《妄想物語》A HAPPY NEW YEAR ⑥ | みんなちがってみんないい

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田中圭くんを中心に
過去や現在大好きなもの
日常の中で思う事
発達障害の息子の事
そして
おっさんずラブ春牧onlyで
二次創作を書いています

大好きなものを大切にして
自分と違うものにも
目を向けてみる

皆違って皆いい
好きなものを好きと言おう

俺と
CAの格好した俺みたいな人は
お互い見合わせて驚いた。


『えぇっ?!』


機内に二人の声が響いて、
他の乗客の方が一斉にこっちを見た。


『あ、お客様申し訳ありません!お騒がせしました!』


CAの俺に似た人が、
お客様にお詫びした。


『凌太、これもサプライズ?』

『いや…さすがにこれは無理だと思います。』


凌太もびっくりし過ぎて、固まっていた。



母ちゃん、俺、双子の兄弟なんか
居ないよな?

母ちゃん、俺に隠してた?

まるで、鏡を見ているようだ。
違う所といえば、髪型くらいか……。

ふと、名札を見ると……


『えっ!春田ぁ?!』

また、びっくりして、思わず声をあげた。


CAの春田さんは、通路側の空いてる席に座って
俺達に


『お客様。一旦、落ち着きましょう…。』


とゆっくり両手を扇いだ。

俺より、落ち着いてるな。
当たり前か…。
CAやってるんだから、相当優れた人だろう。

俺には、絶対出来る仕事ではない。


凌太を挟んで、窓側に俺、
通路側にCAの春田さんという
とても不思議な現象が起きている。

何の巡り合わせなんだ一体?

CAの春田さんは、俺達の方を向いて、
小声で自己紹介した。


『はじめまして。天空ピーチエアラインの、春田創一です。』


つられて俺も、自己紹介した。


『はじめまして。天空不動産の春田創一です。』

『………………。』

『………………。』


名前も一緒???

俺も、CAの春田さんもまた叫びそうになったが
凌太が左手で俺の口を
右手でCAの春田さんの口を押さえたので、
寸前で止めることが出来た。

二人共、叫びを飲み込んでから、
凌太を見た。


『あ、ありがとうございます。』

『よく、二人が叫びそうになるって、わかったな。』

『いや、わかるでしょ。』


俺は、急に誇らしげになって、
CAの春田さんの方に乗り出して言った。


『うちの凌太、すごいでしょ?』


すると、CAの春田さんも、うなずいた。


『すごいです!』


そんな俺達に、凌太が呆れたように言う。


『てか、二人共、リアクション似すぎ。』

『そう?』

『そうですか…?』

『てか、同じ声。』

『そう?』

『そうですか…?』

『てか、同じ顔。』


お互い見合わせて、俺もCAの春田さんも、
頷く。

『それは……。』

『間違いないです……。』


生き別れの兄弟なのか???
でもそうだったら、同じ名前のはず無いし、
そう思ってるとCAの春田さんが
俺達を見て、呟いた。


『お二人……、なんかとても…素敵ですね。』


???
言われている意味がよくわからなかったが、
俺も言葉を返した。


『春田さんも…いや、CAの春田さんも、素敵ですよ。』


そう言った俺に、CAの春田さんは、ちょっと苦笑いした。


『そうではなくて……あ、いいえ…。』


何か言いかけた言葉を飲み込んだようだった。


CAの春田さんは、
立ち上がって静かに言った。


『貴重な時間をいただいて、ありがとうございました。もうしばらく、空の旅、お楽しみください。』


もっと話したい事はあったが、
CAの春田さんも仕事中だから、
引き留める訳にもいかない。


CAの春田さんが、居なくなった後、
俺達は目の前に起きた衝撃的な出来事に
少し茫然としていた。


『なぁ…これ、何なんだ?』

『さぁ…何なんでしょう?』


衝撃的な出会いで忘れていたが、
寒そうにしてる凌太の膝に毛布をかけた。

自分にも毛布をかけると
手元が毛布で隠れた。

俺は、凌太の方に手を伸ばして、
毛布の中で、もう一度、凌太の手を握った。

すると、凌太は、呟くように言った。


『俺、CAの春田さんに先に会ってたら、CAの春田さんの事、好きになってたかな?』


聞き捨てならない言葉に、
俺は少し、イラッとした。


『あぁ…ん?』


俺の反応に、凌太がニヤッとする。


『やきもち?』

『うるせぇ!』

『やきもち妬いてんだぁ?』

『はぁぁ?…別にぃ……。』


俺は、毛布の中で、凌太の手の甲をつねった。


『痛っ…。』


凌太も負けじと、俺の手の甲をつねる。


『いたたたたっ!』


毛布の中で、しばらくつねり合いをしたが、
そうしてる間に、
凌太の氷のような冷たい手は、
ほんのり温かくなってきた。


『温かくなったな。』

『……はい。』


そのまま、毛布の中で
手を繋いだ。

手を繋ぐ…それだけで
何でこんなに幸せなのだろう。

それ以上、何も言葉を交わさなくても
よかった。

凌太の横顔をたまに見ながら
俺は、一緒にいる幸せを感じていた。




あっという間に
2時間ちょっとの空の旅は終わった。


着陸し、大勢の乗客が一斉に降りようと
席を立つ。

俺達は、それを見送りながら、
最後に席を立った。

搭乗口には、CAさんが並んで、
お客様のお見送りをしていた。
もちろん、CAの春田さんもいる。

俺達は、CAの春田さんの前で立ち止まった。
他のCAさん達が、まじまじと
俺とCAの春田さんを交互に見て
首を振っている。


『ほんとにそっくりね。あんた、生き別れの双子かなんかいたの?』

『いないですよ!ネコさん。それに俺達、名前も一緒ですから……。』

『えっ、名前も一緒???何なの、この不可思議現象!』


誰にも理解できない現象……。
でも、こんな不可思議は、偶然じゃないのか?


『あの…連絡先、交換できますか?』

『もちろんです!お客様が良ければ!!!』


俺達は、連絡先を交換した。
すると、他のCAさんが促した。


『ついでに、写真撮りません?』

『いいわねぇ~。』

『あ、はい。』


凌太を挟んで、俺とCAの春田さんという並びで
写真を撮った。

CAの春田さんが、申し訳なさそうに言った。


『すみません、お客様。いろいろ、失礼いたしました。』

『いえ。こんな事、きっとこれからも起きないと思うので…。会えて良かったです。』


すると、CAの春田さんが、笑顔で言った。


『お二人の幸せを、心からお祈り致しております。』


俺達は、CAの春田さんと別れ、
飛行機を降り、荷物を受け取って、
空港の外に出た。