《妄想物語》A HAPPY NEW YEAR 最終章 | みんなちがってみんないい

みんなちがってみんないい

田中圭くんを中心に
過去や現在大好きなもの
日常の中で思う事
発達障害の息子の事
そして
おっさんずラブ春牧onlyで
二次創作を書いています

大好きなものを大切にして
自分と違うものにも
目を向けてみる

皆違って皆いい
好きなものを好きと言おう

『凌太…?』

『俺も、春田さんの事、不安にさせてたんですか…。不安になるくらい、俺の事……』


凌太が、俺の胸の中に入ってきた。


『春田さんは、ほんとに…俺の事、好きになってくれたんですか?』

『やっぱり……信じれない?』

『……信じたいけど…、でも…信じてしまうのが…怖くて……。』


凌太は、顔を上げて、
涙でぐしゃぐしゃになっている顔で
俺を見つめた。

俺は、凌太に信じてもらいたくて
気持ちが溢れるまま、
kissをした。

俺の前で無防備に泣いている凌太が
ただ愛しくて
切なくて
体の中にある大きな芯を突き動かされるような
揺さぶられるような
不思議な感覚に陥った。


夢中で凌太の唇を貪った。
唇から、俺の想いを全てこぼさず
凌太に伝えたかった。


何でこんなに苦しいんだろう。
人を好きになるって、
こんなにもいろんな感情になるんだな。

凌太を好きになるまで、
俺は、何も知らなかった。

恋人になれば、結婚すれば、
楽しい毎日が送れると思ってた。

なのに実際は、
一緒に居てもさみしかったり
相手の気持ちがわからなくて不安になったり
自分の気持ちが真っ直ぐ伝わらなくて
もどかしくなったり

こんな複雑な感情を
俺は、今まで抱いた事なんて
なかった。

だけど……難しいけれど
俺は、凌太にただ伝えたい。




凌太が好きだって。




どうすれば伝わる?
どうすれば信じてくれる?

唇も、両手も、両足も、
全てを凌太に絡ませた。


『そう…いち……。』

『凌太…。』

『俺……、居なくならないから。』


凌太は、俺の頬を両手で包んで、顔を離して
俺を見つめた。


『だから……泣かないで。』

『え…。』


凌太に言われて、俺もいつの間にか、
泣いてた事に気づいた。


『あ…。』

『…創一の事……、守るつもりだったのにな。』

『何だよ…それ。』

『最近ずっと、創一に守られてる気がする……。』

『……どっちか一人の役目じゃなくても、いいだろ。……そういうのって…。』

『創一…。』

『もう…同じくらい、俺も凌太を……好きになったって事。』

『……うん。』

凌太は、少し恥ずかしそうにして、
ごまかすように
俺の頬に流れた涙に沿ってkissをした。


『凌太…くすぐったい……。』

『ふふっ。』

『俺もやる。』

『やだ…。』

『やだじゃねぇよ。』


俺も、凌太の涙に唇を這わせた。


『くすぐったい…。』

『だろっ?』


お互い思わず、顔を見合わせて笑った。


『なぁ、凌太…。さっきの答えの補足だけど…。』

『え?あ…うん。』

『今はほんとに、さっきの言葉が全て。だけど…、もし、またその事を考えた日が来たら、俺、隠さずにすぐ、凌太に相談する。……そんな事言ったら、また不安になる?』

『大丈夫。創一の事、信じる。』

『うん。だから、逆に、凌太も俺に対して、何か引っ掛かる事あったら、その時に言ってほしい。』

『あ……。』

『だってさ、ずっと言いたい事抱えてたら、すぐ解決出来るかもしれない事、そのままにするだろ。今回の旅行だってさ、もったいないじゃん。ずっと、辛い思いをしながら、旅行してたんだろ。』

『……。』

『あ!でも…何て言うか……言う事が辛いなら、無理しなくていいんだけどさ……。とにかく、凌太のタイミングでいいから……。う~ん……、タイミングでいいけど……。』

『創一?』


最後に浮かんだ、恥ずかしい言葉を、
凌太にぶつけた。


『俺の事、嫌いになる前に、言ってくれ!…てか、俺の事、嫌いになるな!!!…一生…。』

『創一……。』


自分で、恥ずかしすぎる事を言って、
思わず、凌太に背を向けた。


『創一、かわいい。』

『は?!何だよ!かわいいって!馬鹿にしてるだろ!』

『馬鹿にしてない。こっち向いて。』

『やだ。』

『やだじゃねぇ。』


凌太は、いつになく強い力で、
俺を押し倒した。

両手もがっちり、押さえつけられた。


『顔見せて。俺の事、大好きな顔。』


凌太は、俺の顔を見て、ニヤッと笑った。


『やっぱり、かわいい。』


顔が真っ赤になるのを隠したくなって、
俺は下から、凌太の頭を抱え込んで、kissした。

そうしてる内に何だか力が抜けて、
凌太もkissをほどいて、
全体重をかけて、俺に覆い被さった。

俺の胸の上で、凌太が、息をしている。
凌太の髪を撫でながら、
体重を預けられている重みが心地よくて、
何だか安心した。

凌太は、いつも俺に寄りかかる事はしないよな…。
もっと、寄りかかってほしい。

でも、俺がもっと、
頼もしくならなきゃ、無理かな…。




『あっという間の二日間でしたね。』

『そうだな。やっと帰れるわぁ~。』

『何ですか?旅行楽しくなかったんですか?』

『早く、凌太の作ったご飯食べたい!』

『それかよ。』

『それ以外に何があんだよ!』

『わかりました。いっぱい作ります。』


旅行も楽しかったけど、
自分の家で、凌太とゆっくり過ごしたかった。
なんて事ない普通の生活をしたくなった。


『帰ったら、何する?』

『帰ったらまず、お土産を開封して、会社とそれぞれの家族と…ちずさんのお土産を仕分けて、それからお互いの家族に挨拶に……。』

『そんな事じゃなくてさぁ~、俺と凌太が、二人きりでする事ぉ!』


凌太は、俺の反応を見て、笑っている。


『わかってますよ。じゃあ…正月から、やり直しますか?』

『正月?』

『おせちとお雑煮作りから始めます。』

『マジでぇ?おせち作れんの?!』

『定番のものは、だいたいは、作れますけど……、でも春田さんは、黒豆とか、栗きんとんとか、紅白なますとか、嫌いでしょ?』

『…よく、わかったな。』

『口がお子ちゃまだし。』

『うるせぇわ!』

『だから、一緒に買い物に行って、好きなもの作って、お重に詰めますから。』

『マジで!超楽しみ♪』

『あ~、お餅作るのは、春田さんに任せます!』

『え?!俺、お餅なんて作れないぞ!』

『春田さん、得意でしょ?作ってくれたじゃないですか、お餅?』


凌太のニヤニヤした顔で、思い出した。


『あ~!お前、そういう事言う?てか、随分前の事、よく覚えてたな。あれは、お粥ですぅ~!』


凌太が、風邪で倒れた時、
初めて作ったお粥……という名の餅汁。


『自分で言うのもなんだけど、具合悪いのに、よくあんなの食べたな!』

『…当たり前でしょ。好きな人が、初めて料理作ってくれたんだから……絶対食べるでしょ。』


凌太……。


『あまりにも不味くて、一口でしたけど。』

『確かに不味かったな。』


二人で思い出して笑った。


『今、住んでる所に来るの、初めてだよな。』

『そうですね!…って、あれっ?そもそも、調理器具あるんですか?』

『あぁ…、小さいフライパンと片手鍋一つしかない。』


一人暮らしを始めても、料理は、一切しない。
カップラーメン作るくらいだ。


『駄目だ……、調理器具から、揃えなきゃ。えっ…とぉ……、おたまと菜箸……それから…。』


揃えなきゃいけない調理器具の名前を、
ブツブツ言い始めた凌太が、
何だか可愛く思えた。


『凌太!』

『ん?』

『調理器具考えるのは、明日!』

『えっ?』


愛しくて、もうたまらなくなった。


『凌太、絶対離さない。』

『……創一。俺も。』


抱き合って、また気が済むまでkissをして、
そのまま二人で眠りに落ちた。



一緒に過ごせる日は、もう数える程しかなくて、
10日後には、また離ればなれになるけど、
だからこそ、それまでは、
ずっと凌太の側にいて、1日1日を
大切に過ごそう。


凌太がシンガポールから
日本に帰ってきた時の
予行演習にしよう。


俺は、ずっと、
帰りを待ってるから。


早く帰ってこい……凌太。





おわり