ふと PART-2
ふと
PART-2
すると次に、最もウルサイ一団が勝手に入ってきた。
肩にカメラを担いだ頑丈な奴と、女のリポーターと、もう一人、音声らしい。
カメラには、7チャンネルのマークが有った。
リポーターは、顔を見るだけでも腹が立つような下品な顔つきだった。
しかも、私は、報道関係者だ!という一種の自負が態度に満ち溢れていた。
カメラを担いだ男は当たり前のように看護婦を押しのけてカメラで隣を覗き見している。
リポーターは私には何も聞かずに全体の様子を伺っている。
「骨折してる」 と医者が言い、当て木のような金属板とべリッと、くっ付くテープをその華奢で可愛い看護婦が、今度はカメラを押しのけて、フェンスに乗り出して医者に渡した。
私は、放し飼いのイグアナたちが暴れないといいが、と思いながらバルコニーでチップスを手に様子を見ていた。
頑丈な担架の男が、担架を如何にかこうにか隣に入れた、ドアーはまだ開かない。
看護婦はこんどは点滴の用意をして、それらを隣に乗り出しながら医者に渡した。
合鍵屋が上手く行かないので
そこに居る皆が其々に自分の意見で解決しようとしだして、殊更うるさくなった、
隣のバルコニーのサッシを割って内側から鍵を開けろと誰かが言った。
警察官はこれに賛成した。
「誰がガラスを弁償するのだ」 と問うのが居て、これは、すぐにやめになった。
この質問はボンヤリからだった。
担架に縛り付けたまま、皆でコッチに担ぎ渡せばいいと言うものもいる。
警察官は、これにも賛成だ。
これは、実行されそうになった。
人の配置やなにかが検討されたが結局はやめた。
「でも、もし、その時にまた落としたらモット大変だ」
と言う看護婦の意見で却下されたのだ。
そりゃそうだ、今度落としたら、また7階まで落ちる事になるのだ。
今なら、まだ右足の骨折だけなのだ。
看護婦だけが落ち着いているんだなと私は思った。
テレビ屋は、空に向かって医者に様子を聞いている。
医者は、隣からそれに答えている。
警察官達は、そろそろ自分達の仕事では無い事に気が付き始めている。
看護婦の二人は真剣な面持ちで、きりっとして更にいい感じで、最初の野次馬の子と母は、入り口の外に立っていて、中を覗きながら目が会うと愛想笑いをして、2人とももっと近くで見たそうだ。
ボンヤリが、私は何をしていたのかと聞くので、「本を読んでいたのだ」と答えた。
等のパキスタン人は、あまり声も出さず、されるままに自らの運命を図りかねているのだろう。 静かだ。
点滴のチューブまでは繋がれたのだ。
そして、皆で合鍵屋を待つことになった。
合鍵屋は、汗だらだらで頑張っている。
私は、廊下に出て、その様子を最初に来た可愛い野次馬と冷かしながら見ていた。
何処の大学で何を専攻しているかも分ってしまった。
お母さんもまだ居る。
バルコニーのイグアナは、止まり木の陰にしがみ付いたままで、 暴れそうも無く、皆もそんな物が数匹ジッと様子を伺っている事にまだ気が付いていない。
30分くらいして、カチッといい音がした。
隣の部屋のドアーが開いて、威張ったように入って行ったボンヤリが、サッシを開け、担架がカチャンと音を立て手押しの高さになってゴロゴロと出てきた。
カメラの男は、廊下を行くゴロゴロに附いて、怪我人の顔をアップで撮っている。
私以外の皆がエレベーターの方へ移動していった。
バルコニーが急に静かになり、踏みつけられた植物の整理をしようとしていたら、その時また廊下がうるさくなった。
今度は、担架がエレベーターに入らないのだ。
担架に縛られたパキスタン人は、縦にされて(その時一寸声がした)積み込まれ、無事に1階まで降ろされて目出度く病院に向かった。
その後、ほぼ二ヶ月間彼は入院したのであった。
バルコニーの配置を元に戻し、新たにビールの栓を抜いて、書簡集を読む事を続けた。
夕方、ニュースを見たが、これはボツになったらしい。
ソモソモ報道するほどの事でもなかったのだ。
その時になって私は気付いたのだった。