そういえば、後10日ほどで、お父さんの命日だ。



享年28歳。



生きてれば74歳くらい。



あたしの4歳の誕生日が、1月上旬だから、



その1ヶ月半くらい後に自死したんだな。



あたしは今、猫が死へのストッパーになってるけど、



お父さんにとっては、あたしも妹もストッパーにならなかったんだな。



統失を患ったお父さん。



元々大型タンカーの船員で、2ヶ月に1度くらいしか帰ってこなかった。



だから記憶は5つくらいしかない。妹は1歳だったから、記憶ゼロ。



発症して、外国船に乗れなくなって国内船に変わって、それもできなくなって船を下りた。



おかんは「船員の旦那」が欲しいのであって「人間の旦那」は要らなかったみたい。



統失で苦しんでるお父さんに「働け働け!!」言うてたらしい。



もう船に乗ることができなかったから、製麺会社の配達員をしてたらしい。



お父さんの妹である叔母ちゃんは、当時のことを「シナのお父さんはキ○ガイになった」て言った。



45年前、まだ「統合失調症」が「精神分裂病」だった頃の話。



周りの理解が全くなかった。



おかんは「生まれ変わってもお父さんとは絶対に結婚しない!!でも船員がいい」てのたまった。



「家も建てるはずだったのに!!」と。



お父さんを理解しようとする人、周りにいなかったんだな。



あたしからすると、おかんの方がどうかしてると思った。



気にいらないことがあると、キレまくり叫びまくり怒鳴り散らして周りをねじ伏せる。



おばあちゃん、95歳くらいで老人ホームに自ら入ったんだけど、100歳の今も元気。



長年おばあちゃんの年金を管理して使い込んできたおかん。「いつまで生きるつもりじゃろ。あの金食い虫!!」と。



いやいや、その費用全部おばあちゃんのお金から出してるし。



呆れて開いた口が塞がらなかった。あまりの常識の無さに絶句(昔からそうやったけど)。



人に感謝することを知らず、悪い部分だけを見つけて糾弾してきた。



そんなおかん、一昨年、統失と診断された。



明らかに幻覚幻聴でしょって、ケアマネさん達も警察官達も思ってた。



人が覗いてる、畑に毒薬がまかれてる、土間が水浸しになってるetc…



何回警察を呼んだことか。



1年くらいそれで周りを抱き込んで、大騒ぎした結果、やっとケアマネさんが病院に連れて行くことに成功した。



診断、統合失調症。



半年ほど入院して、今は実家を出て市営住宅に引っ越し、あたしと同じく生活保護を受けることに。



それまで1日何回も電話してきてたのが、今は2週間に1回くらいになった。



どれだけ楽になったことか。



あれ買えこれ買え、買って送れとか、言われるがままに行動してきたから。



……なんか、おかんの悪口になったな……



ごめんなさい。



そういうわけで、お父さんの命日が近づいて、色々思うことがあるって話。



亡くなる数時間前に、車で出かけるお父さんを見たのが最後。



次の記憶は、棺桶に眠る蝋人形みたいに不透明な、でも安らかな表情のお父さん。



みんながあたしを押して「顔に触って上げなさい」と。



普通に寝てるだけみたいな、綺麗な顔してたのに、



恐ろしくて恐ろしくて、泣いて全力で拒んだ。



お父さんのことがあるからかな、いつも死を身近に感じるのは。



あたしには猫というストッパーがかかってるから、それ外れるまで生きるよ。



希死念慮と戦いながらでも生きるよ。



周りに助けてもらい、感謝しながら生きるよ。



お父さんの記憶、45年経った今も鮮明だ。



引き続き、安らかに眠ってね。









お読みいただきありがとうございます。



おやすみなさい。