、脇腹で
合計3発だよ、3発」
栗田恵美も笑っていた。
「君には新チームを率いてもらうと言ったが
場所は大阪だ。
海外マフィアとの抗争になると思う。」
番場が真面目そうに喋っていた。
「わかってる」
栗田が返事した。
「とにかく、大阪と東京の秋葉原の組織の
関係はないとしておかないとマフィア同士が
手を組んだりしたら厄介だからな。
しかもこっちほど人員も設備もちゃんとして
ないし、何より君は隊長とガンナーの両方を
務める、プレイングマネジャーだからね。
けどスポンサーはデカいから資金面では
心配は要らないよ」
番場荘吉が言った。

茶番だったのか!私は腑が煮えくりかえり
そうになったが、しょうがない事かと納得した。
そして見舞いに何も持ってきてない事に
気がついた私は、気配を消しながら一度、
外に出た。
そして菓子折り一つもって、今度は普通に
音を立てながら病室に向かってノックした。
「はいー」
下手な芝居だな。番場の返事がおかしく
聞こえた。
部屋を空けると窓が全開になって、風が
吹き込んでいた。
「おっさん、閉めるよ」
そう言って窓に近づいた。

丁度、栗田恵美らしき後ろ姿が建物の影に入る
ところが見えた。
私は思わず
「下手くそ」と呟いた。
呑気そうな声で番場荘吉が
「なんか言ったか?ー」と言ったが無視した。

栗田恵美を見たのはそれが最後だ。
もちろん前田明子や宜保愛にはこの話は
していない。
栗田恵美には銃の使い方から色んな戦闘術を
教わったが、一番教わったのは仲間の大切さ
かもしれない。
私はずっとそう思ってる。

〜終わり〜