9日、平成30年厚生労働白書が公表されました。

諸統計をめぐる混乱から公表が遅れに遅れた白書は、はじめに省庁の障害者雇用水増し問題へのおわびが述べられるという異例の内容になりました。

第１部のテーマは「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」で、水増し問題への反省と再出発をアピールする内容となりました。

■気になったポイント

～障害や病気を有していない者の方が、治療と仕事の両立や障害を有しながら働くことは困難と思う傾向～（第1部第2章154ページ）

治療と仕事を両立すること、または障害を抱えながら仕事をすることは困難かを尋ねたところ、困難であると考える人の割合が、①障害者の66.3％、②身近に障害者がいる人の72.5％に対し、③その他のヒトの75.8％が最も高くなっていたことが、調査でわかりました。「障害や病気を抱えたら働けない」といった先入観や、両立支援策や就労支援策の存在を知らないなどの理由から、障害がなく、身近にもいない人の方が困難と思う傾向があるものと分析しています。

～障害や病気を有する者が職場にいることについて、助け合いの意識が強い者は職場への影響をプラスに、助け合いの意識が弱い者は職場への影響をマイナスに評価する傾向～（第1部第2章161ページ）

健常者に対し、障害者を支援することについての意識別に職場への影響をクロス集計しました。すると、職場で障害者を「積極的に助けたいと思う」及び「助けたいと思う」と回答した人は、障害者と健常者が一緒に働くことについて「仕事の進め方について職場内で見直す結果になった」が最多となり、肯定的な選択肢を選択する傾向があり、一方で、「あまり助けたいとは思わない」「助けたいと思わない」「わからない」と回答した人は、「特に影響はなかった」が37.7％と最も多く、次いで「仕事の負担が重くなった」が32.5％、「職場で社員の間に不公平感が生じた」が27.3％となっており、否定的な選択肢を選択する傾向が見えました。助け合いの意識が職場への影響の評価と関係していることがうかがえると分析しています。

この白書の別のページでは、身近に障害者がいる人は、助け合いや支援活動に積極的な傾向がみられたという調査結果も出ています。地域活動への参画や就労支援などを通じて、障害者が地域や職場において身近な存在となること。また仕事の進め方を見直すなど改善を図り、障害者の特性や事情に理解を持ち、必要な配慮・支援が行われる、ダイバーシティ＆インクルージョン（D&I)が行き届いた職場づくりが行われること。それらがひいては助け合いの意識の醸成や、障害や病気などと向き合い全ての人が活躍できる社会につながっていくと分析しています。

海外の障害者雇用政策（第1部第1章67・68ページ）

アメリカ

「1990年障害を持つ米国人法（ADA）」では、事業者が、障害を持つ資格要件を満たす者に対し、障害を理由とする雇用上の差別を行うこと一切を禁止しています。一方、障害者の雇用の義務づけはありませんが、1973年リハビリテーション法第503条関係規則において、連邦政府契約業者について、労働者の職種ごとに障害者が7％を占めることを目標とすることが定められています。

ドイツ

社会法典第9編に基づき、日本と似た法定雇用率制度が実施されています。ただし法定雇用率は、民間部門・公的部門ともに5％。雇用率の対象事業所は、従業員20 名以上の企業及び公的な部門です。

フランス

日本やドイツと似た雇用率制度があります。ただし従業員20人以上の事業所が対象で、従業員数の6％以上の障害者の雇用が義務付けられています。