《妄想物語番外編》町の小さな写真館③ | みんなちがってみんないい

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田中圭くんを中心に
過去や現在大好きなもの
日常の中で思う事
発達障害の息子の事
そして
おっさんずラブ春牧onlyで
二次創作を書いています

大好きなものを大切にして
自分と違うものにも
目を向けてみる

皆違って皆いい
好きなものを好きと言おう

『え?みゆちゃん???』

『あれぇ~、そういちくんだぁ~。どうしたのぉ~?』


え?美優と知り合い?


『あらっ?みゆ、お兄ちゃん達、知ってるの?』


すると、美優が嬉しそうに、元気な声で言いました。

『うん!きのう、まいごになったとき、たすけてくれたの。』


迷子?
昨日、何も言ってなかったけど……。
でも、まさか、美優を助けてくれた人達の
写真を撮る事になるとは……。

何か、運命を感じてしまいます。


『そうだったの!それは…、ご迷惑おかけしました。』


創一くんもびっくりした様子です。


『いえいえ!…じゃあ、みゆちゃんのおじいちゃん、おばあちゃんですか?』

『そうなの。みゆの母親方のね。』

『おしょうがつに、ママのじっかに、あそびにきたの!』

『そっかぁ!』

『じぃし、ばぁばと、そういちくん、なにしてたの?』

『あぁ…、じぃじは、お兄ちゃんたちの、写真をとったんだよ。』


仕事と言っても、どんな仕事をしているかは、
あまりわかってないようです。


『えぇ!いいなぁ~みゆもしゃしんとってほしい!』


それを聞いた創一くんが、
とびっきりの笑顔になった後
顔だけ振り向いて、凌太くんに言いました。


『じゃあ、凌太。みゆちゃんと3人で、写真撮らない?』


それを聞いた凌太くんは、
創一くんの後ろから、ゆっくり顔を出しました。


『あ、うん…。』


美優は、凌太くんを見つけて、
嬉しそうににこにこ笑いました。


『あれぇ~りょうたくんいたの?あっ!かくれんぼしてたのぉ?みゆもやりたい!』

『かくれんぼ…?』


みゆの幼い言葉に、思わず凌太くんも
笑ってしまいました。


『うん!いいよ。かくれんぼやろう!じゃあ、そういち、おにぃ!』


凌太くんは、優しい顔で美優と
顔を見合わせて、
それから意地悪な顔を創一くんに向けました。


『え?』

『みゆちゃん、いこ!』

『きゃはは!そういちくん、おにぃ!』

『こらっ!勝手に決めんな!』


創一くんが言い終わる前に、
凌太くんは、みゆの手を握って走っていきました。

思わず、創一くんも追いかけていきました。


『まてぇ~!』


それに美優は、逃げながらも
冷静に突っ込みます。


『そういちくん、なんで、おいかけてくるの?それじゃ、おにごっこだよ!』

『そういち、あたまわるいからね。』

『うるさぁい!ふたりとも、まてぇ~!』

『きゃあぁ!!』


かくれんぼが、なぜか鬼ごっこになってたけれど
凌太くんの楽しそうな顔にほっとして、
夫はまた、シャッターを押し始めました。

自然な表情は、ポーズをとった写真より
何倍もいい写真です。

本当の表情を切り取りたい……
でもそんな癖がたまに
その人が見せたくない表情まで
拾う事もあります。


しばらく鬼ごっこをしていた3人も
さすがに少し疲れて
息を切らしています。

凌太くんが鬼になって、
美優は、創一くんと一緒にいました。
すると、美優が何か思い出したように笑って、
それに気づいた創一くんが
美優の目線までしゃがんで
美優の口元に耳を近づけました。


『みゆちゃん、なぁに?』

『そういちくん、あのね………。』


微笑ましい光景でしたが
ふと凌太くんの方に目を向けて、
気づいてしまいました。



なぜ、創一くんと美優を見る瞳が
悲しそうに揺れているの……?


やっぱり、凌太くんは……
いろんなものを抱え込んでる……。


創一くんのぱぁっと明るい笑顔と
対照的に
凌太くんは、笑っていても
何かを考えているようで……
とても気になりました。



『りょうたくん!』


今度は凌太くんに声を掛けて、
凌太くんに駆け寄っていきました。


『なぁに?みゆちゃん。』

『あのね……。』

美優は、凌太くんにも何か耳打ちして、
凌太くんも穏やかな顔で
笑って何かを返していました。


それからすぐ、美優が疲れたと言い始めたので
お菓子とお茶で、休憩をした後、
美優がおねだりを始めました。


『ばぁば!みゆも、かわいいようふく、きたい!』

『そうね。じゃあ、白いフワフワのドレスを着ましょう!』

『やったぁ!そういちくん、りょうたくん、ちょっとまっててね!』


美優を連れて、着替え場に行きました。


『みゆ!お洋服ぬいで!』

『はぁい!』


洋服を脱ぐのを手伝いながら、
ふと気になった事を聞きました。


『みゆ。さっき、創一くんと凌太くんに、何を言ってたの?』

『さっき?』

『うん!二人にお耳貸してもらってたでしょ?』


美優は、わかったようで、
目をキラキラさせて言いました。


『【りょうたくん、きれいだね!】って言ったの!』

『まぁ、そうなの?でも、そういちくんもきれいでしょ?』

『そういちくんは、かっこいい!りょうたくんは、きれいなの!』


まだ、小さな子供だと思っていましたが、
もう、そんな事言うようになったようです。


『そういちくんは、何て言ったの?』

『【そうだろ!おれのりょうただもん!】って言ってたよ。』

『そうなの!』

『うん!だから、【そういちくん、りょうたくんのこと、だいすきだね】ってきいたら、【だいすきだよ!】っていってた!』

『そっかぁ。じゃあ凌太くんには、何て言ったの?』

『りょうたくんには、【そういちくん、かっこよくて、やさしいよね】っていったぁ。』

『そう。凌太くんは、何て言ったの?』

『えっとねぇ…なんか、【ぼくには、もったいない】…って。ばぁば、もったいないってなぁに?』

『もったいない……?そうね…みゆには、まだわからないかな。』

『そうなの?』


もったいないって……。

なぜ、凌太くんは、そんなに創一くんと
対等になれないのでしょう…。


『りょうたくんにも、【りょうたくんは、そういちくんのこと、だいすき?】ってきいたら、【うん…だいすき。】って、にこにこしてたよ!』


お互い、想いあってるのに、
凌太くんには、何か負い目があるの?


『そっかぁ。はい!みゆ、ここに手を通してね!……うん!出来たよ。』


美優は、すぐに鏡の所に行って、
前を見たり、振り返ったりを繰り返して、
自分の姿を見て、喜んでいます。


『かわいい!!!そういちくんとりょうたくんに見せてくるぅ!』


と、走って行ってしまいました。

美優の後を追っていくと、
創一くんも凌太くんも、黒のタキシードに
着替えていました。


『そういちくん!りょうたくん!どう?』


創一くんは、その場でぴょんぴょん跳ねながら、
顔をくしゃくしゃにして、美優を見ました。


『みゆちゃん、ほんとにかわいい!!!』

『ありがとう!そういちくんと、りょうたくんも、ようふくかえたんだね。かっこいい!』


すると、凌太くんも美優に微笑んで
返してくれました。


『みゆちゃん、ありがとう。』


美優の白い天使のドレスに、衣装チェンジした、
創一くんと凌太くんのタキシードが
とても映えて、バランスが良くなりました。


『少しだけ、ポーズとれるかな?』


と夫が促すと、
凌太くんも何か吹っ切れたのか、
夫の指示するポーズを
自然な感じでとってくれるようになりました。

いろんなポーズをやってもらい、
ラストカット撮影になりました。

真ん中に美優を置いて、両サイドに
創一くんと凌太くんを置き、
美優のほっぺにキスしてもらいました。

それで終わりにしようかと思ったのですが、
そこでふと、私は、
よからぬアイデアを思い付いて、
夫に了承を得た上で美優を呼んだのです。




つづく